- はしがき
- 第1章 個の確立を目指す学校
- 第1節 個の理解に徹する
- 1 「子」から「個」へ
- 2 個発の学び
- 3 個の見方・考え方・感じ方・行い方
- 4 個のくらしに根付く学び
- 第2節 個の学びと教育
- 1 「個の学び」とは
- 2 くらし全般にわたって捉える子ども
- 第3節 個のためにある学校
- 1 生きることを育む学びの場
- (1) 単元との出会い
- (2) 島田さんの追究
- 2 子どもの側に立つ教育
- 第4節 個の確かな成長を促す
- 1 みつける 〜出会いを意味あるものとして感じる心を磨く〜
- 2 求める 〜他を契機として自らをみつめ,み直す〜
- 第2章 個の学びと単元構想
- 第1節 子どもの育ちと願いを捉える
- 1 子どもの育ちを捉える
- 2 子どもの願いを捉える
- ◎「子どもの育ちと願いを捉える」の実際
- 1 子どもの育ちを捉える
- (1) 日常生活に見られる様々な場面から子どもの育ちを捉える
- (2) 前年度までの学習経験から子どもの育ちを捉える
- 2 子どもの願いを捉える
- 第2節 子どもが自ら願いを実現しようとする教材の発掘
- 1 子どもの立場に立ち,候補教材を挙げて選定する
- (1) これまでの自分と今の自分を確かめようとする教材
- (2) ひとり学習や追究を進める情動が湧く教材
- (3) み直しの契機があり,生き方が深まる教材
- (4) 子どもと教材のつながりを生む教材の本質を見極める
- ◎「教材の発掘」の実際
- 1 子どもの立場に立ち,候補教材を挙げて選定する
- (1) これまでの自分と今の自分を確かめようとする教材
- (2) ひとり学習や追究を進める情動は湧く教材か
- 2 教材の本質に子どものつながりはあるか
- 第3節 選定した教材を基に単元の展開を工夫し,予測する
- 1 子どもが自己をみつめ,歩みを進めようとする「提示」になっているか
- (1) 教材との出会わせ方
- (2) 予想される子どもの反応
- 2 子どもが自己の生き方を深めようとする契機となる「問題」はあるか
- (1) 願いの実現に向けた道すじを描く
- (2) 解決しようとする切実感や必要感が生まれる
- (3) 子どもに問題をもってほしいと焦らない
- 3 子どもが他を求めようとする状況はあるか
- (1) 一人ひとりの歩みが多岐に広がっている
- (2) 他の生き方を求め,協働的に学び合おうとする状況が生まれる
- (3) 追究が充実してくることによって,他の状況を確かめようとする
- (4) 追究が行き詰まることによって,他の状況を確かめたくなる
- ◎「単元の展開の工夫と予測」の実際
- 1 子どもが教材と出会い,自分をみ直し,歩み出そうとするか
- 2 子どもが自己の生き方を深めようとする契機となる「問題」はあるか
- 3 子どもが他を求めようとする状況は生まれるか
- 4 子どもの追究過程を予測する 〜追究予測の作成〜
- ◎「追究予測」の実際
- 第4節 ひとり学習の支援の在り方を探り,集団過程を設定する
- 1 ひとり学習の支援の在り方を探る
- (1) 子どもの表面に表れない内面を捉える
- (2) 子どもへのはたらきかけ
- 2 集団過程について
- (1) 集団過程設定の意義
- (2) 集団過程における教材性を見いだす
- (3) 追究をみ直そうとする姿を捉える教師の視点
- (4) 追究をみ直そうとする瞬間が生まれる状況を探る
- (5) 集団過程における教師のはたらきかけ
- (6) 集団過程後に捉える子ども
- (7) 子ども理解を深める解釈研究
- ◎「ひとり学習と集団過程」の実際
- 1 川合さんについて
- 2 提示の授業
- 3 ひとり学習のはじまりと抵抗
- 4 集団過程の設定
- 5 日常のくらしからの自分の感じ方・行い方のみ直し
- 6 抵抗から見いだされる問題
- 7 集団過程の設定と乗り越えようとする問題
- 8 ひとり学習の手応えを感じていく
- 9 自分の問題を通して,自分自身をみつめていく
- 10 更に具体的に行動し,よりよく生きようと力強く歩み始める
- 11 単元の終末
- 12 単元を通して解釈する川合さんについて
- 第3章 「個の学び」を進める子どもの実際
- 第1節 低学年における「個の学び」
- 第2学年 生活科「なつやさいカレー」の実践から
- 1 子どもの育ちと願いを捉える
- (1) 日常生活に見られる子どもの育ちを捉える
- (2) 子どもの学習経験からの育ちを捉える
- (3) 子どもの未来に向かう可能性を捉える
- 2 子どもが自ら願いを実現しようとする教材の発掘
- (1) 子どもの立場に立ち,教材候補を挙げて選定する
- (2) 教材の分析について
- (3) 単元名について
- 3 実際の子どもの姿 〜島川君の「個の学び」を通して〜
- (1) 提示の時間
- (2) 自ら苦手を克服しようと願う
- (3) 夏野菜づくりへの取り組み方を明らかにする
- (4) 自分が育てているミニトマトに心を寄せる
- (5) 自分の取組が仲間に与えた影響を知り,手応えを感じる
- (6) 仲間と一緒に苦手な夏野菜の克服に取り組む
- (7) 初めて手を挙げ,ミニトマトの克服に向けた自らの願いを語る
- (8) 自分自身にできる役立ちを考え,関わろうとする
- (9) 夏野菜カレーに向けて,自分のできることを考え,はたらきかける
- 4 その後の島川君の歩み
- 第2節 中学年における「個の学び」
- 第4学年 道徳「中庭」の実践から
- 1 子どもの育ちと願いを捉える
- (1) 日常生活に見られる子どもの育ちを捉える
- (2) 子どもの学習経験からの育ちを捉える
- (3) 子どもの願いを捉える
- 2 子どもが自ら願いを実現しようとする教材の発掘
- (1) 教材の分析について 〜教科の側面からも捉える〜
- (2) 単元の構想について
- (3) 子どもが他を求めようとする状況
- 3 実際の子どもの姿 〜酒井さんの「個の学び」を通して〜
- (1) 提示の時間
- (2) 酒井さんに想定した抵抗と課題について
- (3) 酒井さんのひとり学習がはじまる
- (4) 仲間との関わりによって自分の課題を見いだす
- (5) 日常生活でも自分の課題をみつめる
- (6) 自分の課題を意識しながらひとり学習の在り方をみ直す
- (7) 仲間の姿に感化され,課題を乗り越える情動を湧かせる
- (8) 日常生活でも自分の課題を意識する
- (9) くらしの時間における関わりから発展するひとり学習
- (10) ひとり学習の幅を広げながら自分の課題をみつめる
- 4 その後の酒井さんの歩み
- 第3節 高学年における「個の学び」
- 第5学年 社会科(総合的な学習の時間)「コンパクトなまちをつくる富山市」の実践から
- 1 子どもの育ちと願いを捉える
- (1) 日常生活に見られる子どもの育ちを捉える
- (2) 子どもの学習経験からの育ちを捉える
- 2 子どもが自ら願いを実現しようとする教材の発掘
- (1) 様々な社会的事象を関連付けながら,これからの社会を考える教材
- (2) 自分ごととして捉えられる教材
- (3) 富山市が進める「コンパクトなまちづくり」の教材性
- (4) 単元名について
- (5) 単元の構想について
- 3 実際の子どもの姿 〜吉村さんの「個の学び」を通して〜
- (1) 提示の時間
- (2) 公共交通の側面から富山市の取組を調べ始める
- (3) 富山市の取組に対する期待感を高める
- (4) 当事者への聞き取り調査を通して自分の考えを立証する
- (5) 中心部と郊外の不平等さに気付かされる
- (6) 体をかけて情報を集めることで自分の考えを再構成していく
- (7) 願う社会に向けて自分の役割をみつめ直す
- (8) 自らはたらきかけることで,手応えを感じ始める
- (9) 自らの意志で行動し,社会に参画する手応えを実感する
- 4 その後の吉村さんの歩み
- 第4章 未来の担い手を育むESDへの取組
- 第1節 本校におけるESDへの取組
- 1 ユネスコスクールへの加盟とESD
- 2 ESD実践発表会での取組
- 第2節 ESDで育てたい力と目指す子どもの姿
- 1 ESDの指導目標
- 2 ESDを通して育てたい力
- 3 目指す子どもの姿
- 第3節 ESDにおける「個の学び」
- 第4学年 社会科「佐伯宗義がのこしたもの」の実践から
- 1 子どもの育ちと願いを捉える
- (1) 日常生活に見られる子どもの育ちを捉える
- (2) 子どもの学習経験から育ちを捉える
- 2 子どもの生きる力を育む教材の発掘
- (1) 社会的事象の経緯や背景を考えられる教材
- (2) 社会を形成する一人としての可能性を感じられる教材
- (3) 「佐伯宗義」と「富山地方鉄道」の教材性
- (4) 単元名について
- (5) 単元の構想について
- (6) ESDを通して育てたい力
- 3 実際の子どもの姿 〜山中さんの「個の学び」を通して〜
- (1) 佐伯宗義の人柄を探ろうとする
- (2) 様々な事実を集め,自分の生活経験を基に予想を立てる
- (3) 佐伯宗義に対する尊敬の念が生まれてくる
- (4) 今と昔を比べることで交通の意味を探り,社会の仕組みと向き合う
- (5) 鉄道路線の変遷について因果関係を探る
- (6) 交通の新たなはたらきや価値に気付く
- (7) 佐伯宗義の夢について具体的に考え,自分にできることを探る
- (8) 佐伯宗義がのこしたものから,自分の役割を考える
- (9) よりよい地域にしたいという願いや愛着を強める
- 4 よりよい未来を願い,主体的に生きる子ども
- 第5章 「関わり」や「つながり」を尊重する教育活動
- 第1節 本校教育活動の四本柱
- 1 朝活動 〜働く意味を見いだす・願う自分の姿を描く〜
- (1) 自然観察園に取り組もうと自ら決める
- (2) 仲間と協力し,主体的に自然観察園にはたらきかける
- (3) 上級生との関わりを通して,活動の意味や価値に気付く
- 2 くらしの時間 〜仲間とつながる〜
- (1) 「大切な人なんだから…」
- (2) くらしの時間を契機に学習発表会への取組をみ直す
- (3) 仲間への安心感から,新たな自分の可能性を感じる
- 3 自主活動 〜自らの可能性を見いだし,仲間や身の回りの人々との関わりを深める〜
- (1) 自分の得意なことを生かして,仲間を楽しませることができる喜びを感じる 〜学年新聞紙雪玉合戦大会を通して〜
- (2) 学校や学校に来られる方々へのはたらきかけを工夫する〜前庭アーチづくりを通して〜
- (3) 自分の手で,願いを実現することができる創造的な時間
- 第2節 地域との連携を図った教育活動
- なかよし1組 「『ありがとうの家』と交流しよう」の実践から
- 1 お婆ちゃんに喜んでもらいたい
- 2 交流って,心が行ったり来たりするんだね
- 3 交流で得たもの
- 第3節 世界と学び合い・連携する国際理解教育
- 第6学年 総合的な学習の時間「今わたしたちにできること―バヌアツ共和国との交流を通して―」の実践から
- 1 単元名の提示を受け,自分なりの交流の方法を考える
- 2 相手意識をもちながら交流を進める
- 3 自分に引き寄せながら,より身近な存在と感じて交流を進める
- あとがき
はしがき
平成28年12月,中教審による「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」において,予測困難な時代に,一人ひとりが未来の創り手となることの重要性が次のように記されています。
「人工知能がいかに進化しようとも,それが行っているのは与えられた目的の中での処理である。一方で人間は,感性を豊かに働かせながら,どのような未来を創っていくのか,どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え出すことができる。…このために必要な力を成長の中で育んでいるのが,人間の学習である。…子供たち一人一人が,予測できない変化に受け身で対処するのではなく,主体的に向き合って関わり合い,その過程を通して,自らの可能性を発揮し,よりよい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにすることが重要である。」
このことは,本校が長年教育目標として取り組んでいる「自主創造」を基底とする「自然・文化(社会)・人・もの・出来事に心をつなぎ,いのちとことわりを感受し,これを吟味し続ける人間形成」と相通じるものと考えることができます。つまり,本校の教育は「子ども一人ひとりの見方・考え方・感じ方・行い方等の特性を捉え,一人ひとりの子どもの学びを生かす授業の実践」であり,この考え方を進めていくことが,「子どもが自らの可能性を発揮し,よりよい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにする」ことにつながっていくと考えられるのです。
そのような教育を本校では,昭和56年から「朝活動」,「くらしの時間(オリエンテーションの時間・くらしのたしかめ)」,「授業(追究学習)」,「自主活動」を学校でのくらしの四本柱に据え,「追究は『個』において成立する」という前提のもと,一貫した教育活動を展開しています。
私たちは,授業において,
・子どもが,自己のもつ概念や命題の再点検に迫られ,自らの経験に照らして納得のための仕組みや理論を主体的に追い求めていこうとする姿。
・子どもが,自らの納得を求めて粘り強く取り組む姿や互いのよさに学び合い,追究の構えや進め方等をみ直す姿
などを期待する子どもの姿の高まりとして考えています。
一人ひとりの子どもは,「授業」を通して,自らの取組をみつめ,み直していきます。教師は,かけがえのない一人ひとりの子どもの存在を「個」という考え方で捉え,その子なりに自分らしく生きていこうとする子どもの学びを支えています。このような営みが,更なる「主体的」な追究を生み出し,「協働的」な学びへとつながっていくのです。主体的に取り組む姿とは,その子なりの経験を総動員させながら取り組む姿であり,協働的に取り組む姿とは,仲間と取り組む中で,それぞれの子どもがその子なりの追究を深めていく姿なのであります。
また,本校は平成24年度にユネスコスクールの認定を受け,ESDの考え方に基づいた教育活動を推進してまいりました。自分のことだけでなく,異なる見方・考え方をもつ人や社会との関係性や自然環境との関係性を認識し,現在から未来に至る「関わり」や「つながり」を尊重する個の育成に努めているところです。
私たちは,このような堀川の学びを実直に積み重ねながら,研究主題「個の学びと教育」に基づき,自己実現を果たしていく子どもの姿の具現化を求めてきました。このたび,「個」に焦点を当てた学びの姿を整理し,『個の学びと教育』として,第13の著書としてまとめました。どうかご一読いただき,ご指導賜りますことをお願いするものであります。
平成30年3月 富山市立堀川小学校長 /古木 繁行
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- 明治図書
- 堀川はすごい。簡単に真似できるものではないが、マインドは目標にしたい。2023/1/240代・小学校管理職
- 堀川小学校を見に行くのが楽しみになった。2019/5/630代・小学校教員
- 忙しさで自分の実践や子どもとの関わりを振り返る余裕もない中で、立ち止まって日々を見つめなおす意欲がわいてくる本でした。2019/1/2620代・小学校教員