- は じ め に
- 1章 今回の教育課程の基準の改善の方針
- §1 文部大臣の教育課程審議会への諮問事項
- §2 教育課程審議会答申の主な内容
- §3 教育課程の基準の改善に当たっての基本的な考え方
- §4 教育課程の基準の改善のねらい
- 2章 教育課程編成のステップ
- §1 教育課程編成の構想
- §2 教育課程編成の手順
- §3 子どものよさの教育課程への反映
- §4 地域や学校の特色
- §5 学校の教育目標の設定
- §6 指導内容の選択と組織
- §7 授業時数の配当
- §8 教育課程と指導計画の関係
- §9 指導計画作成上の配慮事項
- 3章 教育課程編成の課題
- §1 豊かな人間性や社会性と教育課程
- §2 国際社会に生きる日本人としての自覚と教育課程
- §3 自ら学び、自ら考える力と教育課程
- §4 ゆとりある教育活動と教育課程
- §5 基礎・基本の確実な定着と教育課程
- §6 個性を生かす教育と教育課程
- §7 特色ある教育,特色ある学校と教育課程
- §8 道徳教育の重視と教育課程
- §9 体育指導の重視と教育課程
- §10 各教科等に通じる主な課題と教育課程
- §11 大綱化・弾力化と教育課程
- §12 総合的な学習の時間と教育課程
- §13 目標・内容を複数学年でまとめた教科と教育課程
- §14 施設・設備の活用と教育課程
- §15 家庭・地域社会の連携と教育課程
- §16 生活時程・日課表と時間割の編成と教育課程
- 4章 各教科等の指導計画
- §1 国 語
- §2 社 会
- §3 算 数
- §4 理 科
- §5 生 活
- §6 音 楽
- §7 図画工作
- §8 家 庭
- §9 体 育
- §10 道 徳
- §11 特別活動
- §12 総合的な学習の時間
- 5章 時間割編成の工夫
- §1 時間割編成の基本的な類型と考え方
- 1 固定時間にウエイトを置いた時間割
- 2 変動時間にウエイトをおいた時間割
- 3 固定,変動の共存する時間割
- §2 特色ある教育推進の時間割編成の工夫
- 1 複数教科をセットにした時間割
- 2 一定時間帯に継続活動を取り入れた時間割
- 3 集中的な活動を重視した時間割
- 4 モジュールを生かした時間割
- 5 反復学習を重視した時間割
- 6 総合的な学習の時間を中心にした時間割
- 7 午前・午後で指導の重点を変えた時間割
- 8 季節の活動を重視した時間割
- 9 学期の中心となる学校行事を重視した時間割
- 10 コンピュータリテラシーを集中的に計画した時間割
- 11 外国語会話を重視した時間割
- 12 体験的な学習を重視した時間割
- 13 課題解決学習を重視した時間割
- 14 ティームティーチングを重視した時間割
- 15 学級活動や児童会活動を重視した時間割
- 16 体育指導を重視した時間割
- 17 クラブ活動を適切に位置づけた時間割
はじめに
各学校の,教師の,教育課程編成能力が問われている。
激しい社会の変化に主体的に対応しゆとりある教育活動を展開して,一人ひとりの子どもに「生きる力」をはぐくむための教育課程を,さらには,その学校独自の特色ある教育課程を,教師が自分たちの手で編成することができるか,ということである。
これまでを振り返ってみると,教育課程はともすると教科課程であり,教師課程,教科書課程であったと思う。教科中心の教え込み型の授業による指導,教育課程の基準が改訂されようがお構いなしで十年一日の如く自分のやり方で通す指導,教科書にべったりで教科書会社の指導書に頼りきりの授業による指導の繰り返しが教育課程とされていたのではないか。こうした課程,一斉画一の課程の指導で子どもは受け身となり,学ぶ意欲は減退し,主体的に学ぶ力が身に付かない。変化の少ない時代,これまでの欧米に追いつくための知識理解吸収中心の時代ではそれで済んできたのであろうが,これからの変化の時代にそぐわなくなっている。今こそ社会の変化に主体的に対応し,心豊かにたくましく生きる力をはぐくむことができる真の教育課程を編成し,その教育課程の確実な実施が求められているのである。
教育課程審議会は平成10年度7月に,「完全学校週5日制の下で,各学校がゆとりのある教育活動を展開し,一人一人の幼児児童生徒に「生きる力」を育成するための教育内容の在り方」について答申し,教育課程の基準の改善について以下の4点のねらいを示した。
@ 豊かな人間性や社会性,国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること
A 自ら学び,自ら考える力を育成すること
B ゆとりのある教育活動を展開するなかで,基礎・基本の確実な定着を図り,個性を生かす教育を充実すること
C 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育,特色ある学校づくりを進めること
このねらいの下に,各教科等の教育内容の改善の方向や内容が示され,平成10年度12月,改正された学習指導要領が告示された。各小学校は,教育課程審議会の答申の趣旨や内容をしっかりと理解することがまず必要である。とくに今回,「各学校段階,各教科等を通じる主な課題に関する基本的な考え方」として,道徳教育,国際化,情報化,環境問題,少子高齢社会への対応など,各学校段階・各教科等を通じた横断的・総合的な課題についてどのように対応すべきかを示している。各教科等の内容を編成する前に,この趣旨を十分に理解しておくことが必要であることを押さえておきたい。
本書の各章の構成及び内容は概略以下のとおりである。
第1章 教育課程の基準の改善の方針では,今回の教育課程審議会への諮問の内容やそれへの答申の主な内容,教育課程の基準の改善の基本的な考え方や改善のねらいの要点を解説している。各学校が教育課程を編成する際の,言わば原点である。今回なんのために教育課程を改訂するのか,このところを共通理解することが大切である。
第2章 教育課程編成のステップでは,各学校が教育課程を編成していく際に,意図的,計画的,組織的,継続的に作業を行うための要件や編成の手順などについて解説した。こうして編成された教育課程は,各学校で学校長を中心として教師全員の共通理解が図られ,教育課程及びそれに基づく教育活動がまさに意図的,計画的,組織的,継続的なものとなり,発展的なものとなることが期待できるのである。
第3章 教育課程編成の課題では,各学校が教育課程編成に当たって見逃してはならない共通の視点を解説している。また,その視点からどう教育課程を編成すればよいかについてポイントを示している。これらを確実に把握することは,自校の特色ある教育活動を推進し特色ある学校を創造する上で大切なことであると考える。
第4章 各教科等の指導計画では,各教科,道徳,特別活動の改善の基本的事項を示しその解説を加えるとともに,指導計画作成上の配慮事項や教育活動実施における指導上の留意事項を簡潔に示すようにした。また,スペースの許す限り指導計画例も示して,具体的なイメージをもてるようにしてある。総合的な学習の時間については,この時間のねらいや内容,学習活動や評価について要点を示し,指導計画作成上の主な配慮事項を列挙した。以上の内容から,厳選や重点化の趣旨を生かした創意工夫ある指導計画の作成を期待したい。
第5章 時間割編成の工夫では,今回の改訂で特色ある教育の展開,特色ある学校づくりを推進するために,教育内容や授業時数,生活時程・日課表,時間割などが一層弾力的に扱うことができるようになった。このことを端的にあらわすのが時間割の編成である。単に授業時間の割り振りや時間割の組み方の問題ではないのである。学校の特色ある教育活動をどう推進するか,そのための教育課程はどうあればよいか,という課題などと連動しているのである。そのため,ここでは時間割編成の基本的な類型について幾つかの考え方を提示するとともに,特色ある教育推進の際の視点とその際の時間割をどう考えたかについて解説を試みている。
以上,各章において教育課程編成のねらいや方針から時間割編成までの具体化の過程を意識して論述した。各学校では,これらを参考にして,どんな子どもを育てるのか,どのような計画を立て,どのように教育活動を進めるのか,具体的なイメージを豊かにもち,教育に夢と希望をもって実践に取り組んでほしいと願っている。教師がエネルギッシュに生き生きと教育を展開するところにゆとりが生まれ,子どもの生きる力がはぐくまれると確信している。
1999年6月 編者 /寺崎 千秋
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- 明治図書