21世紀型授業づくり109
子どもが勉強したくなる授業の条件

21世紀型授業づくり109子どもが勉強したくなる授業の条件

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いかに優れた授業でも子どもにやる気がなければ意味がない。

子どもが勉強したくなる心理分析を通して、授業づくりにおける教師自身の要因、「やる気」が生まれる心理、教室環境づくり、子どもの発達と個性に合わせた授業づくり、子どもからの評価を受ける試みなどを具体的に事例に基づき詳述した。子どものやる気を引き出す提案。


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ISBN:
4-18-227814-3
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小・中
仕様:
A5判 192頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
第1章 授業づくりにおける教師自身の要因
[1] 教師のスマイルパワーと授業づくり
1 「楽しそうに教える」という技術
2 教師の「表情」と「態度」の大切さ
3 子どもが「朝食が美味しい」と感じるとき
4 大学教員に「出前授業」ができるか
5 「楽しそうに教える」を生み出すもの
[2] 教師のモデリングと子どもの学習意欲
1 「小1プロブレム」が警鐘すること
2 孟子と荀子の教え,教師の役割
3 「してみせる教育」としてのモデリング
4 子どもが学級担任に似てくる心理
[3] 「チョークとトークの授業」からの脱出
1 「わかりましたか」「はーい」
2 「わかったつもり」からの出発
3 「わかった」が確認できる方法
4 チョークとトークから原体験へ
(1) 「納得」のある授業
(2) 「表現」のある授業
(3) 「自己評価」のある授業
5 「子どもの学力」と「教師の授業力」
[4] 教師の赤ペンと新「絶対評価」の意味
1 人を育てるための2つの道筋
2 日本人教師は,よくない点を指摘する
3 教師の赤ペンと子どもの意欲
4 赤ペンと新「絶対評価」の関係
5 絶対評価が学習意欲を引き出すワケ
[5] 授業のマクロ的改善とミクロ的改善
1 学校で語られる「考える力」の意味
2 授業をダイナミックにかえるマクロ的改善
(1) 「到達,未到達」で判定しない学習目標の設定
(2) 子どもの論理による学習テーマの選択
(3) 学習活動の自由度の保障
(4) 学習成果を共有するための発表と討議
(5) 学びのプロセスを重視する学習評価
3 授業の細部に目を向けるミクロ的改善
(1) 既成概念を揺さぶる発問の工夫
(2) 書かせる活動の工夫
(3) グループ討議を活性化させる工夫
[6] 自分の授業を振り返る方法と技術
1 授業分析で気づかなかった自分を発見する
2 自分だけの力で授業を見直す
(1) カセットテープやMDに録音して聞く
(2) 授業の録音をテープに起こし文字にする
(3) ビデオテープに録画撮りして見る
(4) 授業中に思ったこと感じたことをメモする
(5) 授業のあとで授業記録を書く
3 子どもから得られる授業の情報
(1) テスト,作品,発表で学習のようすを見る
(2) 質問紙をつくってアンケートをとる
(3) 感想や要望を自由に書いてもらう
(4) 面接によって感想を聞く
4 参観者から得られる授業の情報
(1) 質問紙をつくってアンケートをとる
(2) 自由記述カードに書いてもらう
(3) 面接によって助言をもらう
(4) 研究協議会で指導や助言をもらう
[7] 新「絶対評価」が提起している教師の課題
1 新「絶対評価」の2大特徴
2 「教育の手続き」としての絶対評価の意味
3 こんなにしてまで絶対評価をするワケ
(1) 学習指導法の改善
(2) 子ども一人ひとりの学力保障
4 学校教育のあり方を問いかける新「絶対評価」
第2章 子どもの「やる気」が生まれる心理
[1] 「勉強したくなる」が生まれる心理的枠組み
1 子どもは何との関係で勉強したくなるのか
2 「対内容関係」から生まれる学習意欲
3 「対目標関係」から生まれる学習意欲
(1) 目標の明確性
(2) 目標の魅力性
(3) 目標の達成可能性
(4) 目標の選択性
4 「対方法関係」から生まれる学習意欲
5 「対人間関係」から生まれる学習意欲
6 「対評価関係」から生まれる学習意欲
[2] 子どもの「やる気」を生む3つの学説
1 子どもの「やる気」と学習の成果
2 スキナーによる「一歩一歩説」
3 ワイナーの「何かの原因説」
4 アトキンソンの「やる気の公式説」
5 子どもの「やる気」が生まれる授業の構造
(1) 目標の明確性
(2) 目標の魅力性
(3) 目標の達成可能性
(4) 目標の選択性
6 「目標の魅力」を刺激する学習材
[3] 「五感力」がはたらく学習の仕組み
1 「五感力」が提起する教育課題
2 「五感力」に求められる相互に関わり合う関係
3 総合的学習の行き詰まりと打開の糸口
4 『メダカ達のSOS』が教えること
5 「五感力」をはたらかせるための課題
6 「五感力」は相互作用のなかではたらく
[4] 学習における構成的競争の心理
1 教育における構成的競争と破壊的競争
2 生活場面における競争の心理
3 人間の「やる気」が生まれる心理
4 学習における競争原理の導入
5 構成的競争は教師の意識と態度でつくられる
6 構成的競争を成立させる条件
[5] 「オン・ユア・オウン」の学習場面づくり
1 教師が教えすぎてはいないか
2 能動的な学習が学ぶ喜びを生みだす
3 自己教育力の基礎になる「学び方の技能」
4 さまざまにある「学び方の技能」
[6] 思考力,判断力,表現力の指導と評価力アップ
1 学習評価の手順,基準,優先順
2 思考力,判断力,表現力の評価の基本
3 学習評価の具体的手順
4 学習評価の評価基準
5 相対的基準,絶対的基準,個別的基準の優先順
6 評価方法の選択と組み合わせ
[7] 子どもの「やる気」を評価する枠組み
1 人間が学習意欲をもつメカニズム
(1) 知識・理解が意欲の源泉になる
(2) 達成体験の積み重ねが意欲を生む
(3) 達成可能性と目標の魅力とが関係する
(4) 知的好奇心は人間の本性である
(5) 向上心を機能させる学習領域がある
(6) 効力感をはたらかせ見通しをもたせる
(7) 社会的相互性も意欲の誘因となる
2 学習意欲の評価を生かすことの意味
3 学習意欲を評価する基本的枠組み
(1) 受  容
(2) 反  応
(3) 価値づけ
(4) 価値の体制化
(5) 価値による人格化
第3章 子どもが勉強したくなる教室環境づくり
[1] 「ことばの温度計」がある教室
1 「ことば」という子どもの学習環境
2 教師のことばが与える心理的影響
3 欧米文化における「魔法のことば」
4 「くだけたことば」と「公式のことば」
5 日本人に弱い話しことばの能力
6 論理的なことばという言語環境
[2] 学級集団への声かけ・語りかけ
1 子どもと出会う学級担任の第一声
2 自分の目で平らかに子どもを見る
3 「喜び」が共有できるように話しかける
4 「みんなの前でほめる指導」を工夫する
5 子どもの人格を傷つけないで叱る
6 黙ったときに教師の力量がわかる
7 教師のサイレンスパワーを生み出すもの
[3] ナイス・トライのある授業は楽しい
1 元総理大臣がみせたナイス・トライ
2 教師に必要なナイス・トライ
3 大学教員がみせたナイス・トライ
4 勉強したくなる授業のための15課題
5 録画で授業分析をするナイス・トライ
[4] 「勉強したくなる」が育む子どもの学力
1 「勉強したくなる」は子どもの学力にせまる営み
2 子どもの学力を考える3つの視点
(1) 学習した結果として身につけた力
(2) 学習に取り組むことのできる力
(3) 学習に向かっていく力
3 「勉強したくなる」が生まれる3つの視点
4 子どもは教師の姿勢を感じとっている
[5] 「自ら学ぶ力を育てる」ための学習環境
1 大震災が学校教育に教えたこと
2 「自ら学ぶ力」の視点からみた学習指導の課題
3 「自ら学ぶ力」を育てる指導のあり方
(1) 自ら学ぶ心を養う
(2) 自ら学ぶ学び方を育てる
(3) 自分で学ぶ環境を整える
4 「自ら学ぶ力」の育成で忘れてならないこと
(1) 基礎・基本の習得を軽視してはならない
(2) 集団として学ぶ力を養う
(3) 特別活動や道徳の領域を活性化させる
第4章 子どもの発達と個性に合わせた授業づくり
[1] 「わからせたつもり」からの脱出
1 「わかった」の到達レベル
2 「指導と評価の一体化」の教育手続き
3 教育マニフェストとしての評価基準表
4 教科目標をめざして配慮された授業づくり
5 単元における形成的評価の成立
6 個人差に対応する教育システムづくり
[2] 学習の臨界期を見逃していないか
1 「目かくし猫の実験」が教えること
(1) 能動的な学習体験の必要性
(2) 学習成果があがる臨界期
2 人間の学習における臨界期
(1) 「記憶する」学習の臨界期
(2) 「ノー文句で覚える」学習の必要性
(3) 「疑問をもつ」学習の臨界期
(4) 「感動する」学習の臨界期
(5) 「話せる英語」学習の臨界期
3 「勉強したくなる」のインフラ整備
4 カリキュラム編成の3原理
(1) 子どもの興味・関心が優先する学習
(2) 大人の論理が優先する学習
(3) 現実社会への対応が優先する学習
[3] 子どもの「よさ」を見つける枠組み
1 「よさ」を見つけることの教育力
2 発達段階に応じた子どもへの対応
3 「よさ」を見つけるための発想の転換
4 生活場面で「よさ」を見つける枠組み
5 学習場面で「よさ」を見つける枠組み
[4] 個人差に対応する指導と評価のシステム
1 少人数指導と多人数指導のメリット
2 少人数指導における教科特性の差異
3 「評価規準」と「評価基準」の設定と提示
4 個人プロフィールに基づく形成的評価と個別支援
5 補充的学習,発展的学習のコース設定
6 ST,SSコミュニケーションの活性化
[5] 習熟度別学習の成功・不成功の分岐点
1 21世紀における学習指導の課題
2 カリキュラム編成の原理と習熟度別学習
3 内容系,表現系教科における習熟度の意味
4 習熟度別学習と評価規準・評価基準の関係
5 習熟度別学習の成功・不成功の分岐点
[6] いい習熟度別学習,わるい習熟度別学習
1 「学校の先生」と一般市民の感覚
2 新しい教育課題について学校が考えるべきこと
3 習熟度別学習の理念,方法論,付随する課題
(1) 習熟度別で求められる教育の再構築
(2) 習熟度別学習に必要な基礎・基本の明確化
(3) いい習熟度別をつくるのは教師の意識と態度
[7] 無気力と思われている子どもとの対話
1 反応が見えなくても心は動いている
2 対話のための「きっかけ探し」
3 子どもの無気力の種類を見分ける
4 無気力に対する教師の心得
(1) 反応が見えないことに慌てない
(2) 教師の尺度で子どもを見ない
[8] LD,ADHDの子どもへの学習支援
1 LD,ADHDが意味すること
2 LDやADHDの子どもの学習心理
3 子どもの「つまずき」をみる2つの視点
4 治療ではなく,「つまずき」に対応する
5 個の学習を成立させる学習支援
(1) 漢字の学習に見られる障害
(2) 観察記録の記入に見られる障害
6 個と集団,双方の学習成立をめざす
第5章 子どもから授業評価を受ける試み
[1] 子どもによる「教師の授業力」診断
1 教師と医者は評価されるのがイヤ
2 ベテラン教師と若い教師はどこがちがうか
3 「面白い」という感情が意味すること
4 教師による授業診断―10の着眼点―
(1) 授業目標は妥当であるか
(2) 学習内容はレディネスに合っているか
(3) 学習材(教材)は適切か
(4) 教師の説明,指示,発問は明確か
(5) 発言や発表についてのKR情報は適切か
(6) 板書はていねいで構造化されているか
(7) 学習展開が多様で工夫されているか
(8) 学習規律が整っているか
(9) 学習過程に「遊びの要素」があるか
(10) 子どもとの関係が温かいか
[2] 教育マニフェストとしての「評価基準表」
1 魔法のことば「マニフェスト」
2 絶対評価で必要になる「評価基準表」
3 「評価基準表」は教育マニフェスト
4 学習指導における「評価基準表」の役割
5 子どもの学ぶ意欲と教師の指導目標
6 よい「評価基準表」を見分けるポイント
7 授業に役立つ「評価基準表」の7つの条件
[3] 評価基準表の学習者との共有
1 指導と評価の一体化に必要な評価基準表
2 到達目標の明確化は指導目標の明確化
3 よい評価基準表は学習指導の改善に役立つ
4 指導者と学習者による評価基準の共有
5 診断的・形成的・総括的評価による指導と評価の一体化
6 発展的学習・補充的学習システムの構築と個の支援
<付 録>
「教師の授業力」診断表―子どもからの通信簿―
・せんせいへの「おしらせ」   (1)〜(3)
・先生への「通信簿」       (1)〜(4)
あとがき

まえがき

 「子どもが勉強したくなる心理」で,考えてみたいことがある。


 ひとつは,マラソンの実況中継で見られるランナーの姿。

 多くの人は,道路を走る姿を見て,たいへんだろうなと思ってしまうが,当のランナーは,かならずしもそうではないらしい。

 大脳生理学には「ランナーズ・ハイ」という現象があって,長距離ランナーが,一定以上を走り続けると,それが快感となり「もっともっと走り続けたい」と思うようになるそうである。

 なんでも,中脳にあるA10神経といわれる神経が刺激をうけ,走ることが快感にかわるのだそうである。

 これは,別名,「快感神経」とよばれるらしい。

 これを勉強にあてはめると,勉強も一定以上続けると,「もっともっと勉強したい」と思うようになるのかもしれない。

 たしかに,わたしたち人間がする仕事や勉強には,はじめはイヤでも,続けているうちに調子にのってきて面白くなることがある。

 きっと,これは仕事や勉強の「快感神経」が刺激されているのだろう。


 もうひとつは,新聞の政治欄を,面白いと思う人と,そう思わない人の違いである。

 これを,「その人が,もともと政治に関心があるかどうかだ」という人は,頭のかたい人であり,そこで問題になるのは,その興味・関心がどこから生まれるかである。

 なかには,オギャーと生まれたときから,先天的に政治が好きという人もいるだろうが, ほとんどの人は,成長する過程で,好きになったりならなかったりするのである。

 これを解く鍵のひとつに,スキーマ理論がある。

 「スキーマ」とは,一言で言うと「ある事柄についてのまとまった知識」のことである。

 人間の好ききらいには,感情や生理的なものが原因になることもあるが,知的な好ききらいは,その事柄についてのスキーマのあるなしが関係する。

 新聞の政治欄が好きな人は,政治についてのスキーマをもっている人,スポーツのサッカー欄が好きな人は,サッカーについてのスキーマをもっている人である。

 となると,勉強では,子どもに算数が好きと思わせたければ,算数のスキーマをもたせればよく,理科を好きにさせたければ,理科のスキーマをもたせればよいことになる。


 もっとも人間は,大脳をふくめて体内に複雑なメカニズムをもつ動物であるから,ことは簡単に解決しないのであるが,本書では,そんな子どもの勉強したくなる心理について,

 第1章 授業づくりにおける教師自身の要因

 第2章 子どもの「やる気」が生まれる心理

 第3章 子どもが勉強したくなる教室環境づくり

 第4章 子どもの発達と個性に合わせた授業づくり

 第5章 子どもから授業評価を受ける試み

の枠組みで,考えてみることにしたい。


  2005年8月 /長瀬 荘一

著者紹介

長瀬 荘一(ながせ そういち)著書を検索»

1950年兵庫県生まれ。神戸大学教育学部卒業,神戸大学大学院教育学研究科修了。兵庫県公立小中学校教諭,国立大学附属中学校教諭,副校長を経て,現在,神戸女子短期大学教授・副学長

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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