- はじめに
- 第1章 発問研究の歴史
- 発問の歴史を概観する
- 1 古代の発問法
- 2 日本の発問の源流
- 3 明治の近代学校制度
- 4 新教育の影響
- 5 大正自由教育期の児童中心主義
- 6 戦後の日本教育
- 7 これからの発問
- 第2章 主体的な学びを引き出す「よい発問」の条件とは
- 1 「問い」と「発問」とは何か
- 1 「問い」の定義
- 2 「発問」とその機能
- (1) 子どもの思考に働きかける教師の問いかけ
- (2) 子どもたちの分化
- (3) 問い方を教える
- (4) 受動的発動
- 2 「よい発問」とは何か
- ◆ 「よい発問」と「わるい発問」
- (1) よい発問とは
- (2) よい発問の条件
- (3) わるい発問とは
- 3 「よい発問」が生まれやすくなる環境
- 1 問うことを歓迎する
- 2 聞き手の質問を豊かにする
- 3 「感度」を高める
- 4 環境を開放する
- 5 知的好奇心を引き出す
- 6 発問が毒になることもある
- 第3章 発問の分類と組織化
- 1 どのように分類するのか
- ◆ 「発問」の分類
- (1) 指導言
- (2) 発問の類型化
- (3) 評価言
- 2 どのように組織化するのか
- 1 発問の組織化
- 2 論理的な組織化
- (1) 「目標達成」から考える発問
- (2) 授業構成レベルで考える
- 3 科学的な組織化
- (1) 教科の論理に即した発問
- (2) 段階的に発問する
- 4 心理的な組織化
- (1) ゆさぶり発問
- (2) 「知覚語」で問う
- (3) 感覚に働きかける
- 第4章 「発問」づくりの基礎基本
- 1 先人に学ぶ発問論―『教育学講義速記録』より―
- 1 項目の説明
- (1) 問答の種類
- (2) 問答の形
- (3) 良発問に必要な条件
- (4) 発問の心得
- (5) 答えについて
- (6) 教師の態度
- 2 谷本の発問作成
- (1) 教育的目的の明確化
- (2) 子どもの理解度とニーズの評価
- (3) 論理的な構成と進行
- (4) 子どもの参加と思考の促進
- (5) 反省と調整
- 2 発問づくりの基礎・基本とは
- 1 基礎・基本とは
- 2 発問づくりの基礎・基本
- 3 発問づくりの5つのステップ
- 第5章 見方・考え方を働かせる発問のつくり方
- 1 見方・考え方とは
- 1 見方・考え方を働かせる
- (1) 社会的な見方・考え方
- (2) 見方・考え方を「働かせる」とは
- 2 見方・考え方の成長
- 2 見方・考え方を働かせる発問
- 1 教科共通の考え方
- (1) 比較する発問
- (2) 総合する発問
- (3) 関連づける発問
- (4) つなぎ言葉
- 2 教科特有の考え方
- (1) 選択・判断する発問
- (2) 多角的に考察する発問
- 3 子どもの知識を発展させる発問
- 1 「見方・考え方」と知識
- 2 「スキーマ」の利点
- 3 スキーマを発展させる発問
- 4 「見方・考え方」とスキーマの発展
- 第6章 子どもの思考とあり方をゆり動かす発問観
- 1 「ゆさぶり発問」の考え方
- 1 ゆさぶりは「観」の問題
- 2 「子どもの論理」から考える
- 3 互いにゆさぶり合う
- 2 ゆさぶり,オープンエンドで終える
- 1 既知から未知を引き出す
- 2 よさや価値を引き出す
- (1) 不安定な状態にする
- (2) あるものがない状態を考える
- 3 「間」を活かす
- 第7章 子どもの側からの問い
- 1 子どもの見取りをどうするか
- 1 記録から
- 2 「この子」の発言を活かす
- 3 単元構想の捉え直し
- 4 つながる学び
- 2 「この子」の見取りをどう活かすか
- 1 「この子」を捉えて活かす
- 2 教材研究からつくる問い
- 3 子ども研究からつくる問い
- 4 「この子」の見取りから考える
- 5 子どもからの「問い」を見極める
- 3 子どもの発言の段階から考える
- 1 よい授業の条件
- 2 子どもの発言の五段階
- 3 子どもの側から組み立てる
- 第8章 学習者主体の授業を考える
- 1 子どもを支え,受ける教師の態度
- 1 「支援」を考える
- 2 支援的発問
- 3 学習者主体の授業で使う教師の言葉
- 4 子どもの言葉の受け止め方・拡げ方
- 2 子どもの内なる「問題」を育てる
- 1 「問題」をもつのはだれか
- 2 選びとった問い
- 3 子どもは「問う」存在
- 4 内から発動する問い
- おわりに
はじめに
発問は,単に知識を伝え思考を促すだけでなく,子どもの好奇心を喚起し,問題発見から問題解決に至る主体的な学習を促します。本書は,子どもの主体性を育むための発問の考え方と技術に焦点をあてて著しました。発問が果たす役割を様々な角度から追究し,教室内の対話を豊かにするための理論と方法について論じます。
以下,各章の概要を紹介します。
第1章では,発問の歴史を概観します。古代から現代に至るまでの発問法の変遷,日本の教育における発問の源流,明治以降の教育制度の変化,大正自由教育期の児童中心主義,戦後日本の教育改革,そしてこれからの発問について論じます。
第2章では,主体的な学びを引き出す「よい発問」の条件について考察します。「問い」と「発問」の定義からはじめ,よい発問とわるい発問の違い,よい発問が生まれる環境の構築方法について論じます。
第3章では,発問の分類と組織化の方法について詳述します。発問をどのように分類し,教育的な目標を達成するためにどのように組織化するか,論理的,科学的,心理的な側面からアプローチします。発問の分類方法や組織化の重要性に焦点を当て,効果的な発問のための方法を紹介します。
第4章では,発問づくりの基礎と基本に焦点をあてます。発問づくりのプロセスを5つのステップに分けて示し,発問する際に留意すべき技術について説明します。
第5章では,見方・考え方を活かす発問の作り方を解説します。社会的な見方・考え方から,教科特有の考え方,子どもの知識発展を促進する発問まで,幅広く掘り下げます。具体的な発問方法について,比較や総合,関連づけなどの方法を紹介します。
第6章では,子どもの思考とあり方をゆり動かす発問観を紹介します。「ゆさぶり発問」の考え方や,授業をオープンエンドで終える方法など,学習者の思考を刺激する技術を探ります。
第7章では,子どもの視点を尊重し,子どもの捉え方や子どもの側から生じる問いを活かした授業の展開方法を提案します。
第8章では,学習者主体の授業における教師のあり方や支援的な発問,子ども自身の内なる「問題」をどう育てるかについて提案します。学習者主体の授業を実現するための教師の態度や言葉の使い方,子どもの言葉の受け止め方・拡げ方について解説します。
本書を通じて,発問の位置付けについても深く掘り下げたいと考えました。教師の側からの発問,子どもの側からの発問,そして子どもと共につくる発問という3つの視点から発問の重要性と効果的な方法を論じます。問いは教師の側にあるのか,子どもの側にあるのか,それともその間に存在するのか。そして,その問いがどのようにして子ども自身のものとなり,共有され,追究するべき問題として認識されるかを探ります。子どもそれぞれの問いが学級全体の追究問題として受け入れられるように,学級の中で問いが醸成されるためにも教師の発問が重要な役割を果たします。
発問の「発想」と「技術」には,子どもを幸せにしたいという深い「願い」や「想い」が込められており,豊かな発想と確かな技術があるからこそ,子どもの心に届くものとなります。発想と技術は,新たなものを創造する「力」であり,人を大切にする「心」です。
本書が,発問を通じて子どもの内なる思考やこの子「らしさ」を育み,授業が主体的・対話的で,より深い学びになるための一助となれば幸いです。
2024年7月 /宗實 直樹
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- 明治図書
- 指導言を説明、発問、指示に分けて考えることで、実際の指導をする際に留意しながら効果のある指導の流れを考えることができると感じた。問いを分類し、問い方を教えるという視点も参考になる。2024/8/2360代・元教員