クラウド環境の本質を活かす学級・授業づくり
「つながり」の中で個が豊かに伸びるための考え方

クラウド環境の本質を活かす学級・授業づくり「つながり」の中で個が豊かに伸びるための考え方

GIGAの整備を前向きに飼い慣らす

本書の中心は、クラウド環境やICTの活用事例紹介ではなく、それらを前向きに活かすための「考え方」にあります。どのような学級づくり・授業づくりが子どもたちの豊かな学びやくらし、幸せにつながるのか。ともに考えて行きましょう。


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ISBN:
978-4-18-205121-0
ジャンル:
教育学一般
刊行:
対象:
小・中・他
仕様:
四六判 272頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年5月28日

CONTENTS

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 クラウド環境を活かすための前提の考え方
01 「道具」の本質から考える
02 GIGAの環境整備の中核になるのは「クラウド環境」
03 「目的と手段」という関係の大切さと罠
04 授業で使うよりも、教師が校務で慣れるほうが先
05 「授業での効果的な活用法を学ぶ→再現する」ではなく、「試しながらよりよくしていく」
06 クラウド環境でアイデアも情報も共有して『みんなでお得』という『職員集団』に
07 子どもに環境を制約しすぎない勇気・寛大さ・信頼
08 基本は「いつでも携帯・いつでも使える」
09 二項対立の罠に気を付ける
10 「影」に留意する
第2章 クラウド環境を活かした学級づくりの考え方
01 どういう「学級づくり」を目指すことを「よい」とするのか
02 クラウド環境を活かすことができるための学級づくり
03 クラウド環境を学校生活のルーティンに活かす
04 クラウド環境を活かした特別活動@ ―学級活動
05 クラウド環境を活かした特別活動A ―児童会活動・クラブ活動・学校行事
06 日常のくらしづくりとしての多様な取り組み例にクラウド環境を活かす
第3章 クラウド環境を活かした授業づくりの考え方
01 授業でどのような学びの豊かさや育ちを願うのか
02 授業における教師の在り方を考える
03 クラウド環境を国語科の学びに活かす
04 クラウド環境を社会科の学びに活かす
05 クラウド環境を算数科の学びに活かす
06 クラウド環境を理科の学びに活かす
07 クラウド環境を生活科の学びに活かす
08 クラウド環境を音楽科の学びに活かす
09 クラウド環境を図画工作科の学びに活かす
10 クラウド環境を家庭科の学びに活かす
11 クラウド環境を体育科の学びに活かす
12 クラウド環境を外国語活動・外国語科の学びに活かす
13 クラウド環境を「特別の教科 道徳」の学びに活かす
14 クラウド環境を総合的な学習の時間の学びに活かす
15 その他、クラウド環境を授業関連で多様に活かす
おわりに

はじめに

 GIGAスクール構想の推進により、子どもたちの一人一台端末、校内の高速通信ネットワーク、そして先生方の校務も子どもたちの学びもクラウド活用が前提となる環境(以下、クラウド環境とよぶこととします)が、地域によって多少の差はあれどほぼ整備されました。先生方もそれを前向きに捉えて活かしたり、逆に戸惑いや苦手意識をもたれる方もいらしたり、様々でしょう。本書はそのような中、明治図書さんより、GIGAの中核とも言える「学校のクラウド環境整備による授業の変化などをテーマにした書籍を執筆しないか」とのご提案をいただき、執筆したものです。一人一台端末配備はもちろんですが、本書があえて一人一台端末環境と銘打たず、クラウド環境としているのは、GIGAの環境整備によって学級づくり・授業づくりに中核的な影響を与えるのは、クラウド環境だからです。

 はじめにおことわりしておくと、本書は、GIGAスクール構想自体の解説や、クラウド含めICTに関わる細かいテクニックや、その事例紹介が中心の本ではありません。そのような書籍やウェブサイトはたくさん出されていますので、そちらを参考にされるとよいと思います。「こうすれば必ずうまくいく!必勝の○○」のような書とも本書の趣旨は異なります。本書は、クラウド環境を前向きに利用する学級づくり・授業づくりの基盤となる「考え方」に関するお話です。もちろん具体的な例示もしながら説明をしていきますが、それは「本質的に大切なことは何なのか」「私たちは何を目指しているのか」「迷ったときにどのような考え方やおおもとに立ち返るとよさそうか」について、みなさんとともに考えるための材料として示すものです。その例自体をそのままやってほしい、ということではありません(もちろん、お試しいただくのは結構です)。実践やアイデアは、学校現場の先生方が、ときには失敗もあって当然というマインドをもち、子どもたちの実態、先生の個性、学校が採用している端末仕様やアプリなどの様々な状況を踏まえた上で「使えそうな事例」を見つけてまねしてみたり、先生同士で小さなチャレンジを共有し合ったりする中で、どんどん生み出されていきます。毎年様々な学校にお邪魔して授業を参観しますが、豊かな実践が生まれている学校は、ICTが得意な人やクラウドに詳しい人が多いわけではありません。「よくわからないけど便利になるのならとりあえず使ってみよう」と面白がって「試す」雰囲気のあるところばかりです。それこそが重要で、本書はその「よりどころとなる考え方」を学級づくりと授業づくりの面から検討しようとするものです。また、本書があえて「すぐに使える○○集」のような内容に傾斜しすぎないことは、次の二点を意識していることもあります。

 第一点は、教育の不確実性・文脈依存性・一回性の面からです。私の専門は教育方法学で、その中でも授業研究と学級経営研究を関連的・複合的に行っています。自他ともに認める授業マニア・学級経営マニアです(ICT教育に特化した研究者ではありません)。小学校現場で長く担任もさせていただき、多様な実態の学校や地域や子どもたちに接してきました。振り返れば反省点ばかりですが、未熟ながらも培ってきた実践知や感覚と、学術的な検討・知見をかけ合わせながら稚拙な研究を進めるほどに、感じることがあります。それは当たり前のことですが、学校・地域・子どもの実態でいくらでも状況は変わり、「どんな状況にも絶対的に効果的な授業や学級経営の手立てなどありはしない」ということです。これは、共通する原則や一般化できる方法がまったくないとか、指導技術が必要ないということではありません。「子どもを大切にするために、学びを豊かにするために」という姿勢は当然共通するものですし、多くの子どもたちに効果的な指導技術やしかけ(わかりやすい指示の仕方、話の受け止め方、特別な配慮を要する子どもへの対応の仕方、楽しく学べる活動の設定、系統的な指導・支援など)は存在します。その意味で、教育における実証的エビデンスの産出やそれに基づく教育は大切な側面があります。しかしそれは、「多数をならしたときに有効な傾向があるようだ」というだけであり、そぐわない子どももいます。また、子どもたちのくらしや学びは、多様な文脈が絡み合って生じるものです。そしてビースタ(2007)も言うように、教育は「教師の特定の手立て→子どもの変容」という単純な因果関係モデルだけで語れるものではありません。複雑な状況に向き合って日々実践と省察を重ねることでしか教師の力量形成がなされないことも、先生方は実感としてもたれているのではないでしょうか。もし「どんなときでもどんな子どもでも教師がこうやれば子どもは必ずこうなる」という絶対的なハウツーがあるとしたら、それ自体、教師が子どもを意図的に強く操っている証拠であり、使い古された「子どもが自ら学ぶ」とか「主体的な学び」とか「自己決定がある中で成長していく」といった表現とは矛盾する部分が出てくることになります。そうではなく、複雑性に向き合う省察的実践が教師の醍醐味でもあり、教師の専門性はそこにこそあると言えるでしょう。本書はその意味でも、事例の紹介そのものではなく、それを通したクラウド環境における考え方を検討します。それをもとにすれば、具体的な実践はそれぞれの現場の文脈の中で生み出されていくものだと思っています。

 第二点は、第一点に関わりますが、日本国内のICT環境整備の差異性の点からです。本書は、クラウドが生み出す教室環境の変化を前向きに捉え、必要な配慮をしつつ便利に活かすための考え方を検討します。しかし、全国の自治体や学校によって、導入されている端末の仕様やアプリケーションソフト群には差異があります。開発企業によって製品やシステム、サービスの使用体感も異なってきます。更新もされていきます。よって、具体的すぎる事例はどこかの参考にはなるけれど、どこかの参考にはなりづらいということが起きます。そうではなく、どのようなものを導入していても、クラウド活用前提の環境であれば、うまく利用することでほぼ共通する考え方を軸にしようと思っています。ご自身の学校の状況に合わせて具体をイメージしていただけたらと思います。ただし、基本的には教師が校務でも使えるようなアプリを使うことを想定した例が多くなります。その意図も本書を読み進めていくとおわかりになると思います。また、あまりに規制が強い状態ではできないことも紹介しますので、その場合は、別の工夫の仕方や規制自体をどうするかまで含めて、それぞれの自治体や学校でご検討いただけたらと思います。

 学校は、子ども同士はもちろん、多様なひと・もの・こととの「つながり」が生まれることで、学びやくらしが豊かに営まれていくべき場所だと思います。それは、「子どもたち」という不特定多数をひとまとまりに見た豊かさではなく、集団の中で一人一人の子どもが個として豊かに伸びていくくらしや学びであるはずです。それぞれが自分の意思(意志)やペースで何かに没頭することができる。しかし孤立ではなくお互いがそれを支え合うことができる。共通の課題には知恵や力を出し合い協働で解決する。そんな日々です。ただ、この実現が容易なわけではないことは現場の先生方はひしひしと感じておられると思います。だからこそ、直接的・間接的にサポートする環境や道具があれば、便利に活用したいものです。それがクラウド環境を前提とした端末等なのです。

 現在、「教育DX」など、GIGAに関連した学校革新にまつわる「言葉」が多様に飛び交っています。それぞれ意味のある言葉だとは思いますが、あまりに多く浴びせられると、実践現場では多忙感・疲労感の要因にもなりかねません。言葉にまどわされすぎず、どのように考えればクラウド環境が子どもの様々な「つながり」を生み出すことに活かせるのか。子ども一人一人や教師の余裕を生み出すために利用できるのか。学級づくりや授業づくりを通した豊かな学びやくらし、幸せにつながるのか。ともに考えていきましょう。

著者紹介

大村 龍太郎(おおむら りょうたろう)著書を検索»

東京学芸大学 教育学部 教育学講座(兼教職大学院)准教授。

福岡県小学校教諭等を経て現職。日本学級経営学会理事。一般社団法人STEAM JAPAN理事。専門は教育方法学。「教科等固有の価値と教科等横断的・汎用的な価値の両者を重視した学習者主体の授業研究」、「互いの自由と共同体の価値を実感する学級経営研究」を関連的・複合的に研究している。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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