国語教師のための語彙指導入門

国語教師のための語彙指導入門

新刊

総合37位

データに裏打ちされた、新時代の国語指導提案書

「日本語コーパス」プロジェクトに参画し、研究を進めてきた著者が、子どもの「語彙」をデータに基づいて定量的に分析。目に見えにくい国語学力を、あえて目に見える形で解き明かすことに挑戦した意欲作です。2020年以降の新しい国語教育を担う教師必読の1冊。


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ISBN:
978-4-18-246711-0
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
小・中・高
仕様:
四六判 208頁
状態:
在庫あり
出荷:
2019年7月18日
新学習指導要領解説書籍
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もくじ

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 言葉と語彙
言葉を学ぶということ
感化的内包と言語文化
言葉を単語に区切るということ
語彙の広がりと深まり
漢字の読み書きと日常性
教科書の中で使われている言葉
第2章 大切な接続表現
接続表現の使用発達
「すなわち」の用法
「ただし」の用法
第3章 いろいろな形容詞の用法
形容するものされるもの
「厚かましい」の用法
「かわいい」の用法
いろいろな形容詞の用法
形容詞の語彙を広げる学習
第4章 国語のテストの成績と語彙
国語の学力テスト
共通課題による作文調査と解析結果概要
上位層と下位層の差
接続表現との関連性
作文推敲の変化
第5章 作文と語彙
作文コンクール入賞作品
語種の特徴
品詞の使用特性
BCCWJとの関係
意味的な傾向
第6章 作文テーマを広げる
共起語から言葉の伝わりやすさを探る
テーマから言葉を広げる―小学校
テーマから言葉を広げる―中学校
テーマから言葉を広げる―高等学校
第7章 科学と言葉の歴史
最先端の医療と言葉の問題
新語導入の歴史
明治期の訳語を中心とした造語
再生医療関連用語の抽出
用語に使用されている漢字
新聞記事の用語と理解度
教科書に現れる用語
第8章 古語と色を含む言葉
なぜ「青汁」というのか
赤い・白い・黒い
季語にみる言葉の感覚
おわりに

はじめに

 「語彙」という言葉は、いつごろから使われ始めたのでしょうか。

 語彙論研究は歴史も長く、多くの研究者が言葉の問題と格闘してきました。語彙という言葉は主に研究対象としての概念を表す専門用語でした。よって、今までは「彙」という字は常用漢字ではなく、新聞や書籍などに出てくる場合「語い」「語い(彙)」「語イ」などと書き表されていました。それが、2010年に常用漢字表の改定により新しく196字が追加され、その中に「彙」も含まれています。このことにより、現在では新聞雑誌などを含めて「語彙」という漢字表記がされるようになっています。そして、2017年に改訂された学習指導要領では、内容の改善・充実の一番はじめに「語彙指導」が示されることとなりました。また、ここ数年で一般書籍にも「語彙」と銘打った書籍が多く出版され、この言葉自体が人口に膾炙してきています。

 かくいうこの本の書名にも語彙という言葉が入っています。10年前では考えられなかった書名のつけ方かもしれません。「Google Books Ngram Viewer」というウェブ上のサービスを使うと、過去に出版された膨大な書籍の中で特定の語がどれぐらい使われているかを検索することができます。残念ながら、日本語版はまだありませんが、英語で語彙を意味する「vocabulary」を検索すると、右肩上がりで出版割合が増えていることがわかります。このことからも、語彙という言葉と考え方が近年広まってきていることがわかります。現在では当たり前のように使っている「語彙」という捉え方も、一般的に使われてきた歴史を遡ると、そう長くはないようです。

 それでは、語彙という考え方は教育的にどのように捉えればよいのでしょうか。

 よく、「語彙力がない(ある)」という言い方を耳にします。自分で語彙力があると自信をもって公言できる人は少ないでしょう。しかし、他者に対しては、「あの人は語彙が豊富だ」と感じることがあります。それは、語彙というものが、個人によって違うからです。語彙とは、言葉のまとまりのことです。自分がもっている言葉のまとまりである言語総体と、他者の言語総体が違うのは当たり前であり、完全な包含関係にはありません。図にすると円が複数組み合わさっている「ベン図」のようなものです。一つひとつの円が個人の語彙です。そして、ベン図の円が重なっている部分が、他者との共通の語彙です。すると、重なっている部分が大きければ大きいほど、他者とのコミュニケーションがとりやすくなることは想像に難くありません。

 しかし、どんなに言葉を増やしても、自分にはない言葉を他者がもっていることがあります。それが、他人の言葉づかいを聞いて「語彙が豊富だ」と思うゆえんです。したがって、この円を大きくしていくことが語彙教育に求められてきます。

 そこで、語彙教育を考えるときには、語彙そのものをいくつかのまとまりに分けて考える必要があります。こうすることで、必要な語彙というものがはっきりしてきます。この本の中には、語彙をどのように考えていけばよいかについて、いろいろな事例を基に示していますが、例示された言葉がどのような性質をもっているのかについてはっきりさせないと、語彙という大海でおぼれてしまうかもしれません。ここでは、「理解語彙」と「表現語彙」という分け方を踏まえて、学ぶべき語彙の分類を以下のように考えています。

・日常生活に必要な語

・日常生活を豊かにする語

・(各教科)学習に必要な語

・思考力を高める語

・専門用語

 これらの言葉を一括して「語彙力」としてしまうと、どの語彙が足りないのか、何が問題なのかを見誤ってしまいます。これらの語彙には学習すべき優先順位や学習によってしか培われない語もあります。本書では事例とともに様々な言葉に触れています。それらの言葉を正確に捉えることで、語彙能力は大きく伸長するはずです。さらに、どのような語が学習すべき語であるのかについて、現在では多くの蓄積されたデータによって示すことができるようになってきました。

 今まで積み重ねられてきた語彙指導に関する教員の知見がデータと結びつくとき、客観的根拠を伴った効果的な語彙指導が実現され、学習者の中に豊かで広い語彙の世界が広がることになるでしょう。

 本書が国語科教育の教科指導のみならず、言語環境としての教員の言葉に多くの変化をもたらし、豊かな言葉の使い手として子どもたちの成長に寄与することがあれば、これに勝る喜びはありません。


  2019年4月   /鈴木 一史

著者紹介

鈴木 一史(すずき かずふみ)著書を検索»

茨城大学教育学部教授

筑波大学大学院教育研究科修了後,東京大学教育学部附属中等教育学校教諭を経て,2012年から現職。

日本国語教育学会,解釈学会員,教育出版中学校国語教科書編集委員,NHK高校講座「現代文」講師。特定領域研究「日本語コーパス」(BCCWJ)(2006〜2010年度)プロジェクトに参画。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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