- はじめに
- ステップ1 学び合う読みの授業イメージをもとう
- @ 読みの授業が楽しくなくなるのはなぜ?
- A 子どもが主体的・対話的に学習し、深く学ぶ楽しさを感じる「学び合う読みの授業」とは?
- B 教師の授業力のイメージ
- ステップ2 「読む」について理解しよう
- @ 「読む」ってどんなこと?
- A どうしてみんなで読むの?
- B 読みの深まりとは?―「読みの意識の三層構造」―
- C 指導の実際「ぺガスス」
- ステップ3 教材研究1 教材を分析・解釈してみよう
- @ 教材研究のスタートは?
- A 物語の一般的なモデルとは?
- B その他の教材分析・解釈の視点
- C 教材分析・解釈の実際「大造じいさんとがん」
- D 指導目標を設定しよう
- ステップ4 教材研究2 指導方法を構想しよう
- @ どのように読ませるか
- A 単元を構想しよう
- B 「主体的・対話的で深い学び」の実現のために
- C 指導計画の実際「ないた赤おに」
- ステップ5 教材研究3 学び合いを生み出し、読みを深める発問を組み立てよう
- @ 発問に対するイメージは?
- A 「読みの意識の三層構造」を活用した発問の基本パターンとは?
- B 発問の基本パターンを活用した一単位時間の組み立てモデルとは?
- C 発問の組み立ての実際「ろくべえまってろよ」
- ステップ6 実践1 導入場面 イメージを問い、子どもの課題意識を喚起しよう
- @ 全員の子どもを授業に巻き込んで考えさせる
- A 授業のスタートラインに立たせるために必要なことは?
- B 導入の役割と三つのタイプ
- C 導入の流れのモデルとその手立て
- D 導入場面の実際「あしたも友だち」
- ステップ7 実践2 展開場面@ ペアトークを通して自分の考えの根拠と解釈を明確にさせよう
- @ 一単位時間の時間配分をどうする?
- A 「質問型解釈ペアトーク」で、つくった考えを明確にさせる
- B 展開場面@ ペアトークの実際「ちいちゃんのかげおくり」
- ステップ8 実践3 展開場面A 全体交流を組織し、「深める問い」で解釈を深めさせよう
- @ 「読みの意識の三層構造」を活用して全体での話合いを組織しよう
- A 教師の分析的に聴く力
- B 全体交流に、全員の子を「参加」させるには
- C 展開場面A 全体交流の実際「おにたのぼうし」
- ステップ9 実践4 終末場面 自分の学びを見つめさせるまとめ・振り返りをさせよう
- @ 学習のプロセスと自分の学びを振り返らせる
- A まとめ・振り返りのパターン
- B まとめ・振り返りを書かせる手立て
- C 終末場面 まとめ・振り返りの実際「わかば」「モチモチの木」
- ステップ10 実践5 子どもの学びをフィードバックし、学びへの意欲をさらに高めよう
- @ 「学びの振り返り」のフィードバックの重要性
- A 学級通信によるフィードバック
- B 学級通信によるフィードバックの実際
- 実物資料 学級通信
- 旅に出る青おにの思い
- きつねの気持ち
- じさまって、どんな人物?
- かなしい美しさ
- なぜ人間の親子の場面が必要なのか
- ごんと兵十のくいちがい
- 参考文献
- おわりに
はじめに
「国語を教えるのは難しい」
そんな先生方の声をよく耳にします。この場合の「国語」とは、主に「読むこと」を指しているようです。教科書教材の文章を指導者としてどのように分析し、子どもたちから出される様々な考えをどのように組織して方向付けていけばいいのかが分からない、子どもたちの頭の中の読み方がよく見えないために、結局指導者自身がどう読んだかを解説してしまう、と言います。読み手の解釈に差異が生じやすい文学的文章(物語)を教材にした指導においては、考えの出し合いや教師の解釈の説明で終わる場合も少なくないようです。
社会のグローバル化に伴い、多様で異質な他者と協力して問題を解決していく力の育成が叫ばれる現在、主体的・対話的で深い学びの実現を目指した日々の授業の改善が求められています。
国語科の読むことの授業においても、子どもたちの主体性を引き出し、他者との対話を通して考えを深まらせる学びを実現していく必要があります。そのためには、教師による入念な教材分析や指導方法の構想、授業におけるコミュニケーションの組織が重要ですが、それらの「技術」を身に付けていくのは、なかなか容易なことではありません。単なるテクニックではなく、確かな「技術」にしていくためには、「学び」や「読むこと」などに対する教師の確固たる考え方が必要です。逆に言えば、「学び」や「読むこと」などに対する教師自身の考え方を転換させていくことで、教師の教材の読み方や設定する活動、子どもたちへのことばかけや子どもたちの声の聴き方が変わってくるのです。子どもたちを自覚的な読み手に育てていくためには、まずは教師自身が、自らの指導や読み方に対して自覚的でなければなりません。
本書では、文学的文章(物語)教材における対話的に学び合う読みの授業づくりに向けて、必要な教師の考え方やポイントについて、授業づくりの段階に応じた10のステップで解説しています。
ステップ1と2では、目指す「学び合う読みの授業」のイメージや教師の授業をつくる力について述べるとともに、「読む」ということについて理解を深めていきます。
ステップ3から5では、教材研究について考えます。教材研究とは、「教材の分析・解釈」と「指導方法の構想」です。その中で、子どもたちの思考を深める発問の組み立てのポイントについても述べていきます。
ステップ6から10では、実践場面での具体的な指導について考えます。一単位時間における「導入」「展開」「終末」と「授業後」の場面で、子どもたちの対話を組織して学びを深まらせるとともに、次の学びへの意欲を高める指導のポイントについて述べていきます。
本書は文学的文章(物語)を教材にした読むことの授業づくりについて述べたものですが、子どもたちの対話を誘発して学びを深まらせる点については、他教科に通じる部分も多くあるかと思います。
本書を共感的・批判的に読んでいただくことによって、日々の子どもたちの対話的に学び合う喜びや自己の成長を実感できる授業づくりの一助となれば幸いです。
二○一七年六月 /立石 泰之
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