- はじめに
- 第1章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校算数科の授業づくり
- 1 アクティブ・ラーニングとは何か
- 2 小学校算数科におけるアクティブ・ラーニングの位置づけ
- 3 小学校算数科で育成を目指す資質・能力とアクティブ・ラーニング
- 第2章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校算数科の授業プラン
- 3つの数の計算をしよう!
- (1年/数と計算/3つのかずのけいさん)
- 船の形を鳥の形に変えるにはどうすればいいかな?
- (1年/図形/かたちづくり)
- たし算カードを使ってきまりを見つけよう!
- (1年/数量関係/たしざん)
- かけ算を使って問題を解こう!
- (2年/数と計算/かけ算(2))
- 長方形と正方形のひみつを見つけよう!
- (2年/図形/長方形と正方形)
- 「ぜんぶで」と書いてあるのに,どうしてひき算なの?
- (2年/数量関係/たしざんとひきざん)
- 分数でもたし算はできるのかな?
- (3年/数と計算/分数)
- はかりのつくり方を考えよう!
- (3年/量と測定/重さのたんいとはかり方)
- 3つの表をまとめて1つの表をつくってみよう!
- (3年/数量関係/ぼうグラフと表)
- 78÷9も筆算ができるかな?
- (4年/数と計算/わり算の筆算(1))
- 同じ長さのひもでつくった正方形と長方形,どっちが広い?
- (4年/量と測定/面積のはかり方と表し方)
- 表やグラフを使って気温を予想しよう!
- (4年/数量関係/折れ線グラフと表)
- わりきれない計算の処理の仕方を考えよう!
- (5年/数と計算/小数のわり算)
- 仲良く分ける方法を考えよう!
- (5年/量と測定/単位量あたりの大きさ)
- 農業で働く人の数の変化について探ろう!
- (5年/数量関係/百分率とグラフ)
- どうしてその式でよいのか説明しよう!
- (6年/数と計算/分数のわり算)
- 折ってぴったり重なる図形をかこう!
- (6年/図形/対称な図形)
- 実験を繰り返して滞空時間の分布を比較しよう!
- (6年/数量関係/資料の調べ方)
- 第3章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校算数科の授業の評価
- 1 アクティブ・ラーニングにおける評価のポイント
- 2 アクティブ・ラーニングにおける評価の具体例
はじめに
子どもたちが自ら学びに立ち向かい,追究し,力をつけていってほしいと私たちは願っています。また,他の子どもたちとも豊かに交流し,成長していってほしいと願っています。
そのようなとき,その学びが,発達と比べると低次な経験の積み重ねであったり,表面的な交流だけであったりするようでは,私たちが願う姿が実現できたとは言えません。中央教育審議会は「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)の中で,「質の高い学びを実現し,学習内容を深く理解し,資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的(アクティブ)に学び続ける」ように子どもたちを育てることを目指して,「アクティブ・ラーニング」の視点を示し,「主体的・対話的で深い学び」の実現を提唱しました。それが,「アクティブ・ラーニングを位置づけた授業」ということです。
「アクティブ・ラーニング」とはどのように規定されるものかということについては,第1章で詳しく論じています。そこで規定された一般的なとらえ方を基に,各教科等の特質に応じて,「深い学び」に焦点を当てて,さらに具体化・重点化していくことになります。算数科・数学科ではその実現したい「深い学び」について,次のようにその視点を示しています。
算数科・数学科では,数学に関わる事象や,日常生活や社会に関わる事象について,「数学的な見方・考え方」を働かせ,数学的活動を通して,新しい概念を形成したり,よりよい方法を見いだしたりするなど,新たな知識・技能を身に付けてそれらを統合し,思考,態度が変容する「深い学び」を実現することが求められる。
このような授業の実現を目指して,「主体的な学び」の視点
算数科・数学科では,児童生徒自らが,問題の解決に向けて見通しをもち,粘り強く取り組み,問題解決の過程を振り返り,よりよく解決したり,新たな問いを見いだしたりするなどの「主体的な学び」を実現することが求められる。
そして,「対話的な学び」の視点
算数科・数学科では,事象を数学的な表現を用いて論理的に説明したり,よりよい考えや事柄の本質について話し合い,よりよい考えに高めたり事柄の本質を明らかにしたりするなどの「対話的な学び」を実現することが求められる。
をもって,授業改善をしていこうということです。
他方で,中央教育審議会答申は,教科の目標を総括的目標と学力の三要素に対応させた具体的目標で構成するように提言しています。「主体的・対話的で深い学び」の実現によって目指すものです。算数科・数学科の目標では,総括的目標に「数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・能力を育成する」ことを,具体的目標に学力の三要素に対応させたものを示して,目指す資質・能力の全体像を明確にしています。
このような資質・能力の育成を,アクティブ・ラーニングを位置づけた授業への取り組みによって進めていこうとしています。それは,算数科の各領域の具体的な指導内容に即して設計し実施することによって進めていくべきものですし,また,単元や領域を横断するように関連づけたり活用したりして,その共通性や本質をとらえ,思考・態度を変容させ高めながら,算数科で育成を目指す資質・能力へとつなげていくべきものです。
このようなことから,第2章では,各領域の中からいくつかの内容を取り上げ,具体的にどのように授業展開することによって資質・能力の育成を図り「深い学び」へと進めていくとよいかを紹介しています。もちろん,このような授業を毎時間で行うというのではなく,中央教育審議会答申が示す「カリキュラム・マネジメント」により,単元の指導計画の中で重点化を図ることが大切ですし,また,教材や領域を横断するような「見方・考え方」を顕在化させ,価値づけ,活用できるようにし,さらに,その態度形成を行っていくことが大切です。そのような広がりを意識し,いくつかの典型例として第2章の事例を見ていただければ幸いです。
学習評価については,その観点として「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」が,中央教育審議会答申の中で示されています。また,「資質・能力のバランスのとれた学習評価を行っていくためには,指導と評価の一体化を図る中で,論述やレポートの作成,発表,グループでの話合い,作品の制作等といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価などを取り入れ,ペーパーテストの結果にとどまらない,多面的・多角的な評価を行っていくことが必要である」と述べられてもおり,パフォーマンス評価への取り組みも大切なものとなっています。第3章は,そのための取り組みを具体的に考えるときの重要な方策となってくることでしょう。
まもなく新学習指導要領の告示を受け,全国の学校で,その内容と趣旨の理解とともに,新たな教育実践の創造に向けての取り組みが進められていくに違いありません。そのようなとき,本書が,算数科で育成すべき資質・能力を的確にとらえ,授業へとどのように具体化するとよいかを考えるための,「深い学び」へと突き進んでいくアクティブ・ラーニングの実践を創り出すための手がかりとなることができると思っています。
豊かな教育実践が全国で編み出されていくことを願っています。
2017年2月 /金本 良通
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- 明治図書
- とても参考になりました。2018/10/820代・小学校教員
- 日常の事象を数理的に捉えたり処理したり,ということが少し理解が進んだように思います。アクティブ・ラーニングにおける評価の具体例も参考になりました。2017/10/860代・小学校教員