- 第0章 生徒がセルフサービスでクラスをつくれるようにするために
- 教室に「セルフサービス」という考え方を
- セルフサービスを生み出す「システム」
- システムの裏で起動させるもの
- 学級「づくり」とは何を「つくる」ことか
- 第1章 生徒が能動的に動く学級のシステム
- 1 「学級開き〜1週間」のシステム
- よい出会いの準備をする
- 1人残らず居場所を与える
- 生徒のここを見る
- 「担任の第一印象」を持ち帰らせる
- 1週間でルールを定着させる
- 人間関係を意図的に紡ぐ
- 2 「朝学活」のシステム
- ホワイトボードメッセージで出迎える
- 音ではなく時間で動かす
- 朝読書で「静」の状態をつくる
- 日直は2人体制で取り組ませる
- 3 「給食当番・給食時間」のシステム
- 給食当番の役割分担を明確にする
- おかわりタイムはここに配慮する
- 食物アレルギー対応を最優先する
- 好き嫌いをする生徒にはこう話す
- 給食委員に権限を与える
- 4 「清掃当番・清掃時間」のシステム
- 清掃分担は雑巾→ほうきとする
- 合言葉を決める
- 役割を「はみ出す」ことの価値を教える
- 時を守り、場を清め、礼を正す
- 5 「係活動」のシステム
- 係分担の基本をつくる
- 休みの生徒に対応する
- 活動時間を限定する
- 活動の引き継ぎをさせる
- 働くことと居場所づくりの関係を教える
- 6 「終学活」のシステム
- 「よいところ探し」をミッションとする
- 連絡は文字と音声で伝える
- チャットタイムを定常的に行う
- 生徒の視点を増やす
- 7 「クラス会議」のシステム
- クラス会議を導入する
- クラス会議の基本形
- 4月のお題「クラス会議の名前を決めよう」
- 5月のお題@「学級目標を決めよう」
- 5月のお題A「教育実習生のお悩み解決」
- クラス会議の勘所
- 8 「班長会」のシステム
- 教師に見えないことがあると心得る
- 席替えの権限を与える
- リーダーを育てる
- 9 「学級便り」のシステム
- 「価値と期待」を生徒に伝える
- 「学校での顔」を保護者に伝える
- お誕生日号で発行する
- 10 「環境づくり」のシステム
- 生活しやすく配置する
- 禁止ルールを廊下に貼る
- 成長の足跡を残す
- 違いに「いいね」させる
- 11 「生徒指導」のシステム
- 事実を徹底的に明らかにする
- 学年部総出で対応する
- 誰かの成長をみんなの知恵にする
- つながり方を教える責任を自覚する
- 変えようとするな、わかろうとせよ
- 第2章 生徒が主体的に学ぶ学習のシステム
- 1 「学習規律」のシステム
- 10分休みは準備時間とする
- 時計で動かす
- あいさつの意味を教える
- 聞く態度とおしゃべりの意味を教える
- 2 「単元構想」のシステム
- 学びの地図を共有する
- 単元のゴールを明示する
- 学び方を示して選ばせる
- 3 「テストと評価」のシステム
- 指導と評価をセットにする
- 切り捨てる評価はしない
- 授業改善を重ねる
- 4 「教科担任との連携」のシステム
- いろいろな教師がいる環境を生かす
- 学級は特定の教科から荒れると心得る
- 学級づくりと教科経営の関係を自覚する
- 5 「特別の教科 道徳」のシステム
- いろいろなものさしをもたせる
- 道徳科授業はこうつくる
- この若者たちとともにこれからの社会をつくる
- おわりに
はじめに
学級づくりとは、何をすることでしょうか。生徒が教師の言うことをきちんと聞くこと。いじめが生じにくい状態を維持すること。自分たちのことを自分たちでできるようにすること。行事で力を合わせて頑張れる集団にすること。発達や感覚に特性がある子がのびのびと過ごせる場所にすること。保護者の要望になるべく沿うこと。隣の学級と歩調を合わせること…。まだまだありそうです。
学級づくりの目的とはなんでしょうか。答えは学習指導要領に書いてあります。しかし学習指導要領は目的地を書いてはくれますが、どうやったらそこに到達できるのかという地図は書かれていません。本書がその地図や海図のような類のものになればと思い、本書を執筆しました。
本書を書いた2024年。学校を取り巻く状況は10年前とは様変わりをしています。1人1台の端末整備が終わりましたが、使用耐年数の問題は解決したとはいえません。不登校や学校不適応の生徒が推定30万人と報道されています。教員採用試験志願者が激減しています。今の学校は多くのことが「例年通り」とはなかなかいかない状況になっています。それでも学校において1つだけ変わらないことがあります。それは人生の初期段階の義務教育において、人との関わり方を体験的に学ぶということです。
人に頼り、人に肩をかしてもらえる温かさを知る。
人に頼られ、他者に認められる喜びを知る。
人とぶつかり、それでも対話で折り合う難しさと大切さを知る。
人とぶつかり、どうしても自分と相容れない他者との付き合い方を知る。
そのために担任がするべきことは「明日もここに来たいな」と生徒が思える空間を用意することです。「明日もここに来たいな」と思わせるには、安心感があり、居場所があり、認めてもらえて、さらに自分がそこに参画できるという感覚が必要です。生徒たちを適切に学級づくりに参画させるための工夫を「セルフサービス」というキーワードを軸にして考えてまいります。学級づくりへの生徒の参画の仕方とその目的を、一緒に考えていただけたら幸いです。どうぞお付き合いください。
2025年1月 /岡田 敏哉
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- 明治図書