- まえがき
- 1章 最高の教室をつくる8つの菊池メソッド
- 菊池メソッド1 ほめ言葉のシャワー
- 菊池メソッド2 価値語の指導
- 菊池メソッド3 コミュニケーションゲーム
- 菊池メソッド4 2種類の話し合い
- 菊池メソッド5 係活動
- 菊池メソッド6 成長ノート
- 菊池メソッド7 白い黒板
- 菊池メソッド8 試練の十番勝負
- 2章 菊池メソッドを生かした365日の学級経営
- 新学期前の準備
- 1年間の見通し
- 子どもの情報収集
- 出会いの準備
- 黒板メッセージの準備
- 初日の学級経営
- 放課後の教室での振り返りと準備
- 担任発表
- 出会いのあいさつ
- 簡単なコミュニケーションゲーム
- 成長ノートの配布
- 1学期の学級経営【低学年】
- 4月 コミュニケーションゲームから始めよう【メソッド3】
- 4月 アイデアあふれた自己紹介でほぐそう【メソッド3】
- 5月 係活動を成長の場にしよう【メソッド5】
- 5月 価値語の指導を始めよう【メソッド2】
- 6月 話し合いのある授業を始めよう【メソッド4】
- 7月 ほめ言葉のメッセージをおくり合おう【メソッド1】
- 1学期の学級経営【中学年】
- 4月 教室にほめ合うサイクルをつくろう【メソッド1】
- 4月 成長ノートを始めよう【メソッド6】
- 5月 ほめ言葉のシャワーを始めよう【メソッド1】
- 6月 ほめ言葉のシャワーを発展させよう【メソッド1】
- 6月 対話・話し合いのある授業を始めよう【メソッド4】
- 7月 価値語グランプリを行おう【メソッド2】
- 7月 白い黒板で2学期に成長をつなげよう【メソッド7】
- 1学期の学級経営【高学年】
- 4月 成長ノートを始めよう【メソッド6】
- 4月 ほめ言葉を駆使してあたたかい雰囲気をつくろう【メソッド1】
- 5月 コミュニケーション力を高めるゲームをしよう【メソッド3】
- 6月 ほめ言葉のシャワーを始めよう【メソッド1】
- 6月 対話・話し合いができるクラスにしていこう【メソッド4】
- 7月 価値語づくりに取り組もう【メソッド2】
- 2学期の学級経営【低学年】
- 9月 対話する機会を様々につくろう【メソッド4】
- 10月 白い黒板にチャレンジしよう【メソッド7】
- 11月 子ども熟議を始めよう【メソッド4】
- 12月 成長を実感する会を開こう【メソッド3】
- 2学期の学級経営【中学年】
- 9月 プラス視点で2学期のリスタートをきろう【メソッド2】
- 10月 子ども熟議を取り入れよう【メソッド4】
- 11月 非日常を成長の場へとプロデュースする成長年表をつくろう【メソッド6】
- 11月 価値語名言集をつくろう【メソッド2】
- 12月 ほめ言葉のシャワーを進化させよう【メソッド1】
- 2学期の学級経営【高学年】
- 9月 ほめ言葉のシャワーを発展させよう【メソッド1】
- 10月 ほめ言葉のシャワーに質問タイムを導入しよう【メソッド1】
- 10月 対話・話し合いの場面の自由度を高めよう【メソッド4】
- 11月 成長ノートで成長川柳をつくろう【メソッド6】
- 12月 白い黒板週間を実施しよう【メソッド7】
- 3学期の学級経営【低学年】
- 1月 ゴールを意識した生活指導を行おう【メソッド2】
- 2月 成長ノートやほめ言葉のシャワーで言語化を進めよう【メソッド6】
- 3月 試練の十番勝負を行おう【メソッド8】
- 3月 心にある言葉大賞を決めよう【メソッド2】
- 3学期の学級経営【中学年】
- 1月 ゴールを意識して成長ノートに取り組ませよう【メソッド6】
- 2月 最後のほめ言葉のシャワーを始めよう【メソッド1】
- 3月 試練の十番勝負を行おう【メソッド8】
- 3学期の学級経営【高学年】
- 1月 ゴールを意識して成長ノートに取り組ませよう【メソッド6】
- 2月 オリジナル価値語づくりをしよう【メソッド2】
- 3月 卒業式の非日常を成長につなげよう【メソッド6】
- あとがき
まえがき
「菊池道場は,日本の教育の歴史を創る」
このお言葉は,2016年7月の第4回菊池道場全国大会で,鈴木寛文部科学大臣補佐官が特別記念講演の中でお話しされたものである。
私は,33年間,北九州市内の公立小学校に勤務していた。教壇に立ち続け,ひたすら子どもたちと向き合ってきた。そんな私の実践が,いつしか「菊池実践」と呼ばれるようになり,賛同する仲間が「菊池道場」を次々と立ち上げていった。一地方の一公立小学校の一教室で行っていた教育の在り方が,少しずつ全国に広がり,このようなお言葉をいただけるまでになったのである。このことは,一教師としてとても幸せなことである。全国の志をもった多くのともに歩む菊池道場の先生方に感謝の気持ちを表したい。
本書で執筆していただいた先生方の実践は,菊池道場が目指すこれからの教育の在り方を力強く示してくださっていると私は自負している。
1 菊池学級3学期の子どもの姿
私は,在職中から「子どもたちの事実で勝負する」とよく口にしていた。だから,セミナーや講演会でも教室の事実を写真や動画,実物資料をふんだんに取り入れた内容で行ってきた。多くの先生方が,
「なぜあんなに自己開示ができる子どもに育つのか」
「あのようなコミュニケーション力あふれる学級ははじめてだ」
「子どもたちの白熱した話し合いは,大人以上だ」
「圧倒的な言葉の力,圧倒的な対話力に,圧倒された」
などといった感想をもたれ,子どもたちの成長の事実に驚きを隠せない様子であった。
北九州という地域性もあり,様々な課題を抱えた「気になる子」も多かったが,受け持ったどの学級の子どもたちも,3学期には大きく成長した。
最後には,「知的で,無邪気な,ほんわかとした学級・子ども」へと成長していったのである。
菊池学級の3学期は,自分をよくしていこう,学級や学校をよくしていこうという成長への集中力が圧倒的に高まっていたのである。
2 8つのメソッドについて
菊池学級の子どもたちは,私の指導を「成長の授業」という言葉で表現していた。1日の全てが成長につながる授業だと捉えていたのである。
本書では,その中から代表的な8つの指導を中心に取り上げている。
@ほめ言葉のシャワー
一人ひとりをみんなで成長させ合う活動である。毎日,一人の友達をみんなでほめ合うことで,子ども相互のコミュニケーションが深まり,関係性があたたかく強いものになっていく。お互いに信じ合える仲間になっていき,学級の絆を深めていく。
また,この「ほめ言葉のシャワー」は,「正解は1つにかぎらない」というメッセージを毎日,子どもたちに植林している。友達の行動や言動について,新しい角度から着眼し,すでに身につけた価値語を活用しつつも,より適切な表現を編み出していく「探究する姿勢」そのものである。
A価値語の指導
価値語とは,人の考え方や行動をプラスに導く言葉のことである。十数年前から使っている私の造語である。
「ことばが育てばこころが育つ。人が育つ。教育そのものである」という大村はま先生のお言葉がある。言葉で人を育てるという菊池実践の基盤となっているのが,この価値語の指導である。
価値語を子どもたちに植林することで,公社会に必要な考え方や行動を身につけ,子どもたちは自発的に成長していく。
Bコミュニケーションゲーム
菊池学級の圧倒的なコミュニケーション力は,ゲーム的なトレーニングによるところも大きい。ゲームのもつ楽しさを大事にしているのである。特に,対話力の中核をなす質問力に関するゲームを重視している。
また,これから必要とされる即興力に重点を置いたゲームもくり返し行っている。書いたことしか言えないようなレベルではなく,瞬時に自分の言葉で話せる人間を育てようと考えているからである。
C2種類の話し合い
菊池学級の話し合いは,ディベート的な話し合いである。ポイントは,@自由な立ち歩きを認める,A少人数による対話を重ねる,B「話す・質問する・説明する」を話し合いの基本とする,ということである。
私は,「話し合い力は学級の総合力」であると考えている。話し合いの力は,教師と子ども,子ども同士のあたたかい関係性と強いつながりがあると考えている。特に,小学校の場合は,学級経営と同時進行で伸びていくのが話し合いの力だと捉えている。
D係活動
菊池道場では,係活動を「成長活動」と呼ぶことがある。自分らしさを発揮して,学級のみんなを巻き込んで活動するのが本来の係活動であり,それはお互いが成長し合うことであると判断しているからである。
友達と議論や対話をして,学級全員に提案して,みんなと一緒に活動するというアクティブ・ラーニングの大切な要素が,体験を通して学べるのが係活動であると捉えている。
E成長ノート
成長ノートとは,「教師が本気になって,子どもを公に通用する人間に成長させるためのノート」のことである。
従来の作文ノートや日記帳との大きな違いは,「テーマは教師が与える」ということである。教師が,「こうあってほしい」「このことについて考えさせたい」といったことを,子どもたちにテーマとして与え書かせるのである。
そして,書かれた内容を個に寄り添いながら読み,赤ペンでほめて認めて励まし,子どもたちを成長させていくのである。
F白い黒板
「白い黒板」とは,子どもたちが黒板に自分の意見を書き,チョークで真っ白にするという取り組みである。
従来の教育は,「黒板は先生が書き使うもの」という考え方であった。
しかし,「白い黒板」は,「私たちのもの」になる。「教わる」モードではあまり能動性は発揮されない。「白い黒板」では,子ども自身が前に出て,チョークを持ち,自分の意見を書くことになり,きわめて能動的なアクションとなる。主体的な学び手となる。
G試練の十番勝負
年度末に行う成長ノートなどを活用した取り組みである。1年間の成長を自覚させ,新しい年度への構えをつくらせる取り組みである。
「○年○組は,自分にとって何だったのか」「言葉の力とは何か」といった10個のテーマについて考えさせる。成長ノートに書いたり,価値語を活用したり,白い黒板をつくり上げたり,話し合いをしたりしながら,学級みんなで学び深め合う総合的な学びである。
/菊池 省三
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