- 発刊に寄せて 静岡大学教育学部部長 /伊藤 敬
- まえがき 静岡大学教育学部附属静岡小学校校長 /杉山 明博
- 第1章 学びをひらく<総論編>
- 第1節 その子ならではの学びを求めて 〜子どもの『学び』とは〜
- 1 子ども観
- 2 『教科における学び』から見えてきたもの
- 3 教師の『とらえ・願い・関わる』
- 4 教材観の転換
- 第2節 雅洋君ならではの学びを求めて 〜とらえを新たにし,願いを模索し続ける教師〜
- 1 その子への願いから生まれる教材
- 2 教材『かがやき2組からのメッセージ』の誕生
- 3 子どもの学びを支えるもの
- 1 教材〜その魅力
- 2 教師〜願いと関わりに揺れて
- 3 友達〜友達の思いにふれて
- 第2章 学びをひらく<実践編>
- 実践1 自分の成長を感じ,友達関係を見つめる
- 『新1年生に,1年1組のことを伝えよう』の実践(1年)
- 実践2 その子ならではの読みをつくり,深めていく
- 『つり橋を渡りたい!』の実践(3年)
- 実践3 数に対する考え方の広がりを求めて
- 『分数って,どんな数だ』の実践(3年)
- 実践4 事実に働きかけながら,自分を見つめる
- 『募金活動からボランティア活動が見えてくる』の実践(4年)
- 実践5 実験で得た事実をもとに自信をもって追究する
- 『木炭で餅を焼こう』の実践(6年)
- 実践6 がんばれる自分との出会い
- 『光でつくる世界』の実践(6年)
- 実践7 共に学ぶ子どもと教師
- 『今の自分を越えて』の実践(6年)
- 第3章 自分自身を見つめ,子どもと共に学ぶ教師<教師おこし編>
- 〜教師おこし委員会の取り組み〜
- 第1節 教師おこし委員会の取り組み
- 1 なぜ今,教師なのか
- 2 教師おこしの基本的な考え方
- 1 教師おこしに込めてきたもの
- 2 内面での自己との対話
- 3 教師おこしの活動
- 第2節 自分を見つめていく教師 〜思いと思いのぶつかりあいの中で〜
- 1 別れ
- 2 遥香さんとの出会い
- 3 遥香さんの思いを支えることはできるのか
- 4 彼女に願うものは
- 5 思いと思いのぶつかりあいの中で
- 6 共に歩む
- あとがき 静岡大学教育学部附属静岡小学校副校長 /大橋 智之
- 研究同人
発刊に寄せて
ここ数年,教育関係の書物のタイトルに「教育」ではなく,「学習」を掲げているものが大変多いように思います。それと同時に,「個性の尊重」や「生活」「体験」なども重要視されてきました。21世紀を迎える現在,これまでの教育の転換期にあるといってよいと思います。
1900年にE・ケイの『児童の世紀』が出版されたのを契機とし,20年代まで,世界的にも,わが国においても新教育のさまざまな動きが見られました。現在は,それ以来のことということができます。
前者について言えば,1909年に澤柳政太郎は,それまでの教育学に対する批判と新しいアプローチを宣言した『実際的教育学』を出版し,それを実際に行うべく成城小学校を創設しました。彼は,大正新教育あるいは大正自由教育における学校を単位とした組織的な実践家としてゆるぎない地位を占めています。『私立成城小学校創設趣意』において,「1.個性尊重の教育 2.自然と親しむ教育 3.心情の教育 4.科学的研究を基とする教育」を掲げ,その中に「自然的な正常的な而して健全な発育を遂げしめる」こと,「師弟の関係は真に人格対人格の関係で,心から心への教育が出来やうと確信します」とあります。また彼は,「教育を発生的に考えることが教育改革の眼目である」と言い,「小学校においても自学自習を行うべし」と述べています。「科学的研究を基とする教育」は,その方法的根拠を与えるものでもありました。まさに,児童の主体的学習を考えていたのです。
本校の「子どもおこし」,「教師おこし」の理念は,そこに関わってきます。さらに多くのものを付け加え,豊かなものにしていると言ってもよいでしょう。すぐれた実践の記録となっていることを期待しております。
平成12年6月 静岡大学教育学部部長 /伊藤 敬
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- 明治図書