- はじめに
- 第1章 生徒が探究的に学ぶ 単元設計のポイント
- 1 なぜ生徒は数学を学ぶのか
- 2 生徒にどうなって欲しいのか/生徒はどうなりたいのか
- 3 単元をどのようにつくっていけばよいのか
- 4 生徒は単元でどのように学んでいけばよいのか
- 第2章 「単元を貫く数学的活動」でつくる 新授業プラン
- 1年 正負の数(全27時)
- 負の数を含めても小学校と同様に計算できる?
- 授業1(第11時) すごろくゲーム(減法)
- 授業2(第15時) 乗法の計算の仕方
- 授業3(第25時) 累乗(発展)
- 1年 文字式と一次方程式(全35時)
- 未知の値を含めた数量の関係を式で表したり,数量の関係の条件から未知の値を効率的に求めたりするにはどうすればよいか?
- 授業1(第1時) つまようじの本数(1)
- 授業2(第5時) つまようじの本数(2)
- 授業3(第19時) つまようじの本数(3)
- 1年 比例・反比例(全21時)
- 2つの変数の関係から未知の値は予測できる?
- 授業1(第13時) 反比例の特徴
- 授業2(第18時) ランドルト環
- 授業3(第20時) 初期微動継続時間と震源距離
- 1年 空間図形(全17時)
- 3次元の世界でも2次元の世界と同じ性質が成り立つ?
- 授業1(第4時) 正四角錐の模型づくり
- 授業2(第17時) 三角帽子(課題学習)
- 1年 データの分布と確率(全15時)
- どうすればデータの傾向を読み取り意思決定できる?
- 授業1(第6・7時) Ruler Catch
- 授業2(第10時) 病院の待ち時間
- 2年 文字式(全17時)
- 文字の種類や個数が増えても1年のときと同様に計算できる?
- 授業1(第1時) 2つの円柱(回転体)
- 授業2(第8時) 3つの連続する整数の和
- 2年 連立方程式(全16時)
- 2種類の未知数を含む方程式はどうすれば解ける?
- 授業1(第1時) 佐々立て
- 授業2(第13時) 大人と子供の料金差
- 2年 一次関数(全17時)
- 比例に似た2つの変数の関係から未知の値は予測できる?
- 授業1(第9〜11時) グラフアート
- 授業2(第17時) 富士登山
- 2年 平行と合同(全15時)
- 既知の図形の性質はどうすれば体系化できる?
- 授業1(第2時) 三角形の内角の和
- 授業2(第8時) 星型図形の先端の角の和
- 授業3(第11時) 三角形の合同条件
- 2年 データの分布と確率(全18時)
- 多くの集団の傾向はどうすれば比較しやすい?
- 授業1(第5〜7時) 相手投手の攻略
- 授業2(第16時) ジャンケンさいころ
- 3年 多項式(全19時)
- 数や図形の性質を証明するためにどんな式変形が必要?
- 授業1(第1時) 円周と円周の和の関係
- 授業2(第15時) 連続する整数の平方の差
- 授業3(第18・19時) 道路の面積
- 3年 平方根(全17時)
- 2乗する前の数はこれまでと同様に計算できる?
- 授業1(第2・3時) 正の平方根の乗法
- 授業2(第17時) B判の秘密
- 3年 二次方程式(全16時)
- 2乗のつく方程式はどうすれば解ける?
- 授業1(第2・3時) 二次方程式の解き方
- 授業2(第15・16時) サッカーの試合数
- 3年 相似な図形(全21時)
- 形が同じ2つの図形ではどのような性質が成り立つ?
- 授業1(第7時) 相似の証明
- 授業2(第21時) 校舎の高さ
- 3年 標本調査(全10時)
- 一部のデータから全体の傾向を読み取るにはどうすればよい?
- 授業1(第5時) 標本の大きさと標本平均のばらつき
- 授業2(第8時) 鹿の個体数
はじめに
数学的に考える資質・能力を育成するために,数学的活動を通して生徒が学ぶことが大切です。しかし,中学校現場では,数学的活動を重視した授業をしようと思っても,「時間がなかなか確保できない」「いつどのように実施すればよいかわからない」など,学習指導の悩みは尽きません。
そこで本書では,効果的・効率的に学習指導を進めていくため,生徒に経験させたい数学的活動のつながりを意識して単元を設計して指導する方策として,「単元を貫く数学的活動」を軸に単元モデルと授業プランを提案します。
本書ではまず,各単元の目標を意識し,各単元で学習する内容の本質に生徒が迫るための「単元の問い」を設定しました。そのうえで,単元の中に「小単元の問い」を,小単元の中に「授業の問い」を,入れ子状に設けました。生徒の問いをもとに探究的な学習を円滑に進められるように,伝統的な展開を大幅に組み替えた単元もあります。
また,各単元を「出会う」「深める」「使う」という小単元に分け,それぞれに「小単元の問い」と「授業の問い」を位置付けました。さらに,領域固有の視点と領域横断の視点とで類型化した数学的活動を,1つの単元の中に複数位置付けました。このように,様々なつながりを意識して単元の中に位置付けた複数の数学的活動を,本書ではまとめて「単元を貫く数学的活動」と呼ぶこととし,具体的な授業例を可能な限りたくさん掲載しました。
本書に掲載したこれらの授業例は,問題発見・解決の過程,学習の見通しと振り返り,観察や操作・実験などの具体的な体験,学びのユニバーサルデザイン,ICTの活用を意識しています。各授業を想像していただきやすいように,授業例には発問や板書,生徒の記述,PC画面などを多く載せました。授業例で取り上げた教材は,教科書に載っている伝統的なものや全国学力・学習状況調査の問題をアレンジしたり,真新しいと感じられる教材を用いたりしています。紙面の都合上すべての単元モデルは掲載できませんでしたが,統計教育の重要性が急速に増していることに配慮し,「Dデータの活用」領域はすべての単元モデルを掲載しました。
検討が不十分な点をまだ多く含みますが,筆者のこれまでの実践研究を振り返り,執筆させていただきました。生徒一人ひとりに数学的に考える資質・能力をはぐくむため,本書を先生方の授業設計やカリキュラム・マネジメントの一助としていただけたら幸いです。
最後になりましたが,数学教育学研究の基礎や数学科教師のあるべき姿について,現在もご指導くださっている横浜国立大学名誉教授の橋本吉彦先生,同大学教授の池田敏和先生には,心から感謝申し上げます。また,これまで筆者の授業を何度も参観いただき,単元設計や授業設計について,多くのご示唆をくださっている国立教育政策研究所教科調査官の水谷尚人先生には,深く御礼申し上げます。
平成30年6月22日 /藤原 大樹
コメント一覧へ