- はじめに
- Chapter1 中学校国語科「主体的に学習に取り組む態度」の指導&評価のポイント
- 1 新3観点による国語科の学習指導と学習評価
- 1 学習者(生徒)主体の評価へ
- 2 新3観点による評価の基本構造
- 2 「主体的に学習に取り組む態度」の指導と評価のあり方
- 1 「主体的に学習に取り組む態度」を捉える観点
- 2 目標設定ができているか
- 3 学習方略を意識して使おうとしているか
- 4 自分の学習のあり方をメタ認知(モニタリング)しているか
- 5 学習方略を使う(使って学習を調整する)ことのよさを実感しているか
- 6 自分の学習を節目で確認,点検し,改善を模索する粘り強さを
- Chapter2 中学校国語科「主体的に学習に取り組む態度」の指導&評価事例
- 1 第1学年の指導&評価事例
- 1 【A 話すこと・聞くこと】
- 単元名 新聞記者になろう―身近な大人を紹介する―
- 教材名 「聞き上手になろう」
- 2 【B 書くこと】
- 単元名 「読書の大切さ」を後輩に伝える案内文を書こう
- 教材名 「情報整理のレッスン 比較・分類」
- 「情報を整理して書こう わかりやすく説明する」
- 3 【C 読むこと(説明的文章)】
- 単元名 分析的に読み,情報を整理して理解しよう
- 教材名 「『言葉』をもつ鳥,シジュウカラ」
- 4 【C 読むこと(説明的文章)】
- 単元名 「扉」から日本文化の特徴を知ろう
- 教材名 「玄関扉」
- 5 【C 読むこと(文学的文章)】
- 単元名 語りに着目して続き物語を創作しよう
- 教材名 「少年の日の思い出」
- 6 【古典】
- 単元名 「竹取物語」をとおして昔の人の考え方に迫ろう
- 教材名 「竹取物語」
- 2 第2学年の指導&評価事例
- 1 【A 話すこと・聞くこと】
- 単元名 お茶のプレゼンテーションをしよう
- 教材名 「説得力のある提案をしよう――プレゼンテーション」
- 2 【B 書くこと】
- 単元名 表現の仕方を工夫して豊かに短歌や俳句を創作しよう
- 教材名 「短歌の世界」「短歌十首」
- 3 【C 読むこと(説明的文章)】
- 単元名 筆者の論証の仕方に納得するか否かを判断し,批評文を書こう
- 教材名 「モアイは語る――地球の未来」
- 4 【C 読むこと(説明的文章)】
- 単元名 新聞記事を比較しよう
- 教材名 「『正しい』言葉は信じられるか」
- 5 【C 読むこと(文学的文章)】
- 単元名 「盆土産」で語り合おう―問いを設定する力・作品を読み深める力を伸ばす―
- 教材名 「盆土産」
- 6 【古典】
- 単元名 兼好法師,令和を語る―兼好法師になりきって現代社会について語ろう―
- 教材名 「徒然草」
- 3 第3学年の指導&評価事例
- 1 【A 話すこと・聞くこと】
- 単元名 スピーチで社会に思いを届けよう
- 教材名 「説得力のある構成を考えよう スピーチで社会に思いを届ける」
- 2 【B 書くこと】
- 単元名 「論語」の言葉を引用して,「大切にしたいこと」について意見文を書こう
- 教材名 「論語」
- 3 【B 書くこと】
- 単元名 人工知能とわたしたちのこれからを考えよう
- 教材名 「人工知能との未来」「人間と人工知能と創造性」
- 4 【C 読むこと(説明的文章)】
- 単元名 トランス・サイエンスの問題に向き合う力を養おう
- 教材名 「フロン規制の物語―〈杞憂〉と〈転ばぬ先の杖〉のはざまで」
- 5 【C 読むこと(文学的文章)】
- 単元名 「百科事典少女」を読み,感じたことや考えたことを伝え合ったり批評したりしよう
- 教材名 「百科事典少女」
- 6 【古典】
- 単元名 複数の資料と結び付けながら,作者のものの見方や考え方を読み深める
- 教材名 「おくのほそ道」
はじめに
平成29年告示の学習指導要領では,育成すべき資質・能力を「知識及び技能」「思考力,判断力,表現力等」「学びに向かう力,人間性等」の三つの柱で整理しました。これによって,全ての教科等ではこの三つの柱に基づいて,教科等としての目標及び内容を設定することになりました。しかし,国語科では「学びに向かう力,人間性等」については,教科及び学年の目標においてまとめて示すこととされ,内容としては示されていません。
とは言え,「学びに向かう力,人間性等」は目標にすることとなっています。では,実際の単元を構想し,指導・評価をする段階で,どのように対応すればよいのでしょうか。実践上の課題です。
この点について,令和2年3月に国立教育政策研究所教育課程研究センターから発刊された『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料【中学校 国語】』では「『学びに向かう力,人間性等』には,@『主体的に学習に取り組む態度』として観点別学習状況の評価を通じて見取ることができる部分と,A観点別学習状況の評価や評定になじまず,こうした評価では示しきれないことから個人内評価を通じて見取る部分(感性,思いやりなど:筆者注)」とあり,@とAを分けて捉えることとしました。
「主体的に学習に取り組む態度」が,実際の単元設定や指導・評価の際の対象とされたことで,やや具体的にイメージできるようにはなりました。それでも,まだまだわかりにくい面があります。本書では,そのわかりにくさをほぐし,ことばの学びの実践に生きて働くことを意図して編みました。
教育界では,「主体的」とか「主体性」ということばが好まれます。教科の授業であれ,学校行事であれ,生徒が主体的に学び,主体性をもって行動してくれれば(常套語句で言うと「生き生きと」「目を輝かせて」「ひたむきに」取り組んでくれれば),教師としてはうれしいものです。また,そうした姿を求めて指導しようとするものです。そして,これらの常套語句で表現できる時の生徒は,意欲をもって,集中して,何がしかの学習成果を上げていることに,おそらくまちがいはありません。
しかし,それらの生徒の姿は,たまたまいろいろな要素がうまくかみ合ったために見られたものなのかもしれません。生徒も教師も思ってもみなかった事柄に触発された結果であったかもしれません。教育は意図的な営みです。そうであるなら,そうした学びの姿がなぜ生じたのか,そこにどういう指導の考え方があったからなのか,少しでも明らかになれば,「生き生きと」「目を輝かせて」「ひたむき」に取り組む(取り組もうとする)生徒を,様々な場面で登場させることができるようになります。本書では,「主体的」「主体性」,そしてこの度の「主体的に学習に取り組む態度」とは,どのようなものかを,できるだけ具体的に把握し,指導に生かす手がかりを実践的に示そうとしました。
Chapter1では,理論編として,文部科学省が示した新3観点による国語科の学習指導と学習評価の基本的な事柄を解説しました。また,「主体的に学習に取り組む態度」を捉える観点として示されている「自分の学習を調整していること」「粘り強く取り組むこと」を,目標設定,学習方略,メタ認知(モニタリング),学習方略を使うことのよさの実感,学習の節目での点検・確認といった面から述べています。学習評価ということばには,授業の主人公は学習者=生徒であることを再確認する意味が込められていることを述べました。そして,生徒の学びの実態に即した指導を工夫して「育成を目指す資質・能力」を確実に身に付けさせるように努める点が大切であることも主張しました。
Chapter2では,「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」(説明的文章,文学的文章)「我が国の言語文化に関する事項」(古典)の各領域,事項について,各学年の実践事例を示しました。「主体的に学習に取り組む態度」を育てるための指導のあり方と評価のポイントを授業の逐語記録や学習シート,手引き等の具体例を示しながらわかりやすく紹介しています。読んでいただくと,それぞれの領域等に特徴的な,またいずれにも共通した「主体的に学習に取り組む態度」に係る「指導と評価の一体化」の実際,要点を捉えられるのではないかと思います。
つかみにくい「主体的に学習に取り組む態度」の指導や評価です。国語科におけるそれらの具体的なイメージづくりに本書が少しでも役立ち,生徒の充実したことばの学びが展開されることを願います。
2022年4月 兵庫教育大学大学院教授 /吉川 芳則
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- 明治図書
- 単元計画とともに評価の具体が示されおり、参考になります。2022/8/7iroirotomaton
- 評価に悩んでいたので、読んで糸口が見えてきた。2022/7/240代・中学校教員