- ○監修のことば○
- はじめに
- T章 絶対評価の新しい方向と方法
- §1 今回の指導要録改訂の意義
- §2 学力の構成要素と評価
- §3 見えにくい学力の重視と評価―思考力・判断力・表現力―
- §4 評価の活用
- 1 授業の中の評価
- 2 指導計画・評価計画や指導案の改善
- 3 通知表・指導要録の評価
- §5 評価規準と評価基準
- U章 3年/絶対評価基準作成の基礎・基本
- §1 第3学年の特質と評価の視点
- §2 国語科の評価の重点
- §3 社会科の評価の重点
- §4 算数科の評価の重点
- §5 理科の評価の重点
- §6 音楽科の評価の重点
- §7 図画工作科の評価の重点
- §8 体育科の評価の重点
- §9 行動の記録の評価の重点
- §10 総合的な学習の時間の評価の重点
- §11 特別活動の評価の重点
- V章 3年/新指導要録対応の絶対評価基準表
- §1 国語科の絶対評価基準
- §2 社会科の絶対評価基準
- §3 算数科の絶対評価基準
- §4 理科の絶対評価基準
- §5 音楽科の絶対評価基準
- §6 図画工作科の絶対評価基準
- §7 体育科の絶対評価基準
- §8 行動の記録の絶対評価基準
- §9 総合的な学習の時間の絶対評価基準
- §10 特別活動の絶対評価基準
- W章 「観点別学習状況の評価」と「評定」
- §1 各教科の「観点別学習状況の評価」の仕方
- §2 「評定」の仕方
監修のことば
第5期の中央教育審議会では,昨年の春からほぼ1年間かけて,平成23年度から小学校を始めとして順次正式実施に入る,新学習指導要領の趣旨に沿った「学習評価と指導要録の在り方」について,初等中等教育分科会教育課程部会の中にワーキング・グループをつくり,鋭意議論を重ねてきた。その結果,本年3月にはその答申が出され,5月にはこの点に関する通知も出されて,正式に具体的な評価活動に入るための準備が開始された。
今回の「学習評価と指導要録の在り方」について,私はその審議に直接関わった者として,文部科学省のまとめに基づいて,本書に関連する部分だけを取り出しその要点を示すと,以下のようになるであろう。
1 学習評価の基本的な考え方
・学習評価は「指導の改善」に生かすものである。
・改訂学習指導要領の趣旨に沿ったものにする。
2 学習評価の現状把握と課題
・「観点別学習状況の評価」と「目標準拠評価」(いわゆる絶対評価)は小・中学校では教師に負担感はあるものの定着してきている。しかし,高校ではまだ定着していない。
3 学習評価の今後の方向性
・学習指導に関わるPDCAサイクルの中で,学習評価を通じ,授業の改善や学校の教育活動全体の改善を図る。
・そのために,以下の3つの考え方を中心に改善を行う。
@ 「目標準拠評価」による「観点別学習状況の評価」や「評定」を着実に実施。
A 学習指導要領等の改正の趣旨を反映。
B 学校等の創意工夫を生かす現場主義重視の学習評価の促進。
・現行の学習評価の在り方について,その大枠の維持・深化を図る。
4 学習評価における観点別学習状況の評価の在り方
・「評価の観点」は成績付けのためのみでなく,「指導の改善に生かす」ためにも重要。
・学校教育法,学習指導要領等に定める「学力の3要素」に合わせた評価の観点に整理。
@ 基礎的・基本的な知識・技能 ―→ 「知識・理解」,「技能」
A 思考力・判断力・表現力等 ―→ 「思考・判断・表現」
B 主体的に学習に取り組む態度 ―→ 「関心・意欲・態度」
・観点の順番は,学習意欲の問題の重要性と実践面から見て現行を保持。
5 指導要録の改善
・学習評価の基本的方向性(改訂学習指導要領等の趣旨の反映)を踏まえた改善。
・具体的な改善事項例:
@ 「関心・意欲・態度」の評価に伴う負担感の軽減を図るため,評価方法・評価時期等の工夫の促進:評価段階の工夫などには,都道府県等ごとに一定の統一性の保持が必要。
A 「小学校・外国語活動」は,段階評価でなく「文章記述による評価」とする。
B 「特別活動」は,学習指導要領の目標や各学校の教育活動に合わせて「評価の観点」を定める。
C 「行動の記録」は,基本的な在り方は維持し,項目設定の上で,各学校が教育活動全体を視野に,その教育目標に合わせて加えることが適当。
6 学校や国・地方教育委員会等の支援による効果的な学習評価の推進
・学校,設置者,都道府県,国は,教師の負担感の軽減を図りつつ,評価の妥当性・信頼性等を高める必要。
@ 学校・設置者は,組織的に学習評価に取り組み,児童生徒や保護者に評価結果を説明すること。
A 国・都道府県等は,参考となる評価の観点等を示すとともに,具体的な事例の収集・提示に努めること。
・情報通信技術の活用により評価関係資料の共有や指導要録の電子化を進め,事務の改善と負担軽減の推進を図ること。
以上のような改善の趣旨により,いわゆる「絶対評価」が継承・深化される方向性を受けて,本書は,教師個々人はもとより各学校や都道府県等が,この種の学習評価に研修その他の場で組織的に取り組んだり,個々の教師の評価活動を積極的に支援したりする際の参考資料として編集されたものである。教育関係者が,本書を足場にして,各学校で種々の工夫を展開することができるよう,その最大限の活用を願っている。
2010年6月 監修者 /安彦 忠彦
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●はじめに ―学習評価の活用を重視―
○ 指導と評価の一体化が重要です。
中央教育審議会答申(平成20年1月)を受けて改訂された小学校学習指導要領(平成20年3月)は,教師の指導の目標と内容と配慮事項を示したものです。評価については,子どものよい点や進歩の状況の積極的な評価を重視するとともに指導の過程や成果を評価し,指導の改善を行い学習意欲の向上に生かすようにすることを求めています。また,中央教育審議会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成22年3月)と,これに基づいて改善された児童指導要録(参考様式)(平成22年5月)は,教師の評価の在り方を方向付けたものです。
教師の指導したことが,子どもにどの程度身に付いたか結果が厳しく問われる時代になりました。そこで,私たち教師は,これらを踏まえて「指導と評価の一体化」を授業の中で行い,質の高い授業を進め,子どもたちに質の高い学力等を保障する必要があります。
○ 学習評価は子どもの成長を保障するために活用するのが基本です。
今回の児童指導要録が大きく踏み出した事柄は,「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」において,PDCAサイクルの確立を一つの視点にして改善されていることです。
特に,「評価を踏まえて授業改善や個に応じた指導の充実,指導計画等の改善」を重視して,学習評価が,通知表や指導要録の評価・評定のためだけではなく,むしろ,日常の教育活動の中で活用されることを求め,学習評価の在り方を「結果の評価」から,「結果を出すための過程で活用する評価」に比重を大きく変換しています。つまり,学習評価は子どもの成長を保障するために活用することが基本にならなければならないということです。
○ 目標準拠評価(絶対評価)と個人内評価が基本です。
各教科等の評価・評定に当たっては,前回と同じように目標準拠評価(いわゆる絶対評価)が維持されました。絶対評価を行うということは,「評価基準」を設定し,妥当性や信頼性等を確保した適切な評価・評定をしなければならないということだと思います。
一方では,「総合所見及び指導上参考となる諸事項」欄などにおいて,子どものよい点,進歩したこと,長所などを肯定的に評価する個人内評価によって評価し,子どものよさを認め,励まし,特性を一層伸ばすようにしたことも基本として維持されています。
○ 学校として「評価基準」を作成します。
そこで,妥当性や信頼性等が確保された学習評価を行うためには,学校としての「評価基準」を作成する必要があります。通知表や児童指導要録に対応したものとしては,文部科学省や都道府県教育委員会,区市町村教育委員会が示した観点別学習評価の観点の趣旨を「評価規準」としてほとんどそのまま活用できます。
しかし,「評価規準」では一般的過ぎて,毎日の授業の中で子どもの学習状況や反応を適切に捉えるのには困難があります。そこで,評価の拠り所(評価尺度)としての「評価基準」がどうしても必要になります。「評価基準」に照らして子どもを観察すれば,子どもの学習の状況や反応が捉えやすくなり,個に応じた支援の手立てが講じやすくなります。本書では,学習評価が行いやすく,活用しやすくなるという意味で,「評価基準」を作成することにいたしました。
○ そこで,本書の構成を次のように工夫しました。
<本書の構成>
1 絶対評価の新方向と新方法及び学習評価の活用についての概説
2 学年の各教科・領域の評価基準作成の基礎・基本と重点の解説
3 学年の各教科・領域の全単元の絶対評価による評価基準の実例
4 観点別学習状況と評定の関係と処理の仕方
<本書の特色>
@授業の中で,子どもの学習の状況や反応が見取りやすいように「評価基準(standard)」として作成しました。
A各教科の全学年の全単元について絶対評価の「評価基準」を作成しました。
B行動の記録,外国語活動,総合的な学習の時間,特別活動についても「評価基準」を作成しました。
C文部科学省の通知「評価の観点等及びその趣旨」を参考にして作成し,そのまま使えるようになっています。学校の重点の置き方に特色がある場合には,これをアレンジすればよく,効率的に学校独自のものが作成できます。
本書が,各学校の「評価基準」の作成や学習評価の活用等の参考になれば幸いです。皆様の目にとまり,活用していただけることを願うとともに,ご批正,ご指導を切にお願い申し上げる次第です。
末筆になりましたが,ご多用の中から玉稿を賜りました諸氏に対しまして,心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。また,企画の段階からお世話になりました明治図書の安藤征宏氏に対しても特に名を記して感謝の意を表します。
平成22年6月 編者 /小島 宏 /寺崎 千秋
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- 明治図書