- 序文 スーパーティーチャーにならずとも、持続可能な学級経営を目指して
- 上越教育大学 /赤坂 真二
- はじめに
- 本書の読み方
- 第1章 クラス会議の基本
- クラス会議とは
- 小学校実践に学ぶ@「森重裕二氏の実践」
- 小学校実践に学ぶA「深見太一氏の実践」
- 小学校実践に学ぶB「赤坂真二氏の実践」
- クラス会議で中学生はどう変わるか
- 中学校「だからこそ」クラス会議
- 第2章 中学校クラス会議4モデル
- 提案! 中学校クラス会議
- クラス会議4モデル共通指導事項
- モデル1 クラス会議スタンダード
- モデル2 クラス会議カフェスタイル
- モデル3 クラス会議班ミーティング
- モデル4 クラス会議ミニ
- 目的地は「共同体感覚」
- 第3章 クラス会議の実践例
- モデル1 スタンダード「クラス会議の名前を決めよう」(集団議題)
- モデル1 スタンダード「学級目標を決めよう」(集団議題)
- モデル1 スタンダード「委員会の仕事を忘れずにするには」(個人議題)
- モデル2 カフェスタイル「授業中のおしゃべりが多く授業に集中できない」(個人議題)
- モデル3 班ミーティング「教師の悩み解決」(個人議題)
- モデル4 クラス会議ミニ「係活動を忘れないようにするアイデア」(個人議題)
- ステップアップ クラス会議でロールプレイ
- ステップアップ クラス会議で本質観取
- 第4章 クラス会議の勘所
- 議題を焦点化する
- 継続して行う
- 生徒の了解を得る
- 時間で区切る
- 「反対」ではなく「心配」
- 指示するより問う
- 最後の一人になっても意見する価値
- 教師のフィードバック
- 介入のポイント
- 第5章 クラス会議 研究的知見
- クラス会議を「研究する」ということ
- 共同体感覚を構成するもの
- 「自己受容」を考える
- 議題による話し合いの質の違い
- 共同体感覚尺度が高まる順番
- 共感性の違いで変わる発言の量
- 子どもはクラス会議のどこに不満を感じるか
- 男子と女子の発達段階を踏まえて
- 合意形成で重要なこと
- 研究知を踏まえたクラス会議の展望
- 第6章 クラス会議を通した社会づくり
- 思いを言葉にする意味
- 言葉の力を信じる
- 教師、その役割と本質
- クラス会議という作法
- おわりに
序文 スーパーティーチャーにならずとも、持続可能な学級経営を目指して
上越教育大学 /赤坂 真二
著者である岡田敏哉氏は、彼が上越教育大学の私の研究室に在籍していた頃からのつながりであり、以来、彼の教育に対する真摯な姿勢と、中学校の現場における情熱的な実践を間近で見てきました。本書は、その岡田氏が「クラス会議」の考え方と方法論に真の可能性を見いだし、約十年間にわたり中学校の現場で積み重ねてきた実践と試行錯誤の、まさに集大成というべき一冊です。
「クラス会議」は、子ども中心の民主的な学級運営のアプローチとして、これまでは特に小学校の現場で広く知られ、実践が深められてきました。そのため、中学校の先生方の中には、「それは小学校の実践だ」「思春期の生徒たちには馴染まないのではないか」という先入観や、あるいは多忙な中学校現場で新たな手法を導入することへの抵抗感を抱く方が少なくありません。岡田氏自身も、かつては同様の思いを抱き、ゼミでの議論を聞き流していた時期があったと正直に告白されています。しかし、本書の最大の価値は、この「中学校クラス会議への壁」を、具体的な実践と理論によって打ち破ることにあります。
岡田氏が「はじめに」で問いかけられている、「教師はみんなスーパーティーチャーになれるのか。ならなくてはいけないのか」という問いは、現代の教育現場における本質的な課題を突いています。多様化する生徒のニーズ、複雑化する人間関係、そして教師の働き方改革が叫ばれる現代において、一人の教師が学級内の「すべてを把握し、すべてをケアし、すべてを指導する」という従来の「スーパーティーチャー・モデル」は、もはや持続可能ではありません。教師の疲弊を招くだけでなく、生徒自身の「自立する力」を奪いかねない危険をはらんでいます。
中学生という時期は、自己の確立と他者との関係性の構築に最も悩み、葛藤する大切な過渡期です。この時期だからこそ、教師からの指導だけでなく、仲間とともに課題を共有し、多様な意見を尊重し合い、自分たちで解決策を見いだすという「民主的な力」が不可欠となります。クラス会議は、まさに生徒たちの「力を借りる」「委ねる」という選択肢を教師にもたらし、生徒一人ひとりの「主体性」「協働性」「課題解決能力」を育む、生きた民主主義を学ぶプラットフォームとなるのです。
本書が画期的なのは、その構成にもあります。まず、クラス会議の基本原理を丁寧に解説し、小学校における先行実践に基づき、読者が全体像を把握できるよう導きます。そのうえで、本書の核となる「中学校クラス会議4モデル」を提示しています。部活動、定期試験、進路選択など、小学校とは異なる中学校特有の課題や多忙さに対応できるよう、実践を類型化し、具体的な記録を併せて紹介するこの構成は、中学校教師のみなさまにとって極めて実用的です。読者は、ご自身のクラスの状況や、導入段階に応じて、最適なモデルを選び、実践をアレンジすることができるでしょう。
後半部分では、クラス会議を単なる「学級経営の技術」としてではなく、「科学」として捉え、その実践によって学級に生まれる因果関係や相関関係を分析的に考察しています。これは、「なんとなくクラスがよくなった」という感覚論ではなく、分析的で、理論的な裏付けを求める先生方にとって、実践を深めるうえでの貴重な羅針盤となることでしょう。本書は、そのような志高き先生方に、新しい時代の学級経営の「哲学」を提供します。教師一人が頑張りすぎるのではなく、生徒自身の力を信じ、育むことで、教師も生徒もともに成長できる、持続可能で活気ある学級を創造するための確かな一歩となるでしょう。
本書を手に取られたすべての読者の方々が、生徒たちと共に、対話を通じて課題を乗り越え、よりよい学校生活を創造していく実践の仲間となることを心から願い、推薦の言葉といたします。
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明治図書















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