- はじめに
- 第1章 国語教室の技は学びの技 言語生活に生きる技を使おう
- 1 「技」とは何か
- 2 指導の技・学びの技
- 3 技と思考
- 第2章 今日から使える国語の指導技術60
- アイテム活用
- 語彙を増やすミニノート活用の技術
- 学び合いを活性化するマグネット活用の技術
- 意見交流を円滑にするホワイトボード活用の技術
- 見通しをもって課題に取り組ませるための提出表活用の技術
- 事実と意見を明確にする付箋活用の技術
- 書く活動の個人差に対応する学習チャート活用の技術@
- 書く活動の個人差に対応する学習チャート活用の技術A
- 言語感覚を磨き語彙を増やす類語辞典活用の技術
- 正しく,速く書く力を伸ばす視写ファイル活用の技術
- 作品を俯瞰的に読めるようにするワークシート活用の技術
- 生徒の期待感や関心を高める写真活用の技術
- 穂先の動きをつかませるための2種類の墨汁活用の技術
- 毛筆の筆を立たせて書くことを意識させる「水」活用の技術
- 発問
- 説明的文章をクリティカルに読ませる3つの問いの技術
- 生徒の発言をつなぐ指示と発問の技術
- 物語の基本情報に着目させる発問の技術
- キーワードに着目して筆者の主張をとらえさせる発問の技術
- 指示が通りやすくなる「導入の導入」発問の技術
- 指名・発表
- 相手意識が育つ発表の技術
- 指名のかたよりを減らす技術
- 生徒の発表に対する不安を軽減する技術
- 板書
- バランスよく文字を書く技術
- まっすぐ文字を書く技術
- 学習の見通しをもたせる技術
- 大型テレビを活用した補助板書の技術
- 詩の形式をしっかりとらえる技術
- ノート指導
- どの生徒も授業の振り返りをできるようにする技術
- どの生徒も書きたいテーマが見つけられる思考ツール活用の技術
- 考えながら学習させるノートづくりの技術
- ワークシート
- 作文を読み合う活動が深まるワークシートづくりの技術
- 話し合いの方向性を見失わないワークシートづくりの技術
- 文学的文章の読み取りを効果的に行うワークシートづくりの技術
- 聴き合いを促進するワークシートづくりの技術
- 苦手な生徒もスムーズに音読できるワークシートづくりの技術
- オノマトペの意味をとらえ,語感を育てるワークシートづくりの技術
- 苦手な生徒も文法学習に取り組みやすいワークシートづくりの技術
- ペア学習
- 傾聴の姿勢を育てる技術@
- 傾聴の姿勢を育てる技術A
- 理解しようとしながら話を聞けるようにする技術
- ペアで説明文の内容をつかませる技術
- 短時間で集中して音読できるようにする技術
- 古文の音読を楽しみながら上達させる技術
- 学習環境
- 単元のゴールを掲示物に生かす技術
- 古典作品を身近に感じさせる技術
- クラスの語彙が自然に増える掲示の技術
- 日常的に古典に親しませる技術
- 言葉に対する感度を上げる名言集めの技術
- 書写授業の準備・片づけシステムづくりの技術
- グループ学習
- グループ学習を活性化する役割分担,位置関係づくりの技術
- 話し合いを促進する接続表現カード活用の技術
- 付箋で考えを分類・集約させる技術
- 全員を主体的な学びに向かわせるグループ再構成の技術
- 調べ学習を高速化させる技術
- 話し合いを活性化させるキラーフレーズ活用の技術
- 明確な方向性をもって話し合いができるようにする技術
- 質問の質を上げる技術
- 一人ひとりの考えをつなげてグループの意見をまとめさせる技術
- 宿題
- 短作文を書く力を育てる技術
- 語彙を増やす新出漢字習得の技術
- やる気を引き出し,達成感を味わわせる宿題チェックの技術
はじめに
すばらしい建築物には,優れた設計図があります。設計図は見た目だけの外観のデザインとは異なり,建物の強度や機能性,中で過ごすときの人間の動きなどが考慮されてつくられます。そして,その図面を基に,実際の建物が建てられていきます。
学習指導案は,授業の設計図と言えるでしょう。そこで,設計図と指導案とを比べつつ,似ているところと異なっているところを考えてみたいと思います。そして,本書の眼目である「技術」「技」といったものが,このこととどう関係しているかを最後に考えていきます。
まず,似ているところですが,1つめは,建物も授業もまず設計する必要があります。「授業計画」という言葉とともに,近年では「授業設計」「授業デザイン」という言葉が使われています。これも,現実の建物を建てるのに十分な計画が必要であることと同じです。また,この計画には,建物の強度設計と同じように,考慮しなければならないことがあります。その大きな1つが学習指導要領の目標であり,学習者のどのような力を伸ばすのかといった具体的な指導事項です。次に考えなければならないことは,「教材」「学習材」です。建物も計画通りの材料を使わなければ脆くなってしまいます。いかに外観はそれらしく組み立てられたとしても,住み始める前に傾いているようでは,建物になりません。そこで,どのような材料でつくるのかも考えて設計します。これらの大切な要素が抜け落ちてしまうと,張りぼてのような授業になります。授業の様子で例えると,生徒はとてもよく発言したり動いたりしているように見えて,何の言語能力もついていない,というような,活動だけの授業ということになるでしょうか。
次に似ているところは,指導案や設計図がなくても,実際につくることができるという点です。熟練工は,簡単な建築物ならば,精密な設計図がなくても,見事に木を組み合わせてつくり上げてしまいます。同様に,熟達した先生は,指導案を書かなくても,すばらしい授業を行うことができます。しかし,そこに到達できたのは,何度も設計図をかき,失敗しながら編み出してきた技があるからこそでしょう。ここを間違えると,一見うまくいっているようでも,張りぼて授業になってしまいます。
異なっているところは,建物を建てるのと違い,同じ授業はなかなかできないというところです。これが,教育の難しいところであり,教育のすばらしさでもあります。教育は人間と人間とのかかわりが基本です。工業製品のように画一的ではありません。だから,設計図があれば,だれがどのようにつくっても同じようにできる建築物とは異なり,すばらしい指導案でも,実際に授業をやってみると,うまくいかないことが多々あります。現在,様々な指導案集や指導書などがありますが,まったくその通りに進むことはなかなかありません。反対に,まったく同じように進められたとしたら,それは生徒を人間として扱っていないからかもしれません。
では,なぜ指導案をつくるのでしょうか。それは,自分の授業力を高めるためです。そして,その授業がどのような目的でなされているのかを他者に知ってもらうためです。ですから,「学習指導案」は「案」という文字がついていて,その「案」という文字はいつまでも外れることがないのです。それでは,人の指導案は役に立たないのでしょうか。そんなことはありません。しかし,人の指導案を自分の役に立つものにすることの一番大切な技が,指導案には抜けています。これは指導案そのものの性質と言えるでしよう。設計図には書かれない長年の経験によって蓄積された技。この本には,その「技」が数多く書かれています。
本書には様々な技が含まれていますが,授業の中でいろいろと試し活用することで,自分のオリジナルな技として体得し,豊かな学習活動を伴った国語教室になることを願っています。
2018年5月 /鈴木 一史
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- 明治図書
- 高校勤務ですが、中学の実践について学べました。2022/2/1150代・高校教員
- 参考にしてすぐに活用できるアイディアがいっぱいあります。2018/11/25匿名希望