- はしがき
- 学校長/ 山下 巌
- 第一章 教育における発想の転換
- 第一節 子どもを変える力
- 一 教育と教科指導
- ニ 子どもの追究
- 三 生きがいを求める
- 第二節 可能性の開発
- 一 個に徹する
- 二 子どもの成長
- 三 自己へのみかえし
- 四 型を破る
- 第二章 追究構想を深める
- 第一節 自己への挑戦
- 一 追完構想と学習能力像
- 二 追究構想を深める子ども
- 三 追究の自立とその着眼点
- 四 ひとりひとりのちがいと指導
- 第二節 授業の変革
- 一 個を確かに育てる授業
- 二 教材の開発
- 三 個と集団
- 第三章 個を育てる教育実践
- <一年の実践事例>
- 学習のよろこびをつくりだす子ども
- 社会科の学習における山田君の指導事例から
- 一 子どもの可能性をとらえる
- 二 具体的にとらえることに熱中する
- 三 情感に支えられて追究する
- 四 発展への願い
- 創り出すことのよろとびを育てる
- 体育「ジャングルの動物」における川上君の指導事例から
- 一 知識によりかかろうとする子ども
- 二 感動のあたためさせ方
- 三 感動から表現への歩み
- <二年の実践事例〉
- 自らになっとくできる行為を育てる
- 道徳「いいことブック」の学習における田口さんの指導事例から
- 一 仲よし意識にみられる田口さんのプロブィール
- 二 自己の善意のみなおし
- 三 「いいことブック」にみられる善意の深まり
- 四 内面化をはかる指導のみなおし
- 学習方法をみつめ、みなおす
- 社会「みんなのためにはたらく人」の学習における太田君の指導事例から
- 一 事象にせまる太田君の特性
- 二 「富山駅ではたらく人」の学習によせるねがい
- 三 とりくみにみられる太田君の成長
- 四 太田君の成長と今後に期待するもの
- <三年の実践事例>
- 立場を生かして考える子ども
- 理科「まめ電球のつなぎかた」における川瀬さんの指導事例から
- 一 個性的な考え方
- 二 つらぬいてほしい子どもの立場
- 三 まめ電球の生き方を心配した追究
- 四 川瀬さんの歩みを支えたもの
- 五 残された課題
- 学級生活によろこびを育てる
- 係活動「保健係」を中心とした山坂君の指導事例から
- 一 精力的な活動にひそむ子どもの心情
- 二 よろこばれる行為のむずかしさを自覚していった過程
- 三 実践活動の累積から
- 〈四年の実践事例〉
- 学習方法をつくりだしていく子ども
- 算数「わたしの運動能力」における石山君の指導事例から
- 一 かくされている可能性
- 二 可能性をひきだす
- 三 すじみちをたてて追究する構えのめばえ
- 四 追究のエネルギーと学習方法
- 書くことを通して育つ子どもの人間性
- 国語自作童話「自分と学級の友だち」における青木さんの指導事例から
- 一 青木さんの童話
- 二 子どもの中にひそんでいる可能性
- 三 教材の条件と子どもの着想
- 四 構想と価値の転換
- 五 青木さんの童話の後半
- 六 考え方願い方と構想
- 七 書くことにみられる青木さんの成長
- 〈五年の実践事例>
- 追究体勢の強化をはかる
- 家庭料「自慢の野菜料理」における斉藤君の指導事例から
- 一 情報収集に積極的な動きをする斉藤君の特性
- 二 具体に即して想をねる学習の構えづくり
- 三 自己の学習をつくりあげようとするめぱえ
- 小さな研究者としての歩みを育てる
- 理科「音の研究」における山中君の指導事例から
- 一 着想のよさと山中君の課題
- 二 山中君のための教材を求めて
- 三 小さな研究者としての歩みを育てる
- <六年の実践事例>
- 表現を生み出す構えをつくりかえようとして
- 音楽「学校の一日」における森下さんの指導事例から
- 一 森下さんの追究の特性
- 二 「学校の一日」に構えの変革をもとめて
- 三 自分の願いから表現様式をかえようとして
- 四 自己否定を契機に自らの構えをつくりかえる
- 表現の意味を深める子どもを育てる
- 図画工作「北国の年暮れ」における小林君の指導事例から
- 一 前題材「わたしたちの富山を描く」にみられた小林君の追究
- 二 「北国の年暮れ」によせる小林君へのねがい
- 三 表現の意味を深めようとする追究
- 四 表現における高まり
- <特殊学級の実践事例>
- 自覚的な行動の歩みを育てる
- 精薄学級・生活「たんじょう会」の学習における鈴木君の指導事例から
- 一 行動の状況とその考察
- 二 自己に忠実な行為を育てる
- 三 自信ある行為のめばえと課題
- 第四章 ひとりひとりを育てる教育経営
- 第一節 観察指導の重視
- 一 カルテによる観察指導
- 二 観察指導の強化
- 第二節 経営の充実とその強化
- 一 生活のリズムをつくりだす
- 二 学年・学級の個性的な指導
- 三 調和のとれた経営
- あとがき
はしがき
教育は、ひとりひとりの子どものたしかな成長をめざす営みであります。それは、ひとりひとりのかけがえのない可能性を最大限にのばし、育てることであります。
こうした立場から、わたくしたちの実践をみなおしますと、多くの課題のあることに気づくのであります。
その第一は、子どもの主体の確立という点であります。「主体的」ということばを冠した、つめ込みの教育に流れ易いことを、厳にいましめなければなりません。いくら、教育条件が整備されましても、結局は子どもたちが教師の手のひらの上でおどらされているのでは、真の主体の成長は望めません。教育は、自立的な人間の形成をめざすものであると考えます。したがって、子どもたちのひとりひとりを、自己開発にむかわせることであります。自己開発は子どもたちの眼が、するどく自分自身にむけられたときにはじめて可能になると考えます。
第二は、子どもに育てなければならないものはなにかという問いかけであります。知識を与えることが不必要であるとは決して考えませんが、あまりにもそのことに走りすぎる現実をみつめなければなりません。子どものうちに、たしかに育てなければならないのは“生きてはたらく力”であります。学んで得た知識も重要ではありますが、それよりも、学んでいく方法をいかに自分にふさわしくつくっていくかということが大切であります。それは、意欲をいかに培うかということや、生きかたをとらえることと密接に関係づいていなければならないと思います。
第三は、教師はするどく子どもをとらえているかということであります。子どもの内がわにわきあがっている、たゆみない追究のエネルギーをとらえているかということであります。わたくしたちは、子どもに眼をすえて、わずかなうごきの中から、伸びようとするめばえをつかみ、育てていかなければなりません。
子どもの創造性は、こうした、教師の“個”に対する厳しい洞察と、ひたむきに追究する歩みの中からうまれるものと確信いたします。
こうした点から考えますと、教育の実践を根本的にみなおすべき時機にきているように思います。それは、教科や特別活動などの面から子どもをとらえるのではなくて、子どもの内がわから目標をつくりだしていかなければならないということであります。ひとりひとりの子どもの切実なる願いを出発点とすべきであります。たしかな“個”が育つところ、集団もまた追究の雰囲気にみちたものになります。そこには、求め合うものの真摯なすがたがあります。また、きびしい追究の場は、子どもたち相互の共存の感情をはぐくみます。
本書は、このような考えから“個が育つ”条件に焦点をあてて究明をすすめました。ひとりの子どもを中心にすえて、徹底的に成長の要因を求めようと努めました。しかしながら、子どもの大きな追究のエネルギーは、容易に解明をゆるさない複雑さをもっており、さらに究明すべき幾多の問題点をうきぼりにいたしました。
ひとりひとりの“たしかな成長”をめざすということは、授業研究をはじめましてより二十年、一貫してわたくしたちの念頭をはなれない課題でありました。しかしながら、今、こうしてその研究をまとめてみますと、いよいよ道遠しの感を深くいたします。ただ、この研究は、幾多先輩の研究の、累積のあとをうけているものでありまして、その歴史が、わたくしたちの大きな支えとなりました。そして、それはまた今後の方向を示してくれるものと考えております。
読者各位には、既に出版いたしました四冊の著書とともに、わたくしたちのあゆみをおくみとりいただき、きびしいご批判とご叱正をいただきますれば無上の喜びとするところであります。
なお、従来の著書に引きつづき本書の出版にあたりましても、格別のご厚情を賜わりました明治図書出版株式会社社長藤原政雄氏、編集部長木田尚武氏、ならびに嶽ア峻氏に深甚の謝意を表するものであります。
昭和四十八年二月二十二日 富山市立掘川小学校長 /山下 巌
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明治図書















