- はじめに
- Part1 担任になったら押さえたい低学年指導の基礎・基本
- 1 低学年の子どもとのコミュニケーションの基本
- 2 低学年の子どもへのほめ方の基本
- 3 低学年の子どもへの叱り方の基本
- 4 低学年の心をつかむ注目すべき指導場面
- @ 1年生に特有の指導場面
- A 2年生に特有の指導場面
- B 学校生活で意識して気を付けること
- C 学習指導で意識して気を付けること
- D 友だち関係で意識して気を付けること
- E 日常生活で意識して気を付けること
- F 保護者への対応で意識して気を付けること
- Part2 1年生の指導場面 ―困った時の解決策と予防のポイント
- 1 幼稚園や保育園による経験の差がある
- 2 朝,なかなか学校に行きたがらない
- 3 先生にくっついてくる
- 4 ひらがなや数字が読めない
- 5 よく泣く・すぐ泣く
- 6 給食までにお腹がすく
- 7 給食が食べられない
- 8 午後,ねむくなる
- 9 一人で遊んでばかりいる
- 10 集中力が45分間もたない
- 11 一人でテスト(プリント)ができない
- Part3 2年生の指導場面 ―困った時の解決策と予防のポイント
- 1 休み時間のきまりや約束を守らない
- 2 字が雑になる
- 3 1年生と上手に関われない
- 4 1年生を子分のように扱う
- 5 上級生とのトラブルが多い
- 6 急に幼くなる
- Part4 学校生活の指導場面 ―困った時の解決策と予防のポイント
- 1 よくトイレに行く
- 2 おしっこを失敗する
- 3 よく言いつけに来る
- 4 給食を食べる時の姿勢が悪い
- 5 同じことを何度も聞いてくる
- 6 机の中が散らかっている
- 7 生き物をいっぱいつかまえてくる
- 8 文房具が遊びにつながるものになっている
- 9 歯が抜けたと大騒ぎする
- 10 トイレを上手に使えない
- Part5 学習に関わる指導場面 ―困った時の解決策と予防のポイント
- 1 姿勢が悪く,自分の席でじっとしていられない
- 2 ハイハイ!とうるさく手を挙げる
- 3 鉛筆の持ち方が悪い
- 4 声が小さくて聞き取れない
- 5 話が聞けない
- 6 知ってる!とすぐに言う
- 7 だらだらと長く話をする
- 8 語彙が少なく,なかなか文章が書けない
- 9 本をなかなか読まない
- 10 学習についていけない
- Part6 友だち関係の指導場面 ―困った時の解決策と予防のポイント
- 1 すぐに手が出る
- 2 友だちを仲間外れにする
- 3 友だち集団に入れない
- 4 仲良し二人組でしか遊ばない
- 5 すぐにけんかをする
- 6 けんかしても仲直りできない
- 7 勝負にこだわる
- 8 物のやりとりをかくれてやっている
- 9 だめだよ!いけないよ!と注意ばかりする
- 10 特別支援学級の子どもと上手に関われない
- Part7 日常生活の指導場面 ―困った時の解決策と予防のポイント
- 1 準備物がそろわない
- 2 宿題ができない
- 3 箸を上手に持てない
- 4 歩くスピードが遅い
- 5 集団登校の時刻に遅れてくる
- 6 寄り道して帰りが遅い
- 7 子どもだけでコンビニに行く
- 8 近所で遊ぶ態度が悪い
- Part8 保護者への対応 ―困った時の解決策と予防のポイント
- 1 「宿題の量が少ない(多い)」と言ってくる
- 2 「お便りがなかなか届かない」と言ってくる
- 3 テストの点数をとても気にしている
- 4 「友だちの家で遊ぶ時のマナーが悪い」と相談があった
- 5 「学級だよりをたくさん出してほしい」とお願いされた
- 6 クラス替えで「(特定の子どもと)一緒にしてほしい」と言ってくる
- 7 特別支援の相談を受けた
はじめに
「低学年ならなんとかなる」「低学年は大丈夫」……そんな話を耳にしたことがあります。本当でしょうか。かつては「低学年は教師の言うことを素直に聞いてくれる」と言われました。しかし今の時代は違います。低学年だからこそ,好き勝手に自分たちの要求を伝え,本能のまま行動していきます。低学年だからと思って子どもを甘く見てはいけません。特に若い先生が子どもをやさしく大切にするあまり,子どもの要求を受け入れすぎ,学級崩壊状態になってしまうということはよくあることです。たとえ学級が崩壊しなくても,命令・指示,注意・叱責で子どもを動かし,冷たく静かで子どもの表情はみるみる消えて能面のような学級も見ました。その一方で,子どもの表情が活気にあふれ一人一人の輪郭がはっきり映る楽しく暖かい学級があります。低学年の指導は,教師の指導がそのまま子どもらしさを表出してくれます。加えて低学年の時の指導がその後の小学校生活の土台を築いていくのです。
かつては,高学年は男性教師,低学年は女性教師というすみ分けがありました。しかし近年,低学年であっても父性的な力が必要であったり,保護者対応のためであったりと男女バランスから男性教師も低学年担任になる場合が増えました。私は幸い1年生から6年生まで経験させてもらえました。その経験をもとにPart1では,低学年の担任としての臨むべき心構えを書きました。Part2からは,62の事例を通して低学年特有の具体的な場面と対応についてズバリ3つに絞って書きました。先生が困っている状況に応じて読んでいただき,すぐに対応できるようにしてあります。また本来でしたら問題行動が起こらない方がいいのです。そのため各場面には「予防のポイント」を書いてあります。
また,私自身が幼稚園教員専修免許状を有しており幼稚園児と教育実習を経験した経緯もあります。あわせて現在,地元のとある保育園の理事を務めさせていただいています。そのため小学校と幼稚園・保育園の関わりや相違についてもその都度書いています。どのような状態で子どもたちが入学してくるのか知ることができるはずです。
この本の執筆中,ちょうど低学年になるわが子が急な病気のため意識不明の重体となりました。救急車に乗り意識の混濁と低下する心拍数を見ながら人の命の消えゆくであろう様を見ていました。救急治療室に入っている間「生きていてほしい」と願い続けました。翌日,わが子が目を開き私の顔を見て笑った瞬間,生きているだけで充分だよと心から思いました。子どもが目の前にいる幸せを子どもが誕生した時は感じます。でもその幸せはいつの間にか当たり前のようになり,もっともっとと追い立て,不十分さに目をやり叱ってしまう毎日になります。教師もまた,教師になった時は,その喜びや夢,志があったはずです。目の前の子どもと関われる素晴らしさを感じていたはずです。年齢を重ねても常に「あの頃」を思い出し,目の前にいる子どもがそこにいるだけで十分百点満点なのだ,出会った子どもたちにとって価値ある教師になりたい,少しでも子どもの力を伸ばしたい,という心で接したいものです。そのことを思い出させてくれたわが子の出来事でした。
最後になりましたが,本書を書く機会をいただきました明治図書の木山麻衣子様には『小学校高学年困った場面の指導法』出版後すぐに「次は低学年ですね」と声をかけていただきました。途中,わが子の病気のため執筆が遅れた際には何度も励ましのお言葉をいただきました。無事,わが子が元気になると同時に本書も世に出る運びとなりました。記して感謝申し上げます。
2017年7月 /広山 隆行
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