- はしがき
- 学校長 /竹田 正雄
- 序 章 生きかたが育つ授業を求めて
- 第一章 よりどころをたしかめる四年生
- 第一節 ちがいによりどころを見直す子ども
- 一 「野ネズミと家ネズミ」(四年 図画工作)
- 二 物語的表現を造形的表現におきかえる(物語からとりだした場面を造形的に表す)
- ―造形表現のシステム―
- 三 持ち寄ってよさを認め合う
- 第二節 競い合って自己を深める子ども ―第二学期の子ども―
- 一 「自分が求積できる形」(四年 算数)
- 二 直観を足場に経験を整理する
- ―追究のシステムと進化―
- 三 問いかけてよさを認め合う
- 第二章 契機を深め合う五年生
- 第一節 自他の位置を求め合う子ども ―編成替えからの歩み―
- 一 「トライ・バスケットボール」(五年 体育)
- 二 人間としての平等を求める
- 三 共に高め合う社会を求める
- 第二節 みんなが生きみんなで生かし合う子ども
- 一 「ひびきをひろげよう」(五年 音楽)
- 二 「ボギー大佐」
- 三 自己を受けとめてくれる社会に自己をうちだすNa君の追究
- 四 みんなで生かし合う受容・支援社会に生きる
- 第三節 置きかえて意味を深める子ども ―五年生後期から六年生への展開―
- 一 「三人の旅人たち」(五年 国語)
- 二 意味を求める葛藤に育つ
- ―ファンタジックな物語と追究のシステム―
- 三 語り合える人間の発見が授業の展開を豊かにする
- ―社会形成の要因と授業―
- 第三章 立場を認め合う六年生
- 第一節 観念に照らして現実を見直す子ども ―第二学期の六年生―
- 一 「わたしと家族」(六年 家庭科)
- 二 くらしの実際を観念的に意味づけたり反省したりしようとする
- ―追究のシステムと進化―
- 三 立場や考えかたを確かめあい共通の場を求める
- ―社会形成のはたらき―
- 第二節 立場を認め合う子ども ―第三学期の六年生―
- 一 願いと表現のちがいに構想を見直す(六年 図画工作)
- ―「粘土を使って」Sa君の追究のシステム―
- 二 授業過程の沈黙にみられる意識と社会形成
- あとがき
はしがき
ひとりひとりの子どもの考えには、それぞれ根拠がある∞指導は子どもの内なる生きかたの発展・成長を助長し、促進することに他ならない=i『授業の研究』)との教育観に立って、わが校が授業研究にとりくみ出してから、すでに二十九年。その間、時移り、人変わるなかで、わたしたちの先輩が、その時期、その時期において、子どもの生きる姿を描きあげ、問題の究明につとめ、著書も六冊を数えております。
このような歴史を受けついで、現在、わたしたちが自らのうちに実践的に明らかにしたいと考えていることを中心にして、ここ数年間蓄積した考えかたと実践を上・中・下の三巻として編集してみました。
冒頭にも述べましたように、人間としての子どもの成長・発展を願って日々の指導および授業の研究につとめておりますが、いったい「子どもの成長はいかにしてとらえるか」ということが第一の課題であります。今日の教育研究の課題として、教育評価のことは各方面でとりあげられておりますが、わたしたちは、子どもの「追究のシステムと進化」という観点でとらえたいと考えております。
ところで、追究のシステムと進化の過程は、具体的には構想・問題のサイクルだと考えられますが、いったい、子どもは、どのように構想への思考を深め、問題状況をとらえるものであるかということが第二の課題であります。
第三には、「授業」そのもののはたらきというか、あるいはメカニズムというか、とにかく授業ということそのものをどのように解釈するかということであります。いままでも、このことは『授業の研究』以来の課題ではありますが、授業の記録やテレビによる録画等をもとにして解釈研究をすすめますと、ついつい、ひとりひとりの子どもの追究のシステムと、それにはたらいた条件の分析に立ち至ってしまうのでした。そこで、ちょっと乱暴な手法かもしれないのですが、「授業の意味とねらいはどうあればよいか」という課題をたてて、援業におけるコミュニケーションのありかたから、「社会形成の高まり」に焦点をあてて、授業そのものの解釈と解明に努めてきました。
次に、わたしたちが日々行っている授業について反省してみますと、子どもの主体性を尊重すると言いながら、教師がでしゃばりすぎていることを、つねに自戒してきました。それでは、教師主導から脱皮した「子どもがつくる授業」は、どのようにしてつくりだされ、実現できるかというのが第四の課題であります。
これらのことを課題としてとりあげましたのは、現在のわたしたちが、二十九年前からの堀川小学校の授業研究を確かに継承し、将来にむかって発展させ、寄与し、自らの教育観と実践の足もとを確かめたいという心境もはたらいております。まさに、先人、先輩の貴重な考えかたや実践は、授業研究の歴史のなかに、満天の星のように無数に見えております。今、このような課題を立てて自らを顧みますと、無数の満天の星が、僅かながら星座として見えてくるようにも思われます。
さて、「追究のシステム」といい、「社会形成の高まり」といい、たんに一時間や一単元の授業の分析解釈だけでは、その「進化」の姿を描きだすことは困難であります。同人一同、この二年間、各人が「観察対象児」を中心とし、授業記録を累積してその究明に当たりましたが、いざ執筆ということになりますと、資料不足や観察の浅いことを痛感させられました。
もとより、道限りない授業研究の歩みの一里塚でございます。きびしい御批判とあたたかい御指導を賜わりますよう、切にお願いするものであります。
この書物を世に送るに当たり、拙いわたしどもの研究を、理論編と実践編をあわせ上・中・下の三巻として出版することに深い御理解をいただき、快くお引き受けくださった明治図書出版株式会社社長藤原久雄氏、編集部長江部満氏、ならびに嶽崎峻氏に深甚の謝意を表するものであります。
昭和五十九年一月十五日 富山市立堀川小学校長 /竹田 正雄
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- 明治図書
- これは良い本である。直感がそう訴えてくる。復刊を望む。2024/3/11