- まえがき
- ほめるとき
- SCENE1 宿題をきちんとやってくる
- SCENE2 自主学習をやってくる
- SCENE3 たくさん発表する
- SCENE4 ちゃんと順番を守っている
- SCENE5 学習の間違いを直している
- SCENE6 わからないことを質問してくる
- SCENE7 字を丁寧に書いている
- SCENE8 テストで点数が伸びた
- SCENE9 記録が伸びた・運動ができるようになった
- SCENE10 自習がきちんとできる
- SCENE11 泳げるようになった
- SCENE12 苦手なことに挑戦している
- SCENE13 授業の準備がきちんとできている
- SCENE14 時間を守って行動している
- SCENE15 言葉遣いがよい
- SCENE16 お礼のあいさつが言える
- SCENE17 読書量が多い
- SCENE18 学用品を大切に扱っている
- SCENE19 ゴミを拾っていた
- SCENE20 そうじをきちんとやっている
- SCENE21 友だちの話をうなずいて聞いている
- SCENE22 友だちに勉強を教えてあげている
- SCENE23 友だちのよいところを見つけている
- SCENE24 年下の子にやさしく接している
- SCENE25 当番を忘れた友だちの代わりをしている
- SCENE26 けんかの後に謝ることができた
- SCENE27 グループ活動でリーダーシップをとっている
- SCENE28 ニュースや社会の出来事に関心がある
- SCENE29 教室移動が上手にできている
- SCENE30 大雨の中,学校に来ている
- 学校生活
- SCENE31 昇降口の靴がそろっていない
- SCENE32 返事が小さい
- SCENE33 あいさつの声が小さい
- SCENE34 上靴のかかとをふんでいる
- SCENE35 机の中がきたない
- SCENE36 ロッカーがきたない
- SCENE37 いすがしまえない
- SCENE38 消しゴムや鉛筆など持ち物を傷つけている
- SCENE39 落とし物が多い
- SCENE40 服装が乱れている
- SCENE41 忘れ物をしてきた
- SCENE42 鉛筆の持ち方が悪い
- SCENE43 お便りがおうちの人に届かない
- SCENE44 ろうかを走っている
- SCENE45 課題が早く終わってしまった
- SCENE46 歌を大きな声で歌わせたい
- SCENE47 特別教室へ静かに移動できない
- SCENE48 午後,眠くなる
- SCENE49 指示があるまで動かない
- SCENE50 手伝いを頼むと「え〜」と言う
- SCENE51 ものを投げている
- SCENE52 窓ガラスが割れた
- SCENE53 隣の人と机をくっつけない
- SCENE54 おやつの包み紙が見つかった
- SCENE55 学習に関係のないものを持ってくる
- SCENE56 機嫌が悪くなると黙ってしまう
- SCENE57 嘘ばかりつく
- SCENE58 保健室によく行く
- SCENE59 プロレスごっこをしている
- SCENE60 ○○菌といういじめの前兆があった
- SCENE61 壁に落書きがあった
- SCENE62 万引きの話をしたい
- SCENE63 交通安全の話をしたい
- SCENE64 夏休み前の話をしたい
- 授業中
- SCENE65 先生の話を聞かない
- SCENE66 不規則発言をしてくる
- SCENE67 手の挙げ方が悪い
- SCENE68 私語が多い
- SCENE69 姿勢が悪い
- SCENE70 机に落書きをしている
- SCENE71 トイレにしょっちゅう行く
- SCENE72 テストに名前を書かない
- SCENE73 先生に質問ばかりする
- SCENE74 自信がなくてやらない
- SCENE75 教科書を開かない
- SCENE76 「塾でやった」「知っている」と言う
- 友だち関係
- SCENE77 友だちの悪口を言っている
- SCENE78 すぐ手を出してしまう
- SCENE79 友だちに注意ばかりする
- SCENE80 休み時間ひとりぼっちでいる
- SCENE81 男子は男子,女子は女子で固まっている
- 朝・放課後
- SCENE82 朝,教室になかなか入ってこない
- SCENE83 朝の準備が間に合わない
- SCENE84 寄り道をして家になかなか帰らない
- SCENE85 友だちの家であそぶマナーが悪い
- SCENE86 子どもだけでお店に出入りしている
- 給食・そうじ
- SCENE87 給食の準備を素早くさせたい
- SCENE88 給食を食べるのが遅い
- SCENE89 給食の残飯が多い
- SCENE90 箸を上手に持てない
- SCENE91 そうじをいい加減にしている
- 学校行事
- SCENE92 運動会に気持ちが向かない
- SCENE93 リレーの負けを1人のせいにする
- SCENE94 学習発表会の練習ではずかしそうにしている
- SCENE95 音楽会の練習で歌詞を間違えてしまった
- SCENE96 始業式・終業式など儀式的行事に向かう
- 急な出来事
- SCENE97 不審者の情報が入ってきた
- SCENE98 転入生がやってきた
- SCENE99 転校する子どもが出た
- SCENE100 台風や感染症で臨時休校になった
- あとがき
まえがき
「あなたといると月がきれいですね」
英語教師をしていた夏目漱石が,当時日本に入ってきた英語を訳した言葉です。一体どんな言葉を訳したのでしょうか。
それが「I love you」でした。
「私はあなたを愛しています」と直訳するのではなく,一緒にいることで静かに心満たされる風景。それを表現したという逸話が残っています。相手の頭の中に言葉でイメージを描かせる。そんな夏目漱石の言葉です。
「秒速5センチメートルって,何の速さか知ってる?」
友人から急に質問されました。「えっ? なんだろう」と考えている私に畳みかけます。
「映画観た? 新海誠原作の『秒速5センチメートル』。これ観たら,学生時代に戻ってもう一度,恋がしたくなるよ!」
こんなふうに聞かされたら,観に行かないわけにはいきません。仕事を終えた週末の金曜の夜,つい映画を観に行ってしまいました。映画を観ながら,出てくるシーンの様々な速度が気になります!
もしも友人が「おもしろかったよ」「絶対,観に行った方がいいよ」という言い方をしていたら,そこまで見たいと思わなかったでしょう。
何の話かって?
ここに言葉かけの大事な本質があるのです。
夏目漱石は,直訳ではなく,愛しているイメージを情景で伝えてくれました。友人は,速さや恋というキーワードで映画の魅力をイメージさせてくれました。
心に残る言葉かけは,相手の頭の中に言葉以外の,景色,速さ,音,色,匂いなどをイメージさせてくれます。
指導とは,相手に何かを伝えることで,心や行為・行動の変容を求める言葉かけです。言葉は伝え方によって印象が変わります。もちろん言葉かけによって伝えたいことが伝わらないこともあります。
例えば,4月の2年生のある教室を見てみましょう。
「先生,それどういう意味?」「よくわかんない…」
こんな言葉が聞こえてきます。
子どもたちが先生の話を理解していません。
もう1つ,4月の6年生の教室。
「先生,私たちをバカにしてるの?」
「1年生扱いしてない?」
やさしく丁寧に話しているのに,反感を買っています。
どちらの先生も熱心に指導しているのに,子どもたちにうまく伝わっていないようです。
一体どうしてなのでしょうか。
実はこれ,今年の担任する学年と前年度まで担任した学年が違うときに起こる「学校あるある」なのです。最初の例は,ついこの前卒業生を送り出した6年担任だった先生が低学年を担任して,子どもたちから返ってきた言葉。2つ目の例は,長く低学年を担任していた先生が高学年に変わったときに子どもたちから言われた言葉。どちらも前年度の子どもとのやりとりが体の中に染みついていて,つい前の学年の子どもたちに合わせた言葉かけをしてしまっていた失敗事例です。
こうした4月の先生の戸惑いと,子どもたちの不平・不満が,そのまま学級崩壊につながることがあります。
前年度と違う学年を担任して,どう言葉かけをすればよいのかわからない。初めて(久しぶりに)この学年を担任するけれど,子どもに伝わる言葉かけがわからない。本書は,このような先生のために書きました。
学校には先生が子どもに言葉をかける様々な場面があります。それを100場面集めました。その場面を,低学年・中学年・高学年の3通りの言葉かけに分けて示しています。「100場面×3」で300の言葉かけが載っています。今年,担任する先生の学年に合わせてご覧ください。
また,高学年(中学年)であっても,発達段階に応じて,中学年や低学年向けの言葉かけが必要な子どももいます。個別の指導の際には,子どもに応じて段階的に言葉かけを下学年向けに変化・修正することで,よりわかりやすく伝えることができます。
逆に,低学年や中学年でも,ちょっとお兄さん・お姉さんっぽく成長の早い子どももいます。そんな子どもにはちょっと背伸びして1つ上の学年の言葉かけをしてみましょう。なんだか大人扱いされた感じで喜んでくれるかもしれません。
100の場面は,大きく「ほめるとき」と「指導するとき」に分けています。
「ほめるとき」の言葉かけは,つい「いいね」「すごいね」「すばらしい!」といった先生の感嘆になりがちです。そこで,子どもたちがほめてもらえたおかげで,さらにレベルアップするような言葉かけを計30場面載せました。
「指導するとき」の言葉かけは,学校の日常において,きちんと指導しなくてはいけないという場面を,学校生活,授業中,友だち関係,朝・放課後,給食・そうじ,学校行事,急な出来事の7つに分けて計70場面選び,載せました。
100の場面は見開き1ページで構成されています。
左側に,なぜこの場面が大事なのかという概要と,低学年・中学年・高学年それぞれにおいてどのような言葉かけをすると有効なのか,その考え方について書きました。
右側には,低学年・中学年・高学年での代表的な言葉かけの具体的なフレーズを書いています。その下にズバリ一言でポイントを解説しました。
言葉かけを求めている先生が,本書の目次を見て,すぐ使えるようになっています。
中国前漢時代の『法言』(揚雄著)に「言は心の声なり,書は心の画なり」(「言心声也,書心画也」問神篇十三)という言葉があります。「言葉は心の声であり,文章は心の絵である」と。言葉は話す人の心をそのまま映し出す,という意味です。『法言』では次のように言います。言葉は完全に心を伝達できず,文章は完全に言葉を伝達できない。言葉の限界を知ったうえで,人の口から出る言葉がそのまま映し出されていると。
教師の言葉も同じです。どんなに美しい言葉を選んでも,そこに温かい心がなければ,子どもの胸には響きません。「ありがとう」「大丈夫だよ」といった言葉も,注意した厳しい言葉も,同じ言葉であっても,先生の想いのこもった心から発せられた言葉かけは,子どもの心に入っていくはずです。ただし,そのためにはその学年の子どもの語彙力に対応する言葉かけをすることが大前提となります。
私はこれまで,保育園,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,特別支援学校の児童・生徒,大学生,PTA,一般の方々に話をする機会がありました。普段は小学校の先生をしていますので,その都度,話し方,言葉の使い方を変えます。聞き手とすぐにフィットする場合もあれば,「ちょっと伝わらないかな?」と思って微調整するときもあります。この微調整する力が大事なのだろうと思っています。
言葉かけは,相手に伝わってこそ意味があります。そのためには先生が多くの言葉かけの引き出しをもつ必要があります。まずは,本書に載っている言葉かけを使ってみて下さい。きっとお役に立てることと思います。
ただ,言葉かけのフレーズは万能ではありません。その場の状況,子どもの様子,先生の使う言葉の雰囲気など,文章で伝える限界もあります。そのときは,どうぞ先生自身で微調整をしてください。
先生ご自身が言葉かけを試行錯誤していく中で,きっと先生自身の言葉かけが生まれることでしょう。それが本書を読んでいただいた先生の成長であり,私の本当の願いです。
2026年1月 /広山 隆行
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明治図書

















