- まえがき
- 第1章 「学級リーダー」から考える中学校学級経営
- 1 「学級リーダー」は流動する
- 2 学級リーダーの育成が多様な自立を生みだす
- 3 リーダー同士のかかわり合いが成長につながる
- 4 学級リーダーを育てる教師の役割@ 整理する
- 5 学級リーダーを育てる教師の役割A 見る
- 6 学級リーダーを育てる教師の役割B 任せる
- 第2章 「学級リーダー」の6つのタイプと関係づくり
- ◯「学級リーダー」の6つのタイプ
- TYPE01 日常でビジョンを示す「委員長タイプ」
- TYPE02 右腕となる「副委員長タイプ」
- TYPE03 学習で力を発揮する「ミニ先生タイプ」
- TYPE04 行事で力を発揮する「指揮者・応援団長タイプ」
- TYPE05 裏で信頼を集める「番長タイプ」
- TYPE06 行動の模範となる「優等生タイプ」
- ◯リーダー同士の関係づくり
- CASE01 委員長タイプ×副委員長タイプ 強みを生かしてカバーし合う
- CASE02 委員長タイプ×ミニ先生タイプ リーダーのネットワークを構築する
- CASE03 委員長タイプ×指揮者・応援団長タイプ リーダーシップのベクトルを意識する
- CASE04 委員長タイプ×番長タイプ 学級の表の顔と裏の顔でタッグを組む
- CASE05 委員長タイプ×優等生タイプ よりよい行動の輪を広げる
- CASE06 副委員長タイプ×ミニ先生タイプ セーフティネットで仲間を救う
- CASE07 副委員長タイプ×指揮者・応援団長タイプ キャンプをイメージする
- CASE08 副委員長タイプ×番長タイプ OODAループを回す
- CASE09 副委員長タイプ×優等生タイプ 問題を見つけて修繕や改築をする
- CASE10 ミニ先生タイプ×指揮者・応援団長タイプ 感情を動かしてバズりをねらう
- CASE11 ミニ先生タイプ×番長タイプ クチコミで賛同者を増やす
- CASE12 ミニ先生タイプ×優等生タイプ 信頼をレンガのように積み上げる
- CASE13 指揮者・応援団長タイプ×番長タイプ 衝突の「音」を見極める
- CASE14 指揮者・応援団長タイプ×優等生タイプ 展開を予測しながら率先して動く
- CASE15 番長タイプ×優等生タイプ 対極に見える関係をつなぐ
- 第3章 「学級リーダー」育成の落とし穴
- 1 無責任な「信じる」は言わない
- 2 重荷となる「任せた」は言わない
- 3 「リーダーだろ!」と叱らない
- 4 教師の味方にしようとしない
- 5 担任が院政を敷かない
- 6 リーダー以外の生徒を軽視しない
- 第4章 時期別「学級リーダー」の育て方
- 1 1学期
- 2 2学期前半
- 3 2学期後半
- 4 3学期
- 第5章 場面別「学級リーダー」の育て方
- ◯日常場面
- 1 授業
- 2 係活動・当番活動
- 3 学級会
- 4 すきま時間
- 5 委員会活動
- 6 部活動
- ◯行事場面
- 7 運動会・体育大会(体育的行事)
- 8 宿泊研修・修学旅行(旅行的行事)
- 9 合唱コンクール(文化的行事)
- 10 卒業式(儀式的行事)
- 11 学年レク・学級レク
- あとがき
まえがき
多様なリーダーを育てて自治的な学級をつくる
学級には、リーダーが必要です。そのリーダーとは、教師ではありません。生徒がリーダーとなって、教師と協働して学級を運営することを通して、生徒は自治的集団のつくり方を学びます。学級リーダーを育てることは、未来の社会の担い手を育てる第一歩です。
ただし、学級リーダーを育てるのは簡単ではありません。同じ生徒という立場で、他の多数の生徒を動かすのは大変です。一人の生徒に頼るとしたら、相当強力なリーダーシップが必要ですが、それは特定の生徒が王様のようになる危険があります。また、学級で取り組む活動は多岐にわたるため、一人のリーダーでは限界があります。
そこで、一部のカリスマ的なリーダーではなく、複数のリーダーが連携して学級を動かすようにします。そして、同じようなタイプのリーダーではなく、多様なタイプのリーダーが活躍できるようにします。変化の大きな社会に対応するには、多様性が大切です。
なお、この場合のリーダーの「タイプ」とは、生徒を特定の「キャラ」として固定化する意味ではありません。リーダーシップの特徴に合わせて便宜的に分けたものです。
また、一人の生徒が複数のタイプのリーダーとして活躍することがあります。リーダー像を固定化せずに、リーダーがもつ多様な側面に注目しましょう。さらに、学級リーダーのタイプは時間、空間、そして仲間によって変わります。次のような変化です。
・時間による変化…人間関係の変化や生徒の成長によってリーダーが変わる
・空間による変化…活動する内容や場面によってリーダーが変わる
・仲間による変化…学級のメンバーによってリーダーが変わる
時間による変化では、例えば進級当初は前に出ることを嫌がっていた生徒が、半年も経った頃には学級を仕切るようになることがあります。空間による変化では、学校行事ではリーダーとして活躍する生徒が、普段の授業ではまったく目立たなくなることがあります。仲間による変化の例としては、ある学級では委員長だった生徒が、進級すると前に出ることをやめ、裏で番長のようにふるまうことがあります。
このように、生徒のリーダーシップは集団の状況や活動内容、仲間の存在などに左右されます。教師としては「〇〇さんは優等生タイプ」と決めつけないようにします。見えるのは、その生徒の一面に過ぎません。生徒の可能性に目を向けましょう。
また、教師は一人のリーダーを育てるだけではなく、リーダー同士の関係づくりの場を整えて、リーダーをつなぐようにします。リーダーたちはお互いに刺激を受けて成長し、連携して他の生徒を目指す方向へ導くことができるようになります。
タイプ・時期・場面ごとにポイントを絞ってリーダーを育てる
本書は、五つの章から構成されています。第1章では、学級リーダーの特徴について考えます。キーワードは「流動的」「多様な自立」「リーダーのかかわり合い」です。また、教師の役割について「整理する」「見る」「任せる」という面から考えます。
第2章では、学級リーダーのタイプを六つに分けて説明した上で、リーダー同士の関係づくりのポイントについて考えます。委員長、副委員長、ミニ先生、指揮者・応援団長、番長、優等生という表現は、学校でのリーダーのイメージに合わせて名付けました。
第3章では、学級リーダーを育成する時の落とし穴について考えます。過去の苦い経験に触れながら、教師として避けるべき発言やかかわりを具体的に紹介します。
第4章は、時期別の学級リーダーの育て方について取り上げます。学校は時期によって重点的な活動が変わります。また、学級の雰囲気や集団の成熟度は刻一刻と変わります。そこで、先を見通して計画的にリーダーを育成するために大切なことについて考えます。
第5章は、場面別の学級リーダーの育て方について、日常と行事に分けて取り上げます。生徒は、運動会や体育大会のような大きな行事だけではなく、休み時間のようなちょっとした瞬間にも成長を見せます。それぞれの場面で「教師がどのように環境を整えて、生徒を見て、リーダーに任せるべきなのか」ということについて考えます。
学級は家にたとえると、一年限定の住まいです。終の棲家ではありません。多様なタイプのリーダーが連携し、失敗を恐れずに学級の「改築」を続けて、よりよい集団へと高めましょう。生徒が住みやすい家を自らの手でつくるために、教師はどのようにかかわるべきか、読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
二〇二三年一月 /川端 裕介
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- 明治図書
- 具体的な内容でわかりやすい。2024/2/2650代・中学校管理職
- よい2024/2/630代・中学校教員
- なかなか公立学校でリーダー(特に男子)を育てていくのが難しいと感じている中で、さまざまなタイプに合わせたリーダーを育てていけばいいということを学び、参考にしたいと思った。2023/4/1430代・中学校教員
- 中学校でのリーダー育成のヒントになった。2023/4/830代・中学校教員