- はじめに
- 第1章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校国語科の授業づくり
- 1 なぜ,アクティブ・ラーニングなのか
- 2 小学校でのアクティブ・ラーニング
- 3 次期学習指導要領のアクティブ・ラーニング
- 4 国語科の授業とアクティブ・ラーニング
- 5 本書でのアクティブ・ラーニングの位置づけ
- 第2章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校国語科の授業プラン
- 学校にあったらいいなと思う発明品を相手に伝える
- (低学年・2年/話すこと・聞くこと/スピーチ「ゆめのなでしコンテスト」)
- 友達を紹介する文を書こう
- (低学年・2年/書くこと/「友だちのこと 教えてあげるよ」)
- ようこそ,おはなしのへやへ
- (低学年・1年/読むこと/「たのしくよんで,本をしょうかいしよう」)
- 読んで考えたことを話そう
- (低学年・2年/読むこと/説明的な文章「どうぶつ園のじゅうい」)
- ようこそ!神話のせかいへ
- (低学年・2年/伝統的な言語文化と国語の特質/「いなばのしろうさぎ」他)
- 分かりやすく伝えるための工夫を考えよう
- (中学年・4年/話すこと・聞くこと/「伝えよう ぼく・わたしの思い〜写真やグラフなどの資料を生かして〜」)
- 来校されるお客様に学校のよさを伝えるリーフレットを作る
- (中学年・4年/書くこと/「学校紹介リーフレット〜学校の“今”を伝えます〜」)
- おにたの気持ちの変化を読み取ろう
- (中学年・3年/読むこと/文学的な文章「おにたのぼうし」)
- お気に入りの詩を紹介しよう!
- (中学年・3年/読むこと/詩「詩を楽しもう」)
- グループで読み取った内容を他のグループに伝えよう
- (中学年・3年/読むこと/説明的な文章「ヤドカリとイソギンチャク」「むささびのひみつ」)
- ことわざや慣用句を材にした道具を作って,紹介しよう
- (中学年・4年/伝統的な言語文化と国語の特質/「ないもの,あります」)
- 「若者言葉」に対する考えを,バズセッションで深めよう
- (高学年・6年/話すこと・聞くこと/「『若者言葉』は言葉の乱れ?!」)
- 自分を語る 友達が語る ショートエッセイを書こう
- (高学年・5年/書くこと/「随筆を書こう」)
- ノートを作って読み取ったことを交流しよう
- (高学年・6年/読むこと/文学的な文章「『やまなし』を読もう」)
- 群読で読もう作品の声
- (高学年・6年/読むこと/文学的な文章「川とノリオ」)
- 矢崎さんが伝えたかったみすゞとは? 資料から考えよう
- (高学年・5年/読むこと/説明的な文章「みすゞさがしの旅」)
- 筆者の書きぶりに着目して読もう
- (高学年・6年/読むこと/随筆「森へ」)
- 明治・大正期の西洋料理のレシピを読もう
- (高学年・5年/伝統的な言語文化と国語の特質/「昔のレシピに挑戦!」)
- 第3章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校国語科の授業の評価
- 1 子どもの学びをとらえる評価
- 2 授業のあり方をとらえる評価
はじめに
「アクティブ・ラーニング」(主体的・対話的で深い学び)の視点を生かした授業改善が求められています。それはいったい,何を目指しているものでしょうか。
中央教育審議会は,平成28年12月,次期学習指導要領改訂に向けての『答申』をまとめました。その中で,アクティブ・ラーニングに関して次のように述べています。
「主体的・対話的で深い学び」の実現とは,特定の指導方法のことでも,学校教育における教員の意図性を否定することでもない。人間の生涯にわたって続く「学び」という営みの本質を捉えながら,教員が教えることにしっかりと関わり,子供たちに求められる資質・能力を育むために必要な学びの在り方を絶え間なく考え,授業の工夫・改善を重ねていくことである。(49ページ)
ここには,重要な点が2つあります。
1つは,アクティブ・ラーニングが「特定の指導方法のこと」ではないということです。もう1つは,「授業の工夫・改善を重ねていく」ということです。
※ ※
アクティブ・ラーニングの視点とは,毎日の授業をどの方向を目指して工夫していけばいいのか,あるいは改善をしていけばいいのかということを示すものだと言えます。具体的な〈方法〉ではなく,目指すべき〈方向〉が示されているものだと私は考えています。
先の中教審の答申では,アクティブ・ラーニングによってどのような授業改善が目指されるのか,その〈方向〉はしっかりと出されています。それが,「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」という,3つの学びの視点です。
その一方で,例えば,「では,どうしたら主体的な学びが子どもたちに生まれるのか」や「どうしたら対話的な学びが効果的に展開できるか」といったことは,具体的には示されていません。なぜなら,そうした〈方法〉は星の数ほどあるものであり,校種や教科・領域の違い,子どもの実態によっても様々だからです。
アクティブ・ラーニングの方法を,1つの例として示すことはできても,「こうすれば必ずできます」「こう教えれば,アクティブ・ラーニングになります」というように,固定的,断定的に示すことはできません。むしろ,特定の方法を絶対視して,その方法を適用すればうまくいくという発想でアクティブ・ラーニングをとらえると,かえって冒頭でふれた中教審の趣旨とずれてしまいます。
※ ※
学習指導の工夫は,常に止まることがありません。そうした毎日の授業の工夫や改善の取り組みを,どの方向を目指して進めていけばいいのかを,アクティブ・ラーニングの視点は指し示してくれるものです。
私はそれを北極星になぞらえて,先生方に話をしています。「ラーニング」という子どもの学びに軸足を置いた授業改善の〈方向〉を,アクティブ・ラーニングは確かなものとして私たちに示しています。そして,その方向に向かってどう進むかという〈方法〉は,それぞれの教室,それぞれの教科,それぞれの教師に委ねられているのです。
アクティブ・ラーニングは,アクティブ・ティーチングではありません。
もちろん,教師は熱心に教えます。様々な教え方の工夫をし,指導の改善を試みます。ただし,それは,学び手である子どもの側に立った工夫や改善です。学習者の側の発想を大切にして,授業のあり方を考えるということです。アクティブ・ラーニングという考え方が私たちにもたらす重要な視座は,この学習の側からの授業の発想,学習者である子どもの目線からの活動の工夫ということでしょう。
※ ※
どうしたら,子どもたちが楽しく授業に取り組みながら,国語の力をしっかり高めていくことができるだろうか。これは国語科の授業実践において,不易の課題であるといえます。この永遠ともいえる課題に向けて,これまでもたくさんの授業実践が行われ,たくさんの指導方法の工夫が考えられてきました。
アクティブ・ラーニングは,こうした不易の課題に向けての国語科の授業づくりを,後押ししてくれるものです。子どもの側に立ち,子どもの学習を大切にした授業実践のあり方を,アクティブ・ラーニングは様々なかたちで私たちに示してくれています。あらためて,「ラーニング」(学ぶこと)の視点に立った小学校での国語科の授業づくりを,先生方と一緒に考えていきたいと思います。
第1章では,中教審の答申も踏まえ,アクティブ・ラーニングについて解説をしました。アクティブ・ラーニングは何を目指して,次期学習指導要領に位置づけられようとしているのか,国語科ではどのような工夫が考えられるのか等,お読みいただければと思います。
第2章では,低・中・高学年ごとに,領域のバリエーションをつけながら,アクティブ・ラーニングを位置づけた国語科の授業実践例を紹介しています。この実践のどこにアクティブ・ラーニングの考え方が生かされているのか,効果的に位置づけられているのか等,先生方の解釈も合わせてお読みいただければと思います。
第3章では,評価の工夫について書きました。パフォーマンス評価やルーブリックづくりなど,様々な評価の工夫がありますが,ここで私は,学んでいる子どもの姿をどうとらえるかという観点からの評価についてふれました。
本書が,先生方の日々の国語科の授業実践を考えるヒントになれば幸いです。
2017年2月 /中村 和弘
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- 明治図書
- とても参考になりました。2018/10/860代・小学校教員