- はじめに
- 第1章 何のために合唱をするのか
- 合唱を通したクラスづくりと学級担任のスタンス
- 第一歩を踏み出そう―合唱コンクールが人生を変える!?
- なぜ合唱をするのか
- 歌の力を信じる
- 「音痴」という言葉は絶対使わない
- はったりで大丈夫!
- 音楽教師と学級担任の連携
- 第2章 コンクールは4月から始まっている
- 4月は校歌から
- 全力で歌えるまで歌い直し
- 歌う隊形をつくる
- 見た目は重要
- 足の開き方
- 目線の送り方
- 楽譜の持ち方
- 口の開け方
- 教師も歌う
- 第3章 いよいよ練習スタート!
- 合唱コンクールの目標
- 選曲で4割が決まる
- オーソドックスなおすすめ曲
- 曲づくりの流れ
- パート分け
- 学級組織づくり
- 指揮者のオーディション
- ピアニストの選考
- 男子の歌わせ方
- 女子の歌わせ方
- 練習のための練習
- 拡大楽譜の掲示
- ルールを守ること
- 第4章 生徒の声が変わるウォーミングアップと発声練習法
- ゴキブリ体操で楽しくウォーミングアップ
- 腹式呼吸の練習方法
- 壺ブレスで息を声に変える
- 響きやすくなる声の集め方
- モノマネで高い声を出す
- きれいな声で話す
- いろいろな動作や姿勢で歌う
- 鏡で口を見る
- 「アイーン」で男声すっきり
- 第5章 クラスのハーモニーが変わる音取りと合わせ
- オルガン、鍵盤ハーモニカ、ラジカセで音取り
- 効率のよいメロディーの覚え方
- 難所の覚え方
- 苦手な生徒の対策
- ハーモニーの練習方法
- 指揮の基礎
- 隊形の工夫
- 高い声の出し方、低い声の出し方
- ブレスのそろえ方
- いろいろな場所での練習
- 第6章 細部まで磨きをかける曲想と仕上げ
- できたらかっこいい強弱表現
- 音楽の命、レガートとカンタービレ
- 曲の終わり方
- 間奏の演じ方
- 歌詞のないラララの歌い方
- イメージ画で曲の訴えたいことを表現する
- アナウンス原稿のつくり方
- 言葉の歌い方@ 言葉の頭を立てる、子音を立てる
- 言葉の歌い方A 鼻濁音と促音
- 歌詞を解釈する
- 息を混ぜる
- 練習に緊張感をもたせる方法
- 審査員の傾向を知る
- 第7章 本番、そしてその後
- 本番前の気持ちの入れ方@ 神社にお参り
- 本番前の気持ちの入れ方A おはじきのおまじない
- 本番前の気持ちの入れ方B その他いろいろ
- ステージへの入場の仕方
- 指揮者の笑顔
- コンクールの振り返り
- 再び「なぜ合唱をするのか」
- 審査結果に不満が出たら
- 本当の金賞は3月に決まる
はじめに
合唱の指導書は世の中に多く出版されていますが、その中で本書を手にとっていただきありがとうございます。この本は、音楽の専門ではない中学校の学級担任の先生の立場に立って、合唱コンクールをどう学級経営に生かしていくかについて書いた本です。また、若い音楽の先生にも手にとっていただけたらと思って書きました。
私自身、指導者としてコンクールなどで特別大きな賞を受賞しているわけではありません。ただ何校か、「歌わない学校」を「歌が自慢な学校」へ変えていった経験をもっています。数人が歌う歌が上手な学校ではなく、「全員が心から歌える学校」が私の目標です。ですから、ただ、「上手な合唱の歌わせ方」の本でしたらおこがましくて書けないのですが、学級担任が心地のよいクラスをつくるための合唱づくりとしての本であれば、何かしら書くことができると思い執筆させていただきました。だいぶアツい内容もあり気恥ずかしい部分もありますが、学級担任というものは、生徒と共に熱く青春を謳歌すべきであるとも思っています。
また、私は幸いなことに、多くのすばらしい指導者のもとで学ばせていただきました。辻正行先生や松下耕先生が指揮する全国大会レベルの合唱団で歌わせていただいたり、何度も小学校で日本一になられた渡辺陸雄先生に合唱指揮のレッスンを受けたり、恵まれた合唱生活を過ごしてきたと思います。その経験の中で担任の先生方が使うことができるであろう技術的な合唱の上達方法をこの本に書きました。実際に私が行って効果のあった方法です。学級の生徒の歌唱をどんどん上達させてあげてください。
さて、今あげた合唱界の巨匠の他にも、私は吉川廣二先生、今成睦夫先生と、名だたる音楽教育の巨匠と交流をもたせていただきました。そして、今あげたすべての先生に言えることなのですが、どの先生も教え子を愛し、教え子から愛されているのです。そして巨匠たちがすごいのは、会って数分で相手の心をつかんでしまうところです。音楽の達人というだけではないのです。
私が20代のころ、ただただ合唱を上手にしようとクラスを鍛えたときがありました。しかし、結果は空中分解でした。今思えば、合唱練習と共にクラスが崩れていったのかもしれません。生徒の心をつかんでいなかったのです。では、私は生徒に対して愛情をもっていなかったのかと言えばそうではなく、むしろだれよりもクラスを愛していました。ただ、そのことが生徒には上手に伝わらなかったのだと思います。伝わらなかったというより、伝えるのが下手だったのです。
なかなか学級経営がうまくいかないとき、先輩の音楽の先生に学んだことがありました。この先生はよく「○○君好きだよ」と言葉をかけていました(もちろん変な意味ではありません)。こうやって愛情を言葉にして伝えることで、生徒にようやく思いが伝わり、生徒が安心する居場所ができることがわかりました。
私自身も「僕は君たちが好きだよ」「このクラスが大好きなんだ」と、事あるごとに学級で言うようにしました。そうすると、今まで通らなかった自分の言葉が、指示が、生徒に届くようになってきたのです。
「自分たちのことを好きでいてくれる先生と一緒に、最高のクラスをつくろう」
こう生徒が思ってくれれば、もう学級経営は万全なのではないでしょうか。あのころの自分に言ってあげたいです。
巨匠たちのように数分で心をつかむのは難しいでしょう。でも、学級担任は生徒と毎日一緒に生活しているのです。愛情の言葉をかける機会は山ほどあります。相互の愛情の土台の上でクラス合唱をつくりましょう。愛情の土台はさらに揺るぎなきものとなります。
最後に、合唱は学級づくりの1つのツールです。ぜひ学級づくりに生かしてほしいものです。しかし、合唱が学級づくりのすべてではありません。他の方法もあります。声が小さいから、音程が悪いから、賞が取れないからといって、学級経営が悪いわけではありません。
ただ、うまい下手ではなく、学級で生徒が気持ちよくのびのびと歌えることは、風通しのよい学級の1つのバロメーターとして考えてもいいと思います。
小さな子どもは、だれに言われなくても自然と歌を歌います。1人が歌えばまわりの子どもも歌い出します。人は元来、自然と歌うようにできているのです。そして理屈なしに歌は仲間と心を通じ合わせることができるのです。私は、歌の力を信じ、生徒を信じることで自然とクラスがまとまっていくのではないかと思っています。
最後に、執筆にご協力いただいた、静岡教育サークル「シリウス」の皆様、編集担当の矢口郁雄様にお礼申し上げます。
2019年1月 /戸塚 健太郎
僕自身も、10年以上合唱をしてきましたが、声の出し方や響かせ方等が、非常に理にかなっています。
合唱コンクールの指導をしないといけない教員なら読んで損は無いと思います。