- はじめに
- 題材一覧
- 序章 季節の題材で,子供の「つくりたい!」を引き出そう!
- 1 題材に季節を取り入れるポイント
- 2 季節の題材を子供の「つくりたい!」につなげるポイント
- 3 年間計画に位置付けるポイント
- 4 子どもの生活と社会を生かした題材設定のポイント
- 5 季節の題材を実践するポイント
- 1章 春の題材
- 1 桜が散ってもHAPPY・HAPPY 【造形遊び】中学年
- 2 さくらさくら・ちょうちょ 【絵・立体】低学年
- 3 いってみたいな くものうえ 【絵・立体】低学年
- 4 はるカード 【絵】中学年
- 5 はるのにわには 【絵】中学年
- 6 春を集めて 【絵】中・高学年
- 7 はじまりの花 【絵】高学年
- 8 春コラージュ 【絵】高学年
- 9 つむりんとあそぼう(梅雨) 【絵・立体】低学年
- 10 あじさいさいたよ(梅雨) 【絵】低学年
- 11 6月の花嫁(梅雨) 【絵】中学年
- 12 おしゃれぼうず(梅雨) 【立体】中学年
- コラム1 年末年始はヒントがいっぱい!
- 2章 夏の題材
- 13 みどりと水のいいかんじ 【造形遊び】高学年
- 14 ねんどと水で何しよう! 【造形遊び】高学年
- 15 生長するひまわり 【絵】低学年
- 16 アイスランドのペンギンくん 【絵】中学年
- 17 ウキウキルンルン 【絵】中学年
- 18 キラキラパフェ 【立体・鑑賞】中学年
- 19 ジャバジャババシャーン 【立体】中学年
- 20 ふるいけや 【立体】中学年
- 21 カラフルサングラス 【工作】低学年
- 22 にじみを生かしたうちわづくり 【工作】低学年
- 23 BT (ブリーチTシャツ) 【工作】高学年
- 24 風の音をつくろう 【工作】高学年
- 25 水の一瞬を切り取って… 【鑑賞】高学年
- コラム2 子供にとって「図工」はひとつ
- 3章 秋の題材
- 26 おうえんフラッグ 【絵】全学年
- 27 えんそくへいこう! 【絵】低学年
- 28 秋の落とし物 【絵】中学年
- 29 祭りだ! ワッショイ! 【絵】中学年
- 30 月夜の晩に 【絵】中学年
- 31 秋色のコンポジション 【絵】高学年
- 32 秋風のまち 【絵】高学年
- 33 ボンドオバケパーティー 【立体】中学年
- 34 あの一瞬を残そう! 【立体】中学年
- 35 ○○から○○をまもるかかし 【立体(共同制作)】高学年
- コラム3 あるのかな?「正しい図工」
- 4章 冬の題材
- 36 ガンガン氷で何しよう 【造形遊び】中学年
- 37 風を感じて 【造形遊び】高学年
- 38 ゆきがふったら 【絵】低学年
- 39 「ねこどし」があったらいいニャン 【絵】低学年
- 40 干支の絵かきぞめ 【絵】低学年
- 41 真冬に描く心の中の花 【絵】高学年
- 42 わたしのふわふわちゃん 【絵・立体】中学年
- 43 なかよしゆきだるま 【立体】低学年
- 44 冬やすみ,こんなことしました 【立体】低学年
- 45 おねがいだるまん 【立体】中学年
- 46 えんぎもの 【立体】中学年
- 47 飛び立つカタチ 【立体】6年生
- 48 立体福笑いをつくって遊ぼう 【工作】低・中学年
- 49 ビニール凧をつくって揚げよう! 【工作】中学年
- 50 ○○小 瞬間コレクション 【鑑賞】6年生
- おわりに
- 執筆者一覧
はじめに
◇子供の「もっとやりたい!」の源
私が,東京都の公立小学校の図画工作専科教員となって,20年近くが経ちました。毎日,低学年から高学年までの子供たちと図画工作の授業をしています。子供たちはよく,「図工は,楽しい!」と言ってくれます。そして,私も,子供たちが,「もっとやりたい!」と,嬉々とした表情で思わず声に出したり,「これからどうやって表していこうか?」と,真剣に材料や作品と向き合ったりしている姿に出会うと,充実した豊かな時間を過ごしているなぁと,しみじみ実感するのです。
そんな,子供たちの「つくりたい!」や「もっとやりたい!」という主体性を発揮する原動力は,いったいどこからやって来るのでしょうか。
私は,図画工作という教科の特性が子供の主体性の原動力に深く関係していると考えます。なぜなら,図画工作という教科は,子供の日常に寄り添いながら,題材を組み立てることができるからです。
例えば,4月の新学期から年度末の3月まで,1年間の季節に沿って,題材をいくつか想定してみます。
・春,校庭に出て草花を探すことから思いを広げる題材。
・夏,しばし暑さを忘れ,水を材料にして形や色を感じ取る題材。
・秋,様々な形をした落ち葉や木の実から想像を膨らませる題材。
・冬,強い風を受けながら,材料と関わり,寒さだって楽しく感じる題材。
このように,図画工作の授業は,1年を通して,気候の穏やかな気持ちよい季節には屋外へ出てみたり,暑さの厳しい猛暑の季節には,水と関わったりと,子供が日々感じている自然の営みに,授業のねらいを関連させて,題材を柔軟に検討することができるのです。もちろん,授業を組み立てる基盤は,学習指導要領に則ります。それを基盤にしながらも,子供の日々の生活や実態に合わせて,柔軟に題材を設定できるのが,図画工作の特性のひとつだと考えます。子供にとっての「私事(わたくしごと)」と,題材がつながるとき,そこに,子供の心が動き出す「必然」が生まれると感じませんか。その必然性が子供の主体的な活動を引き出す源になっているのでしょう。
そこで,本書は,子供とともに日々変化する季節の移り変わりに視点を置きました。「春夏秋冬」をテーマにした題材をわかりやすく紹介した「50選」の題材集です。
「季節と子供」を,「図画工作」という教科がどのようにしてつなぐことができるのか,この1冊を通して読者の皆さんも,是非,考えてみてください。
◇日々の子供たちの姿から
東京都の公立小学校には,図画工作の専科教員が各校に1人ずつ配置されています。そして,都では,行事や学級経営,算数や国語などの教科ごとに,公的な研究会を設置しています。したがって,都の公立小学校の図画工作専科教員は,全て「東京都図画工作研究会」(通称:都図研)に所属することになります。
本書で紹介する「50選」の題材は,都図研の専科教員が実践したものです。季節と関連した実践を厳選してまとめていますが,どの実践も,日々の子供たちとの関わりや姿を手掛かりに,ねらいや内容を整理しながら編み出された実践ばかりです。
教科書にも,季節からヒントを得た題材がたくさんあり,実践された先生方も多いと思います。本書では,全ての題材が「春夏秋冬」に関連し,それぞれの季節の項目ごとに「造形遊び」「絵や立体,工作に表す」「鑑賞」の領域で整理しています。
図画工作の専科教員に限らず,全国の先生方に活用していただけるように,ページの構成は見やすく,授業の流れが時系列でわかるようになっています。また,ねらいや準備,およその時間数,その題材で大切にしてほしいことや,指導と評価のポイントも短い文で示しました。
◇新しい学習指導要領と「季節の題材」
平成29年3月,新学習指導要領が告示されました。全ての教科で,目標を達成するために育てたい資質・能力が,「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」という3つの柱に整理されました。これは各教科における指導のポイントが明確になり,目指す資質・能力をより具体的に考える必要性が高まったということです。また,新学習指導要領の図画工作の目標は,「表現及び鑑賞の活動を通して,造形的な見方・考え方を働かせ,生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力を次のとおり育成することを目指す」となりました。その内容は平成20年告示のものと大きく変わっていないことが理解できます。しかし,注目すべき点のひとつに,「生活や社会の中の形や色に豊かに関わる資質・能力」の育成という文言が加えられた点があります。「生活や社会の中の形や色」と,「季節」という自然の営みは,造形的な見方や考え方を働かせるうえでも大切な手立てと言えるでしょう。
「季節の題材」を設定する際は,学習指導要領の目標と,目の前の子供たちの実態をしっかりと捉え,その題材で育つ資質・能力を整理する必要があります。そして,各学校の図画工作の年間計画を基に,領域のバランスや学年の時間数に応じて設定しましょう。
こうしたことを踏まえて,多くの先生方に本書が活用されることを願っています。
2019年1月 /平田 耕介
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- 明治図書