- まえがき
- 第1章 知らないと損をする 学級経営の微細技術
- 1.荒れた生徒への対応が,教師を成長させる /染谷 幸二
- 2.「きまり」の意味を伝える /染谷 幸二
- 3.「何事も先手を打つ」ためにする4つのポイント /寺田 加奈子
- 4.誰にでもできる,学級目標の設定の仕方 /長谷川 博之
- 5.春休みの準備が,4月からの学級を決める /進士 かおり
- 第2章 出会いを大切にする 明るいトーンの学級開きのシナリオ
- 1.生徒を教室に迎え入れるまでが勝負だ /櫛引 丈志
- 2.ほめる「布石」をつくる明るい授業開き /星 由紀枝
- 3.入学式当日のシナリオを周到に準備する /山本 真吾
- 第3章 生徒の目が輝く「黄金の3日間」のツボ
- 1.誰もが出番があるように仕組む /松原 大介
- 2.ほめることに全精力を注ぎ込む /横山 宏樹
- 3.知的な学級になるため,前に出る意欲を引き出す /山口 俊一
- 4.教師の演出なくして「黄金の3日間」は成功しない /垣内 秀明
- 第4章 初担任決定! 春休みの準備1・2・3
- 1.初日からの動きを入念にシミュレートしよう /鈴木 勝浩
- 2.高いイメージを持ち,それを実現するための戦略を練る /志田 智明
- 3.モノを用意・教室を整備・生徒の名前を覚える /戸嶋 崇人
- 第5章 弱肉強食とオサラバ! 給食指導のコツ
- 1.ルール・システムを確立し,担任が仕切る /伊藤 和子
- 2.給食指導は学級経営の大きな柱になる /芦田 まゆみ
- 3.弱肉強食を防ぐ仕組みをつくる /杉山 学
- 第6章 笑顔で教室クリーン作戦 清掃指導の秘訣
- 1.細かな分担と清掃用具の管理で完璧! /三並 郁恵
- 2.ものを準備し率先して働く /渡邊 佳織
- 3.仕事の細分化と責任の所在の明確化 /冨士谷 晃正
- 第7章 信頼を手にする学級懇談運営マニュアル
- 1.保護者との連携を図る 報告連絡相談を欠かさない /川神 正輝
- 2.「参加してよかった」という感想がもらえる懇談会にする /田中 克彦
- 3.保護者懇談会ではモノを用意して子どものプラスの面を伝える /山本 真吾・
- 第8章 保護者が笑顔になる家庭訪問の演出
- 1.生徒のよさを伝え,聞き出すのが教師の役割 /進士 かおり
- 2.写真1枚で会話がはずむ /垣内 秀明
- 3.常に,生徒をほめることを考える /風林 裕太
- 第9章 学級通信で結ぶ保護者との心の絆
- 1.保護者に喜ばれる学級通信のポイント /パク フンミン
- 2.今,何が起こっているかをタイムリーに伝える /井戸 恵美
- 3.生徒の日記と連動させる /松原 大介
- 第10章 学び続ける教師でいたい 先輩TOSS教師からの学び
- 1.腹の底からの実感 やってよかったことベスト3 /伊藤 貴之
- 2.「歩みを止めず,学び続けること」を学んだ /寺田 加奈子
- 3.自ら行動し,自らの背中で示す /上野 一幸
- 第11章 ベテラン教師からヤング教師へのメッセージ 学級担任の心得
- 1.笑顔で明るく元気に,学校を休まない! /鈴木 勝浩
- 2.信念を持つ,先手を打つ,保護者とつながる /吉田 る実
- 3.多くの経験を前向きにとらえる人に,チャンスは舞い降りる /山下 修
- 第12章 私の本棚 学級経営に役立つ1冊
- 1.めっちゃ明るい教室経営の法則 /渡邊 佳織
- 2.『子どもを動かす法則』の5つの補足を大掃除で実践 /伊藤 貴之
- 3.『中学教師が陥る100の悩みに答える』第1〜3集 /倉 豊彦
- 4.『集団遊びスキルBOOK』でクラスの仲を良くする /坂本 佳朗
- 5.日常の学級経営を再確認するための本 /小山 典子
- 第13章 学級担任の喜び 忘れられない生徒たちとの思い出・学び
- 1.卒業式の感動とその後の成長した姿 /三並 郁恵
- 2.TOSSで学んだことを忠実に実行した学級づくり /加納 敏
- 3.A君とともに成長したクラスの仲間,そして私 /芦田 まゆみ
- 第14章 今だから話せる こうして学級崩壊からの生還を果たした
- 1.サークルに出会い,学級崩壊から生還した /染谷 幸二
- 2.学級担任の仕事は生徒を好きになることから始まる /櫛引 丈志
- あとがき
■まえがき■
酪農地帯のど真ん中にある学校に勤務している。僻地3級,全校生徒38名の超小規模校である。最も遠い生徒はアップダウンの激しい道を12km,約1時間かけて登校する。部活動で目一杯汗を流した後,同じ道を帰っていく。家に帰ると,牛舎へ行って仕事を手伝う。実にたくましい生徒たちである。
家庭訪問も,移動が大変である。たった3軒の訪問ながら,移動距離は40kmを越えていた。訪問する時間は酪農を営む家庭にとっては「融通がきく時間」である。牛舎の作業を一休みし,お父さん方も私を出迎えてくれる。
新卒当時,家庭訪問が大嫌いだった。親と何を話していいのか分からなかった。玄関まで来ても,チャイムが鳴らせなかった。たった15分の時間が,1時間以上に感じた。何度も腕時計を見て,時間になると逃げるように玄関を出た。学校に帰ると立ち上がれないほど,疲れ切っていた。
あれから20年以上が過ぎた。今は家庭訪問が「楽しみ!」と心から思えるようになった。これも,TOSS代表の向山洋一氏のおかげである。
20年前,初めて法則化セミナーに参加した。セミナーの最後に『Q&Aコーナー』があった。私は「家庭訪問で,保護者との間に信頼を築く方法を教えてください」と質問をした。向山洋一氏は,笑顔で次のように語った。
それは,モノを準備することです。私はあらかじめ,「子どもの頃の写真を1枚用意しておいてください」とお願いしておきます。そうすると,親はたくさんある子どもの写真から“お気に入りの写真”を用意して待っていてくれます。その写真を見ながら,小さい頃のことを語ってもらうのです。間違いなく,親は喜んで話をしてくれます。教師は,それを笑顔で,うなずきながら黙って聞いていればいいのです。(文責:染谷)
目から鱗が落ちた思いがした。それまでは,「沈黙が恐ろしい」という思いが強いあまり,私が一方的に話をしていた。話題が尽きると,「時間が来たので……」と席を立っていた。私の都合だけが優先された。「親の話を黙って聞こう」という発想はまったくなかった。不勉強な自分を恥ずかしく思った。
小高い丘に建つ良太(仮名)の家を訪問した。私の車を見つけるなり,ご両親が牛舎から小走りでやってきた。簡単なあいさつをした後,居間に通された。テーブルにはたくさんの写真が用意されていた。「先生は1枚と言ったけど,選び切れなくて……」と語る母親の表情には,幸せがあふれていた。
私は1枚1枚写真を見ていった。そのたびに,母親は写真の解説をしてくれた。七五三の写真,誕生日パーティーの写真,幼稚園の運動会の写真,マラソン大会で優勝して金メダルを首にかけている写真などなど。どの写真からも幸せな家庭生活の様子が伝わってきた。その中に,東京ドームで良太が父親と一緒に写っている写真があった。
それまで黙ってお茶を飲んでいた父親に,「お父さんは野球が好きなんですか?」と声をかけた。父親の表情がゆるみ,「これは東京ドームで巨人・阪神戦を見た時の写真だな」と教えてくれた。
酪農は365日休みがない仕事である。《泊まりがけの家族旅行は数年に一度》という家庭がほとんどである。それだけに,父親としても思い出深いのであろう。「この時は清原がホームランを打ったんだ」「最近,息子とキャッチボールをしていないな」と最高の笑顔で話してくれた。
本書は,TOSS 中学で学ぶ教師が,日々の学級経営から学び取った実践が綴られている。中学教師は成長期にある中学生を相手にしている。人生で最もエネルギーに満ちた中学生と一緒に過ごせることは,実に幸せなことである。
本書が《笑顔があふれる学級》をつくるきっかけになれば幸いである。
TOSS 中学 /染谷 幸二
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- 明治図書
- 様々な実践事例を知ることができて良かったです。2021/5/1640代・中学校教員