- まえがき
- 生徒指導の口グセ変換
- 1 きちんとしなさい! だらしない
- 2 けじめがない
- 3 またか…いつになったらできるようになるの?
- 4 靴ひもがほどけているよ
- 5 自分に甘い
- 6 何回言わせればわかるの?
- 7 ダメなものはダメ
- 8 間違ってる?
- 9 自分がされて嫌なことはするな
- 10 相手の気持ちを考えたことあるか?
- 11 誰が悪いの?
- 12 どれだけ迷惑かけているかわかっている?
- 13 約束したよね? なんで約束を守らないの?
- 14 前にも同じ失敗をしていたよね
- 15 今までは許されてきたかもしれないけど
- 16 昔なら許されない
- 17 あなたが心配だから
- 18 このままならダメになる
- 19 そんなレベルでよいの?
- 20 絶対に後で損するよ。わかる?
- 21 入試でもそうやってできるの?
- 22 暗い顔してどうしたの?
- 23 悩みはない? 大丈夫?
- 24 言いたいことはわかるけど
- 25 言い訳をするな!
- 26 深い意味はないけれど
- 27 考えればわかるでしょ?
- 28 おかしいから! 人としてどうなの?
- 29 お前、いい加減にしろよ!
- 30 部活の先生に伝えるよ
- 31 あなたのために言っているのにその顔は何?
- 32 その口のきき方は何? はい、やり直し
- 33 嘘をつくな! 通用すると思ってるの?
- 34 誰に向かって話しているの?
- 35 普通はまずあいさつ!
- 学級経営の口グセ変換
- 36 私が学生の頃は…
- 37 まあ構わないけど
- 38 意味わかる?
- 39 許可は得た?
- 40 先に言って
- 41 聞いてないんだけど
- 42 大事なことだから一回しか言いません
- 43 早く! 急いで
- 44 何でも周りに合わせるんじゃない!
- 45 好きでやっているんでしょ? ならがんばって
- 46 自分たちでがんばろう
- 47 自分で決めたなら最後まで責任をもちなさい
- 48 いつもそうだよね?
- 49 信じているよ
- 50 責任から逃げるんじゃない!
- 51 前に立っている人の言うことを聞こう
- 52 全部任せた
- 53 誰の責任? あなたは学級委員でしょ?
- 54 聞こえませーん! もっと声を大きく!
- 55 ちょっと今、忙しいから
- 56 みんな仲良く協力しよ
- 57 助け合いが足りない
- 58 仲間を信頼しよう
- 59 仲良くするところから
- 60 いちいち言わないとわからないかな
- 61 それは後でよいから言った通りにしなさい
- 62 できるんなら最初からしなさい
- 63 空気を読みなさい
- 64 前からずっと言おうと思って我慢していたけど
- 65 ○○さんを見てみよう。できているでしょう?
- 66 へ〜、すごいね
- 67 まるで小学生みたい
- 68 周りの目を気にしたことある?
- 69 前のクラスでは…
- 70 どうせみんなだったら
- 授業の口グセ変換
- 71 自由にして構わないよ
- 72 できた人はまだできていない人を助けよう
- 73 一人でできないの? ズルをしてはだめだよ
- 74 この問題わかる人?
- 75 そういう考えもあるけど
- 76 どういう意味?
- 77 何か質問は?
- 78 いつになったら忘れ物がなくなるだろう
- 79 なんでできないの? 見ればわかるでしょ
- 80 やる気を出しなさい
- 81 今話したことわかる? …わからないんだったらしゃべらないで
- 82 何でちゃんと話し合わないの!
- 83 今はおしゃべりする時間かな?
- 84 手を動かしなさい
- 85 成績下がってもいいの?
- 86 本当に努力しているの?
- 87 眠い? がんばろう!
- 88 聞く前に自分で調べて
- 89 珍解答があって
- 90 ここ大事! テストに出るからね
- 91 これじゃあいつまで経ってもできないよ
- 92 これで全力? まだまだだね
- 93 そんなことも知らないの? …まあ仕方ないか
- 94 やっぱり、やると思った
- 95 簡単な問題だから、できないとまずいよ
- 96 今回はうまくできたみたいだね
- 97 前に教えたよね
- 98 全然勉強していないね
- 99 入試だと×だから
- 100 続くかな?
- あとがき
まえがき
教師の口グセで損をする
「あなたが心配だから言っているんだよ」
「約束したよね? なんで約束を守らないの?」
「いったい誰の責任? あなたは学級委員でしょ?」
「今はおしゃべりする時間かな?」
学校で子どもと接していると、つい口にしてしまう言葉があります。教師の口グセです。これらの口グセは、一見すると問題に感じないかもしれません。生徒指導や教科指導では欠かせない言葉であると考えるかもしれません。しかし、その言葉を発してしまったせいで、子どもとの関係が悪くなったことはないでしょうか。後になって「もっと別の言い方をすればよかった」と思ったことはないでしょうか。私は何度も後悔してきました。
本書は、そのような教師の口グセを一〇〇個取り上げ、口グセの背景や影響、そして言い換えの例について紹介します。いずれの言葉も、周りの先生が使うのを耳にしたことや、思わず口にした経験があるかもしれません。あるいは、先生方が子どもの頃に当時の先生から言われたかもしれません。教師の口グセには次のようなパターンがあります。
・決めつけグセ…子どもの事情を聞かずに教師が答えを決めつけて言葉にする
・問いグセ…指示や指導なのに疑問形にして子どもにぶつける
・皮肉グセ…皮肉を込めたり、「いじる」気持ちをもったりして言葉を出す
・遠まわしグセ…子どもに気付かせようとして婉曲な表現を使う
・蒸し返しグセ…過去の指導や子どもの失敗と今の状況を関連付ける
・わかった風グセ…子どもの将来について、本人よりわかったつもりになる
教師としての慣れや固定観念を省みることなく過ごしていると、これらの口グセが根付いてしまいます。そして、子どもとの関係づくりがうまくいかない要因になります。
4つのステップで口グセを言い換える
教師の口グセは仕方がないものではありません。言葉の背景には、子ども観や指導観が影響します。発言する際に、次の四つを意識しましょう。口グセが変わります。
@言葉にする前の感情と向き合う
A口グセを頭の中で文字にしてみる
B本当に伝えたいことを考える
C本当に伝えたいことに合わせた表現にする
最初に、言葉を発する前に自分の感情を客観視します。焦りや怒りがこもっていると、温かみのある言葉は出づらくなります。次に、口グセを頭の中で文字にしてみます。文字にすると「誤解を招くかもしれない」「言葉が強いな…言いすぎかな」と冷静になる余裕が出ます。次に、子どもに対して本当に伝えたいことを考え、それに合わせた表現にします。表現については、文言だけではなく、表情や伝える場所、間の取り方まで考えます。
これらのポイントを意識して使うには練習が必要です。最初の内は振り返りながら、代わりの言葉を考えましょう。繰り返すと、数秒もあれば言葉を言い換えることができます。
数秒間であっても、指導の場面で考える余裕はないと思う人もいるかもしれません。しかし、いじめなどの重大な問題や、安全を脅かす事態ではない場合は、言葉を発する「溜め」があっても問題ありません。むしろ子どもたちからすると、教師が沈黙を数秒続ければ「あれ、先生が何か言おうとしている…」と気付いて、聞く雰囲気ができる場合があります。間を取ることで、言葉の重みが増します。
本書は生徒指導・学級経営・授業の三章で構成されます。順番にこだわらずに、目次をさっと見て、気になった言葉から読み始めるのもよいと思います。読み進めていくと、口グセを抑えて言い換えるポイントが具体的に見えてくると考えます。
私たち教師は、言葉を扱って他者とかかわる職業です。教師の口グセを乗り越えて、思いを込めた言葉を使うきっかけとして、本書がお役に立てば幸いです。
二〇二五年二月 /川端 裕介
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- 明治図書