- はじめに
- 第1章 小学3年生「ギャングエイジ」ってどんな時期?
- 低学年の次学年としての3年生
- 高学年の前学年としての3年生
- 先生大好き、大人大好き
- 「やりなさい」では、動かない、動けない
- 複雑化する友だち関係
- 第2章 小学3年担任のマインドセット
- 何事も「理由」を説明しよう
- 「先生大好き」の気持ちを大切にしよう
- 「Being」に重きを置こう
- 「集団」と「個人」の違いを意識させよう
- 「全員のやる気」を引き出す工夫をしよう
- 第3章 小学3年の学級づくり
- 1学期
- 「Being」と「Doing」を区別するところから始める
- 「指示」を聞いて実行しているか確認できるシステムをつくる
- だれかの何かをほめたときは、あわせて「全員」をほめる
- 「自分のことは自分で」と「助け合い」のバランスを取る
- どんなに小さなことでも、はじめは徹底して「聞く」
- 「子どもたちが交流できる場」をたくさん用意する
- 子どもの成長過程を理解して、保護者の「不安」を受け止める
- 社会科見学を通して、「自発性」と「社交性」を養う
- 2学期
- 「個人」から「集団」へとシフトチェンジしていく
- 「友だち」という存在について考える機会をもつ
- 「人は人、自分は自分」を意識させる
- 言葉づかい、持ち物などの「生活習慣の乱れ」を見逃さない
- 「縦のつながり」を再検討する
- 「クラス会議」を生かして、自治的な教室づくりをする
- 3学期
- 3学期だからこそ、「繰り返し」にこだわる
- 3年生の特徴を踏まえた「別れ」を演出する
- 第4章 小学3年の授業づくり
- 「思いつき発言」「聞き返し」をさせない
- 「挙手→指名」方式を改める
- 「聞く」「書く」「話す」のルーティンをつくる
- 「評価基準」を示して努力も能力も並行して見取る
- 「メモ」と「まとめのノートづくり」で、板書なし授業の下地をつくる
- 「課題を決める」「やり方を決める」経験を多く積ませる
- 「教師の解」を示して、学びのあこがれを引き出す
- 第5章 小学3年の子ども、トラブル対応
- 「落ち着きのない子」への対応
- 「手紙交換や内緒話を繰り返す子」への対応
- 「他学年とトラブルを起こす子」への対応
- 「登校しぶりを始めた子」への対応
- 「仲間外れ」への対応
- 「保護者間や学校外でのトラブル」への対応
- おわりに
はじめに
私がはじめて3年生を担任したのは、教職2年目のことでした。
今でも初日の光景はありありと思い出せます。
「今日が3年生としての第一歩です。いい1年にしたいと思う人は手をあげなさい」
私は第一声でこう言いました。すると、全員がビシッと手をあげたのです。一人ひとりのいきいきした顔が今でも忘れられません。
というのも、私は大卒ですぐに教員になったので、初年度は文字通り右も左もわからず、クラスの子たちに助けられながら、何とか1年間を終えられた状態でした。
「次は失敗できない…、失敗なんてしたら、子どもたちに申し訳ない。この1年がうまくいかなかったら、教師は辞めよう」
と、私は本気で考えていました(今思えば若気の至りなのですが…)。
だから、初日の私はひどい顔をしていたと思いますが、子どもたちのいきいきとした顔に、文字通り救われたのでした。
次に3年生を担任したのは、実に10年後です。
はじめての主任として3年生をもちました。10年間、ほとんど高学年を担任していた私は、初日の子どもたちのエネルギーに圧倒されました。低学年での経験も積んでいましたが、エネルギーの質量が違うのです。
「先生に質問がある人?」
と聞くと、身を乗り出して手をあげる子たち。一人ひとりの顔が、自信に満ちあふれていました。久しぶりの3年生のエネルギーに、襟を正したのを覚えています。
もちろん、担任したどのクラスにも思い入れがあります。しかし、特に個性的でカラーが際立っていたのは3年生だったなと思うのです。
低学年には低学年のカラーが、高学年には高学年のカラーがあります。それぞれ「らしさ」が存在し、指導の「定石」が確立されています。
特に1年生や6年生の指導は、ベテランの先生に質問すれば、指導のポイントをたくさん教えてもらえることでしょう。
ところが、3年生はどうか。低学年でもないし、高学年でもありません。無邪気で屈託がなくて、純粋でどこか幼くて、それでいて自分たちでやりたがり、大人ぶり、背伸びをする。本当に、小学生のすべてが詰まっているような、不思議な学年です。
私は、2年目はベテランの先生たちと、学年主任時は若手の先生たちと学年を組みましたが、3年生のクラスはどのクラスも個性的でした。「これぞ3年生!」ではなく、それぞれのクラスにいきいきとした個性とカラーがありました。
どのようなルートからでも山に登ることができる。そんな定石のない3年生について、1冊の本を仕上げる。
これほど私を悩ませ、考えさせられるテーマはありませんでした。
しかし、型のない3年生の指導を一から考え深めることで、私は自分自身の教育観とはじめて真剣に向き合えた気がします。
3年生の指導にとどまらず、本書を通じて、読者の先生方が改めてご自身の教育観について思い深めることができれば、著者として大変幸せに思います。
2023年3月 /須永 吉信
私は3年という学年をもつと毎回苦しみます。
今再び読み直し納得感を深めているところです。
今から指針を作り直すために学び直しているところです。共感しながら読める良本だと思います!