- はじめに
- Part 1 コーチングで学級経営!
- 1 学校力もアップする! 学級経営コーチングの極意
- 1 教育現場とコーチング
- 2 学級経営の重要性とコーチングの役割
- 3 ワークシートはパワーツールだ!
- 2 ワークシートの成功する使い方、失敗する使い方
- 1 ワークシートの3つのメリット
- 2 効果的なワークシートの活用法―やってしまいがちな失敗する使い方と成功するためのヒント―
- A 目的見失い型タイプ→9つのステップを設定する
- B 回答依存型タイプ→3つの基本パターンで集団学習を進める
- C あきらめ型タイプ→9つの工夫で学級経営に効果を上げる
- 3 なぜ,学級経営にコーチングなのか?
- 4 学級経営ワークシートの構成と使い方
- 1 ワークシートは学級経営のお役立ちツールになる
- 2 子どもたちに,どのような場面で使えるのか
- A 1人の子どものために活用
- B グループや学級全体・授業の中で活用
- 3 フィードバックの必要性とそのコツ
- Part 2 学級経営コーチングの基本力
- 1 「つながり合う,学び合う」3つの基本姿勢
- 1 キャッチボールができる関係性(communication)
- 2 決断と行動からの学び(commitment・action/process)
- 3 深いふりかえり(reflect)
- 2 「ゴールイメージと軸をつくる」学級マネジメント
- 1 ベテランが実践する学級マネジメント
- 2 学級マネジメントの役割と仕事の流れ
- 3 コーチングでPDCAサイクルを回す
- 3 「感・整・つ・わ」4つのスキル
- 1 感じる力(傾聴する)
- 2 伝え,整える力
- 3 つなげる力(質問力)
- 4 ふりかえり,わかち合う力(承認する)
- 4 「個と集団を育てる」土台づくりをしよう
- 1 育てたい力〈集団として身に付けたい力〉
- A ルール・規律の確立
- B 共にわかち合い学習する風土の醸成
- 2 育てたい力〈個として身に付けたい力〉
- Part 3 学級経営コーチングを実践するために
- 1 実践するためのノウハウと留意点
- 1 指導と支援のバランス感覚
- 2 「なぜ」「なに」と「賞賛」
- 3 会話で見つける「成長の姿」
- 4 アプローチのバリエーションを増やそう
- A 先生の言っていることが「わかる」「できる」体験/ B 子どもとの「ふとした一言」がいい関係をつくる/ C 「木を観る,森を観る」で状況を見取る/ D わざわざの「ちょっといい話」をしよう/ E 「質より量」のコミュニケーション/ F 関係性がつくれたら「コミュニケーションの質」を上げる
- 2 質問がもたらすもの
- A 閉じた質問と開いた質問/ B 感じるための質問/ C 整えるための質問/ D つなげるための質問/ E ふりかえるための質問/ F 予測して準備する想定問答
- Part 4 すぐに使える!場面別 コーチングワークシート実践例33
- 1 触れ合って,気づく 低学年のためのワークシート実践例11
- 1 学級づくり
- 1 「ありがとう」ってどんな言葉?
- 2 友だちが声をかけてくれたのに〈特別支援学級〉
- 3 一人ぼっちの子がいるよ
- 4 友だちのよいところ,発見
- 2 生活・学級活動
- 5 「にんじん」なんて大きらい!
- 6 トイレをよごしてしまったよ!
- 7 お道具箱がピンチ!!
- 8 「がんばったねカード」をあげよう
- 9 「いやなことを言われる」どうしよう
- 3 授業づくり
- 10 読書を楽しく!
- 11 作文!? こまったな
- 2 かかわり合って,気づく 中学年のためのワークシート実践例11
- 1 学級づくり
- 1 「ばか,あっちに行け」と言われちゃった
- 2 バケツの水をこぼして,大失敗
- 3 教室に入りづらい子がいるよ
- 4 うるさくて,先生の声が聞こえません
- 2 生活・学級活動
- 5 ぼくは3年1組宅急便だよ
- 6 係活動リフレッシュ作戦
- 7 掃除したのによごれてる<特別支援学級>
- 8 ○○ちゃん,いつもありがとう
- 3 授業づくり
- 9 そういう考え方もあるんだ
- 10 1つの気づきをみんなのものに
- 11 5分間漢字10問テストにチャレンジ!
- 3 学び合って,気づく 高学年のためのワークシート実践例11
- 1 学級づくり
- 1 隣の席の子が牛乳をこぼしちゃった
- 2 もっといいクラスになろうよ
- 3 短所は長所に変えられるの?
- 2 生活・学級活動
- 4 私たちは紙芝居株式会社
- 5 あいさつは「あいさつ運動」だけでいいの?
- 6 ふれあい活動は楽しいね
- 7 通学団で,きちんとならんで登校してくれません
- 3 授業づくり
- 8 イスは堅くてきゅうくつなんだけど
- 9 筆におもいをのせて
- 10 ノートの使い方がわかりません
- 11 作品づくりはめんどうくさい
- Part 5 イキイキ・学校力向上! 教師のための学び合いワークシート
- 1 なぜ,教師に学び合いが必要か?
- 教師に,どのような場面で使えるか
- A 同僚と学び合う職場風土の実現/ B 「授業デザイン力」を高める/ C 「授業展開力」を高める/ D フィードバックの必要性とそのコツ
- 2 コーチングスキルを磨く,教師の学び合い事例
- 1 子どもの気づきに寄り添い,学びを観察する
- A 座席表に書き込む方法/ B 付箋紙に書き込む方法
- 2 授業者のための「授業デザイン力」を高める [事前ワークシート]
- 3 授業者のための「授業展開力」を高める [事後ワークシート]
- 4 研究協議のための「授業デザイン力・授業展開力」ワークシート
- 5 学級経営を学び合う研修会
- A 研修会の様子/ B 研修会の成果とまとめ
- おわりに
はじめに
この本は,指導経験10年未満の小学校教員対象に,よりよい学級経営を実現するために作成されたワークシートの本です。本書は,学級で子どもに対してすぐに活用できる実践シートであることに加え,教員用の指導案がセットされた学級経営のノウハウやヒントがつまっています。また,学校力向上のヒントがたくさん盛り込まれており,小学校教員はもとより,学校経営,管理職の先生方にもお役に立つことができる本と言えます。
一つの小学校の全教職員がまとめ上げたこの本は,そのプロセスを通して,学校力向上を実現した一つの実践事例でもあります。本の作成のスタートは,読者と同じ悩みをもつ新任〜10年未満の指導経験の小学校現職教員が,毎日の学級経営で率直に感じたことを出し合い,教員同士で考えてゆくことを起点としています。「どうしたら子どもたちは静かになってくれるのか?」「クラスを整えるにはどうすればよいのか?」「1人1人の子どもとのやりとりは?」「信頼関係を作っていけるか?」「あの先生のように授業の中に学び合いを起こすには?」などです。ここでは,若年教員だからこそ見える視点や新鮮なアイディアを活かすと同時に,長期の見通しができ経験豊富なベテラン教員だから知る,その学年その時期だから起こりうる問題や解決法など様々なことが議論されました。そして解決へのプロセスを主体的に生みだす質問や留意点,事前に予防すべきポイントを踏まえた内容等を盛り込みました。学級経営は様々な要素が複雑に関連し,絶対的正解も特効薬万能薬もありません。このワークシートもそれぞれが経験や知恵を持ち寄り作成した“つっこみどころ満載のワークシート”ではあります。どうぞ,コーチングのマインドのごとく,活用しながら,ワークシートをバージョンアップし,読者の皆さまの学校現場で育てていただければ幸いです。
著者である先生方にとってこの機会は,忙殺された日常での作成作業に悩みながらも,意義あるものになりました。目的それは,日常を立ち止まり,公教育の原点に立ち,子どもたちに何を学ばせたいか等を語り合い,教室で起こった様々な問題に対しどのように乗り越えたかという知恵や経験を共有する場になったからです。それらは「個の暗黙知を学校の形式知のナレッジに」近づけ,「学び合いのある職場風土」を創り出しました。ここには大きな価値が含まれています。一つには,学校の全教職員が,めざす教育理念と自分とのつながりを見いだし行動を通じて表現している状態をつくる第一歩を導き出せたことです。そしてもう一つは,このプロセスこそが教員同士の“知への探究心”や“仲間との絆”そして“自己肯定感”をはぐくむということです。ご存じのようにこのキーワードは現代の子どもの抱える大きな課題であり,子どもに強く影響を与える現職教員や大人こそもっとも必要だと思うのです。これからお読みいただく本書のコンセプトは2つあります。第1はワークシートという道具を活用した“コーチングで学級経営”。そして,“この本が生まれたストーリー”こそ第2のコンセプトです。どこからでも,ご自身のアンテナが立ったところから自由にお読みいただければ幸いです。
2011年4月 /河北 隆子
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- 明治図書