- 巻頭言
- T 協同学習理論編
- [1] 協同学習の意義
- 1 はじめに
- 2 21世紀を生きる生徒に必要な力とは
- 3 協同学習のもとで育てる「生きる力」とは
- 4 協同学習を行う理論的背景
- 5 学校現場におけるジレンマ
- 6 教師が期待している生徒の姿とは
- 7 グループ学習を行えば必ず成果は上がるのか
- 8 本校が行ってきた小集団学習とは
- 9 小集団学習から協同学習へ
- コラム 協同(cooperation)or協調(collaboration)?
- [2] 附属住吉中学校における小集団学習・協同学習の変遷
- 1 小集団学習事始め
- 2 小集団学習始めの一歩
- 3 本校の研究の流れと小集団学習
- 4 小集団学習継続のために
- [3] ジョンソンらが示した協同学習
- 1 協同学習の5つの基本的構成要素
- 2 協同学習における教師の役割
- 3 附属中学校の小集団学習とジョンソンらの協同学習
- [4] 本校における協同学習の実際
- 1 相互協力関係の具体化
- 2 対面的―積極的相互作用
- 3 個人の責任
- 4 小集団での対人技能
- 5 グループの改善の手続き
- 6 協同学習の基本的構成要素を支援する道具
- 7 協同学習の成果
- [5] 協同学習の方法を教える
- 1 協同学習訓練の目的とねらい
- 2 協同学習訓練のプログラム
- 3 協同学習訓練の方法
- コラム 生徒が企画・運営する体育祭
- プレゼンテーションで決まる修学旅行
- U 協同学習実践編
- 国語科 基礎編
- 〈1〉 国語科における協同学習の意義
- 〈2〉 国語科における協同学習の方法
- 〈3〉 国語科総合単元学習と協同学習の可能性
- 実践編「はるくさの歌物語」(第3学年)
- 〈1〉 国語科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 国語科における協同学習の実際
- 社会科 基礎編
- 〈1〉 社会科における協同学習の意義
- 〈2〉 社会科における協同学習の方法
- 実践編「江戸の罪と罰」(第2学年)
- 〈1〉 社会科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 社会科における協同学習の実際
- 数学科 基礎編
- 〈1〉 数学科における協同学習の意義
- 〈2〉 数学科における協同学習の方法
- 実践編「平行線と角」(第2学年)
- 〈1〉 数学科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 数学科における協同学習の実際
- 理 科 基礎編
- 〈1〉 理科における協同学習の意義
- 〈2〉 理科における協同学習の方法
- 実践編「植物のくらしとなかま」(第1学年)
- 〈1〉 理科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 理科における協同学習の実際
- 音楽科 基礎編
- 〈1〉 音楽科における協同学習の意義
- 〈2〉 音楽科における協同学習の方法
- 実践編「ミュージシャンになろう」(第1学年)
- 〈1〉 音楽科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 音楽科における協同学習の実際
- 美術科 基礎編
- 〈1〉 美術科における協同学習の意義
- 〈2〉 美術科における協同学習の方法
- 実践編「半立体校内ポスターの制作」(第2学年)
- 〈1〉 美術科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 美術科における協同学習の実際
- 保健体育科 基礎編
- 〈1〉 保健体育科における協同学習の意義
- 〈2〉 保健体育科における協同学習の方法
- 〈3〉 協同学習を取り入れた単元例
- 実践編「ハンドボール」(第2学年男子)
- 〈1〉 保健体育科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 保健体育科における協同学習の実際
- 技術・家庭科(技術) 基礎編
- 〈1〉 技術科における協同学習の意義
- 〈2〉 技術科における協同学習の方法
- 実践編「ダイナモステレオラジオの製作」(第2学年)
- 〈1〉 技術科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 技術科における協同学習の実際
- 技術・家庭科(家庭) 基礎編
- 〈1〉 家庭科における協同学習の意義
- 〈2〉 家庭科における協同学習の方法
- 実践編「校歌のタペストリー」(第1学年)
- 〈1〉 家庭科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 家庭科における協同学習の実際
- 英語科 基礎編
- 〈1〉 英語科における協同学習の意義
- 〈2〉 英語科における協同学習の方法
- 〈3〉 協同学習を取り入れた単元例
- 実践編「世界の有名人を紹介する」(第1学年)
- 〈1〉 英語科において協同学習を実現するために
- 〈2〉 英語科における協同学習の実際
巻頭言
神戸大学発達科学部附属住吉中学校は,その62年にわたる長い歴史を閉じることとなり,2009年4月より再編された神戸大学附属中等教育学校が併置されています。現在は,12年間を要する移行期の初年度にあたります。本書は,この記念すべき再編を契機とし,附属住吉中学校がこれまで培ってきた小集団学習に関わる教育実践研究の成果を総括し,それを中等教育学校の新たな伝統として伝え残していきたいとする教員の皆さんの思いや願いの結集です。
本書の理論編からもうかがえますように,本中学校における小集団学習への取り組みは,少なくとも1960年代にさかのぼることができます。当時は,生徒の創造性を育成する有効な学習形態として小集団が着目され,様々な検討の末に「バズ学習」が導入された時期でした。1980年代は,個と集団が共に活性化する実践を目指し,一斉学習・個別学習・小集団学習の効果的組み合わせが模索された時期でした。さらに,この時期以降,新しい学力観や総合学習といった流れの中で,自己開発力と協同学習力の育成が重視され,2000年以降には協同的な学びを実現するための「協同学習」理論の導入が始まりました。
本書の前半では,協同学習の基本的な考え方とそれを構成する要素などが,アメリカのジョンソン兄弟による研究を中心に解説されています。後半では,これまで附属住吉中学校において行われてきた,協同学習の5つの要素を導入した単元構成および授業実践とその成果が,9教科すべてにわたって紹介されています。理論と実践が合理的に対応し統合されており,研究者にとっても実践者にとってもきわめて有用な内容を備えています。
2003年度,遅い夕刻に校務を終えた先生方のもとを訪れ,協同学習に関する定例学習会のファシリテート役を楽しく務めさせていただきました。先生方の熱心な研究の成果が,本校を会場とした「第38回全国協同学習研究会(2005年)」にて発表されましたが,この研究会の前身が「全国バズ学習研究会」であったこと,また,大学時代に私の卒論指導担当であった恩師・塩田芳久先生が「バズ学習」に関する理論研究および実践研究の第一人者であったことに,不思議な縁を感じます。
そして,本書を大会資料として行われる本校主催の「教育研究協議会(2009年10月16日開催)」が,「第6回日本協同教育学会・こうべ大会」のプレ大会として位置づけられたことも,附属住吉中学校の中等教育学校としての新たな出発に花を添えるものとなりました。協同学習の高い理念に基づく具体的方法論がさらに鍛え高められ,本校における小集団学習がますます発展していくことを心より祈念して,巻頭の言葉といたします。
神戸大学大学院人間発達環境学研究科 教授 /伊藤 篤
理論と実践例も豊富で役に立ちます。
明日の授業でやってみようかな。
今の時代にマッチしています。必読本ですね。