- はじめに
- 第1章 ミドルリーダーに相応しい時間の使い方
- 経験と仕事の中継地点
- 個人主義から組織主義へ
- 職場環境をつくる主役
- 家庭生活を充実させる
- 効率より充実を優先してキャリアを築く
- 第2章 原則を決めて時間を生み出す
- 人の評価を気にし過ぎない
- 休日出勤はしないと決める
- お金で時間を買う
- 自分でなんでもやらず,人に任せる
- 探す時間を決める
- 手練れに頼んで対価を支払う
- 60点を目指す
- 自分ルールを決める
- 第3章 若手を育てて時間を生み出す
- 若手を仕事に誘う
- 目をかけて手をかけない
- 頼ることで育てる
- 若手向けのマニュアルをつくる
- 授業を見せる
- 学級経営をすべて公開する
- 学年で得意なことを分担する
- 研修会に誘う
- 第4章 環境を整えて時間を生み出す
- 職員室環境をちょっとだけ変える
- 学年主任同士連携する
- 若手の愚痴を聞く
- 息抜きができる場所や時間をつくる
- 学年の打ち合わせを3分で行う
- 小さな改革を積み重ねる
- 惰性でやっている仕事を見直す
- 第5章 発想の転換で時間を生み出す
- やりがいを高め多忙感を減らす
- 一歩を踏み出すコツをつかむ
- 別の仕事で気分転換を図る
- 「時間はある」と考える
- 自分への言い訳を排除する
- 仕事を言い訳にしていないか点検する
- すきま時間を生み出す
- ニュースを見ない
- 第6章 管理職を動かし時間を生み出す
- 計画前に相談,根回しをする
- 判断,報告のスピードを上げる
- 進捗状況報告をこまめに行う
- 他の職員の意見を集約して示す
- エビデンスを示す
- 決断しやすくなる情報を提供する
- たとえ否定されても感謝を忘れない
- 第7章 断捨離で時間を生み出す
- 早く帰ることへの罪悪感を手放す
- 出たくないつき合いは断る
- 「いいかっこしい」の仕事はしない
- やるべき仕事とやりたい仕事を区別する
- 「パレートの法則」を応用する
- ログを作成する
- 必要かどうかわからない情報は捨てる
- 第8章 ネットワークで時間を生み出す
- コアなメーリングリストをもつ
- 校外会議を活用する
- 連絡はメールを使う
- 専門的な知識のある人と懇意になる
- 人脈をカテゴライズする
- 名刺をつくって人脈を広げる
- 第9章 先を見通すことで時間を生み出す
- 「何を」「いつまでに」を明確にする
- 経験値を基に突発的な仕事を予測する
- 段取り八分で難所を乗り切る
- 自分の強みを生かす
- 前倒しで仕事をする
- 第10章 家族のために時間を生み出す
- 家族優先行事を決める
- 家族行事は可能な限り早く宣言する
- 価値ある無理をする
- 家庭事情の早退は堂々とする
- 同僚にも家族優先をすすめる
- 余力を残して帰宅する
- 家族で過ごす時間帯を決める
- 何が大切で何が幸せかを考える
はじめに
本書でいう「ミドルリーダー」は,学級担任をしながら学年主任や教科主任を務め,管理職と若手をつなぐ学校の要として日々を多忙に過ごされている30〜40代の先生方を想定しています。そのような立場,そのような経験年数の先生方に「時間術」を提供するのが,本書の役目です。
ところで「時間術」とはなんでしょうか。
私はそれを,「時間を有効に使うための技術と考え方」ととらえてみました。時間を有効に使うとは,時間に価値を与えることです。
例えば,学生時代を思い出してください。興味関心が極端に薄い授業を受けていたとしましょう。90分間が恐ろしく長く感じられたはずです。実際には90分でも,心理的には180分くらいに感じたでしょう。
しかも,興味関心が極端に薄いのですから,その時間に得たものはほとんどないと言ってもよいかもしれません。仮に得たものの量をほとんどないものと考えて,1としておきましょう。
今,時間の価値を,次の式で表すことにします。
時間の価値=得たものの総量÷(実際の時間×心理的時間)
すると,この授業の時間の価値は,「1÷(1.5×3)≒0.2」ということになります。
別の場合を考えてみましょう。
あこがれの異性とはじめてデートをしたときです。実際には90分でも,心理的には30分くらいに感じられて,あっという間に過ぎてしまったのではないでしょうか。しかも,その90分に得た幸せは,ものすごく大きなものと言えます。その量を最高値の100としましょう。
このデートの時間の価値は,「100÷(1.5×0.5)≒133.3」です。
なんと,興味関心の低い大学の授業の実に667倍の価値を時間に与えたことになります。同じ時間でも,その価値に大きな違いが生まれました。
さて,この式はこのような結果となるよう意図的につくり出したものです。ですから,信憑性という点ではまったく当てになりません。しかし,この式と同様のことを私たちは経験としてわかっています。たとえ実際の時間がかかっても,そこから得るものが多かったり,心理的な時間が短かったりする場合,その時間の価値は大きくなるということを,です。つまり,時間の価値は,実際にかかった時間だけでは計れないということです。
ところが,私たちは日々時間に追われていますから,どうしても時間を短縮することに目が向き,時間を短縮する方法のみに価値を見いだしてしまいがちです。その結果,いたずらに先を急いだり,仕事が雑になったり,ミスを犯したり,じっくり見るべきものを見逃したりしてしまいます。
本書を手に取るミドルリーダーの先生方は,教師として相応の経験をもっています。効率的に仕事をする術にも長けているでしょう。組織のある部分の責任者でもあり,学校経営も視野に入れて仕事をしなければなりません。
だからこそ,効率よく時間を使うことと価値ある時間を使うことのバランスについて考えてみることが必要なのではないかと私は思います。
時間を短縮することばかりを追い求めているのは,別の意味で時間に追われていると言えます。時間に価値を与え,価値ある時間を使って仕事を充実させることこそ,ミドルリーダーに相応しい時間術です。
本書では,ミドルリーダーの立場における効率的な時間の使い方とともに,価値ある時間の使い方も提案しています。立場や職務に応じてそれらを活用,応用して,充実した教師人生を手に入れていただければ幸いです。
2018年1月 /山中 伸之
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