- はじめに
- 本書の使い方
- 第1章 とっさのこんな時,叱るより「局面語り」―お話―を効果的に活用するポイント
- 01 「局面語り」―お話―で得られる教育的効果
- 02 「局面語り」―お話―を行う時の留意点
- 第2章 教室の「安心・安全」にかかわるお話
- 01 話を聞く姿勢の悪い子がいたら… 「3つを使って聞いてね」
- 02 正しく椅子に座れない子がいたら… 「シートベルトができるかな?」
- 03 廊下を走る子がいたら… 「目線カメラで確認してみよう」
- 04 言葉遣いが悪い子がいたら… 「言葉は見た目をこえていく」
- 05 友達への注意の仕方がキツイ子がいたら… 「注目できる言葉のシャワーをかけてあげて」
- 06 やり返していいと思っている子がいたら… 「やり返したところで変わらないこと」
- 07 トラブルの解決が下手な子がいたら… 「仲直りの方法には順番がある」
- 08 陰口を言う子や陰口を伝える子がいたら… 「悪い種まきをするな」
- 09 通学団トラブルの多い子がいたら… 「安全で,安心な通学団」
- 10 リーダーや代表に選ばれたのにやる気のない子がいたら… 「まずはあなたがナンバーナインになろう」
- 11 教室に生き物を持ち込んでくる子がいたら… 「命に大きさはない」
- 第3章 教室の「ルール」にかかわるお話
- 12 チャイム前着席ができない子がいたら… 「授業を始めるのは誰ですか?」
- 13 授業中おしゃべりをする子がいたら… 「今しかできないおしゃべりをしよう」
- 14 授業中トイレに行く子がいたら… 「あなたのトイレタイムは何時何分?」
- 15 発言する子の方を向いて聞けない子がいたら… 「勇気100%にしてあげて」
- 16 すぐ先生に質問しにくる子がいたら… 「自分なりの答え合わせを」
- 17 すぐに席替えしたいと言う子がいたら… 「立ち歩く席替えをしよう」
- 18 運動場で砂いじりをする子がいたら… 「次のお楽しみ会は…」
- 19 タブレットの使い方が悪い子がいたら… 「タブレットに使われているよ」
- 20 道幅いっぱいに広がる子がいたら… 「足跡の向きと目線」
- 21 式や集会の参加態度が悪い子がいたら… 「学校全体がチームプレーする場」
- 22 お金のトラブルが多い子がいたら… 「あなたのお金は誰のものでもない」
- 23 かかとを踏んでいる子がいたら… 「2つの命を踏みつぶさないで」
- 第4章 教室の「整理整頓」にかかわるお話
- 24 靴をそろえられない子がいたら… 「心をそろえる場所」
- 25 ごみをまたぐ,拾わない子がいたら… 「はっけんのプロになろう」
- 26 落とし物や失くし物が多い子がいたら… 「物にあいさつ」
- 27 物に名前を書かない子がいたら… 「『あなた』というおうち」
- 28 机に落書きをする子がいたら… 「あなたの机ではありません」
- 29 机と椅子をそろえられない子がいたら… 「あなたの心の姿」
- 30 机の上に物を置いたまま移動する子がいたら… 「片付けるのは机の上だけ?」
- 31 机の中が汚い子がいたら… 「ドラえもんごっこをしよう」
- 32 服装が乱れている子がいたら… 「服はおしゃれではなく,おしゃべり」
- 33 忘れ物を繰り返す子がいたら… 「忘れごとにはしない」
- 第5章 学校の「生活習慣」にかかわるお話
- 34 あいさつができない子がいたら… 「あめはすき・だ」
- 35 気を付けの姿勢ができない子がいたら… 「気持ちを付ける」
- 36 ハンカチで手を拭かない子がいたら… 「一番きれいな手でいられる方法」
- 37 指示されたことしかできない子がいたら… 「次,先生はみんなに何と言うでしょう?」
- 38 野次馬根性が働く子がいたら… 「野次馬っ子は,おやじ馬」
- 39 行事にやる気のない子がいたら… 「3つの体験を味わえる」
- 40 必要以上に緊張している子がいたら… 「どうしよう?より,どうなる?」
- 41 敬語が使えない子がいたら… 「先生は最高の練習相手」
- 42 歌を真剣に歌わない子がいたら… 「心の音叉で共鳴しよう」
- 43 給食中の食事マナーが悪い子がいたら… 「一緒に食べたい人は,一緒にいたい人」
- 44 体調管理が苦手な子がいたら… 「自分説明書をつくろう」
- 第6章 子どもの「学習」にかかわるお話
- 45 テストの点数に一喜一憂する子がいたら… 「本当のテストの結果」
- 46 感想や振り返りを1行で提出する子がいたら… 「頭の中の海にもぐろう」
- 47 ノートの使い方が悪い子がいたら… 「本棚に入るノートに」
- 48 勉強が嫌いな子がいたら… 「勉強の意味」
- 49 先生によって授業態度を変える子がいたら… 「自分次第で授業は楽しめる」
- 50 挙手をしたのに当ててくれないと文句を言う子がいたら… 「言えなくてもできること」
- 51 ペアやグループになるのが苦手な子がいたら… 「ぬいぐるみとお話」
- 52 挙手や発言ができない子がいたら… 「全員発言はしなくてもいい」
- 53 授業の事前準備ができない子がいたら… 「一緒にお出かけしよう」
- 54 ペースがゆっくりの子がいたら… 「次のバス停までには間に合ってね」
- 55 自習に集中できない子がいたら… 「学生ですから」
- おわりに
はじめに
「お話」「トーク」「語り」などと聞いて,みなさんはどんな話を思い浮かべますか? 思い浮かべてから続きをお読みください。
私は,次の2種類の語りがあると考えます。
1つ目は,「定石語り」です。
これは,事前に準備された教師の語りの引き出しから繰り出される語りを指します。
学級開きにはこの語り,思いやりの心を育てるためにはこの語り,道徳科の授業の説話にはこの語り…といった具合に。
もちろん,定石であっても聞き手である目の前の子どもたちの実態に合わせて話すことは必要不可欠です。その中で,話し手である私たちがそれぞれ主体的に語りの内容を吟味し,アレンジし,熱をもって語ることで,初めて定石語りは子どもの心に響く話となります。そんな定石語りを,私はこれまで「とっておきの話」「とっておきの語り」と名付けて実践してきました。
2つ目は,「局面語り」です。
これは「定石語り」と違い,教師が出合う学級経営上の局面に合わせて臨機応変に繰り出される語りを指します。
姿勢の悪い子がいたらこの語り,廊下を走る子がいたらこの語り,あいさつをしない子がいたらこの語り…といった具合に。
どちらも大切な語りですが,教育書として紹介される語り本には,圧倒的に前者が多いようです。冒頭の問いに対して,みなさんが思い浮かべた話もきっと「定石語り」だったことでしょう。しかし,「定石語り」だけでは学級経営が上手くいかない局面は山ほどあります。
これまで私は「定石語り」である「とっておきの話」を600話近く創り,様々な著書でその引き出しを紹介してきました。そんな私も,実は事前に準備していない語りをしていることの方が多いのです。600話分の引き出しを探しても見つからない,「局面語り」を毎日のように目の前の子どもたちへと繰り出していました。
教師歴10年を迎える目前,事前に準備された「定石語り」の引き出しだけに頼るのではなく,目の前の子どもたちの様子や変化を敏感に捉え,臨機応変に語る「局面語り」こそ,学級経営上とても重要なのではないかと思うようになりました。
本書では,55の局面に対しての語りを「ここ一番で効くお話」として収録しています。私がもしこんな局面に出合ったら繰り出すであろう,または実際に繰り出した臨機応変な語りの引き出しです。読者のみなさんには,本書のページをめくる度に掲載されている語りと比べて「この局面,自分だったらどう語るか」を常に考えていただきます。いざ同じような局面に出合った時に,目の前の子どもたちの実態に合わせて臨機応変に語りを繰り出す力を,本書を相棒に鍛えていきませんか?
教師の語る力の新しい世界の旅へとお出かけください。
まずは次ページの本書の使い方からご覧ください。グッドラック!
著者 /小木曽 弘尚(くろぺん)
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- 明治図書