生徒が自分たちで強くなる部活動指導
「体罰」「強制」に頼らない新しい部活づくり

生徒が自分たちで強くなる部活動指導「体罰」「強制」に頼らない新しい部活づくり

好評3刷

インタビュー掲載中

「体罰」「強制」に頼らない「自治」による部活動づくり!

「体罰」「強制」頼みの部活動指導は、もういらない!これからは、生徒が、自分たちで考え、自分たちの力で強くなる「自治」による部活動に。生徒自身が主人公、そして教師も「援助者」として、自分の専門性を活かせる、部活動の指導法を紹介。


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ISBN:
978-4-18-204920-0
ジャンル:
教師力・仕事術
刊行:
3刷
対象:
中・高
仕様:
A5判 128頁
状態:
在庫あり
出荷:
2024年4月26日

目次

もくじの詳細表示

はじめに
第1章 部活動は学校の教育活動なの?〜若手教員・たかし先生の悩み〜
1. 運動部活動って学校の教育活動?
2. 運動部活動は『道徳教育』の場である!?
3. 運動部活動は『競争』を経験する場である!?
4. 運動部活動は『体力を高める』場である!?
5. 学習指導要領を見てみよう!
6. 教職員組合の先生にも聞いてみた!
7. たかし先生の悩みを解決するには
8. なぜ,学校で運動部活動を実施するのか?
9. 教師が結社に関わる理由
10. 学校が関わる「結社」と学校と地域で関わる「結社」
11. 教師として,どのように関わる必要があるのか?
第2章 運動部活動の「自治」を3つの積木で考えよう!
1. 3つの積木で成り立つスポーツ活動
2. 3つの積木を組み立てられるスポーツの主人公に向けて
3. 「自治」はスポーツクラブの栄養素
4. 体罰はスポーツとクラブを破壊する!
5. 「自ら治まる」から「自らが治める」へ
6. 運動部活動の「自治内容」の考え方
@練習・試合
A組織・集団
B場・環境
第3章 運動部活動具体的な指導のポイント
1. 運動部活動で「みんな」を追求する3つの理由
2. 運動部活動で「みんな」を追求する方法
3. 子どもの未熟な意思決定は「成長の伸びしろ」である
4. 「自治」指導のキーワード=これは誰が決めることか?
第4章 自治による部づくりの扉を開こう!
1. どんな部にしたいのか?〜部の方針を決める〜
2. 年間計画(学期計画)を決めよう!
3. 原案を作成する組織をつくろう!
4. 係のリーダーを決めよう!
5. 2人のキャプテンを決めよう!
6. 決定事項は必ず記録!
7. 練習計画を決めよう〜教科書を持って運動部活動に出よう!〜
8. 保健体育の先生の協力を得よう!
9. 「運動部カースト」をぶっ壊せ!
10. 外部指導者を活用しよう!
第5章 「自治」による部運営の振り返り〜「自治」の扉の閉め方〜
1. 振り返るための基本的な観点
2. 「自治」からの振り返り
3. 競技成績からの振り返り
4. 上級生による振り返り〜来年度の運動部員に向けた「置き土産」〜
5. 「負の連鎖」から「自治の連鎖」へ
第6章 「自治」をさらに成熟させるためのアイディア
1. 行事が「自治」を鍛える!
2. 教科外活動・生活指導と関連づけた指導
3. 場・環境に働きかける経験をさせる!
4. 規約をつくろう!
5. クラブ通信で「自治」を励まそう!
6. 運動部活動の教材研究
7. 21世紀型生活体育論の構築〜鍵は「クラブ」単元にある〜
第7章 教師は部活動をやめることができる!?
1. 「自治」指導の扉は全ての教師に開かれている
2. 「自治」を経験できるのであれば種目は何でも良い!
3. たかし先生が野球部をやめられない理由
4. 実力行使という選択肢の問題
5. 民間委託という選択肢の問題
6. たかし先生がやめなくて得をしているのは誰か?
第8章 生徒が自分たちで強くなる!運動部活動指導のチェックリスト
運動部活動の目標論/教育内容論/指導方法論/実践論・評価論
第9章 運動部活動の指導案〜見通しを持つための7つのSTEP〜
おわりに
引用・参考文献

はじめに

 この本は,学校の運動部活動を,「自治集団活動」として指導する方法について記しました。簡単に言えば,タイトルにも示したように「生徒が自分たちで強くなる」ことを,とりわけ重視しています。スポーツ活動において生じる一つ一つの課題を,自分たちで議論し,解決に向けた方針を定め,実際に解決していくのです。そんなことが可能なのかと思われるかもしれませんが,運動部活動は,そのように指導していく必然性があります。そのことを,スポーツとクラブの語源に立ち返って考えてみましょう。

 運動部活動で行われている「スポーツ」の語源をさかのぼると,気晴らし,気分転換,遊びといった意味にたどり着きます。言うまでも無く,遊びや気分転換は,人から強制されてやるものではなく,自分たちで行っていくものです。

 そして,運動部活動は,社会に存在する様々なクラブ活動の一つでもあります。「クラブ」の語源にも,社交(人々の集まり),お金を自分たちで出し合うこと,あるいは規則に基づいて運営される集団といった意味があります。つまり,自分たちで集まって運営していくのがクラブなのです。

 このように考えると,運動部活動に「自治」を求める理由は明らかでしょう。「自治」の無い運動部活動は,スポーツでもクラブでもないのです。その最たる例が,これまでの運動部活動指導で問題にされてきた「体罰」でしょう。教師が先頭に立って,殴って,脅して,生徒を動かす……。そこには「自治」という視点が無いため,スポーツやクラブの指導とは言えません。厳しい言い方をすれば,そのような指導を行っている教師は,運動部活動から「自治」を奪い,スポーツやクラブを破壊しているのです。

 運動部活動というスポーツやクラブを指導する場で,スポーツやクラブを破壊してしまう……。何という矛盾でしょうか。運動部活動における体罰を無くしていくということは,このような矛盾を直視して,本来の意味でのスポーツやクラブの指導に戻していくこと,すなわち運動部活動に「自治」を求めることなのです。

 昨今の社会状況は,それを求めています。スポーツに関わるトピックとしては,2020年に東京オリンピックの開催が決定したことが挙げられます。オリンピックでは,諸外国からアスリート,マスコミ,そしてスポーツ愛好者が集います。その際には,トップレベルのスポーツだけでなく,運動部活動や地域スポーツ活動など,市民レベルのスポーツやクラブの成熟度も見られることになるでしょう。「自治」に基づくスポーツやクラブが成熟しているのか,体罰や暴言に基づく,本来の意味とはかけ離れたスポーツやクラブが継承されているのかが問われるのです。

 さらには,学校教育として無視できないトピックもあります。公職選挙法が改正され,選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられました。国の「自治」に関わることのできる年齢が引き下げられたのですから,学校教育としては,その時までに「自治」を十分に経験させ,意思決定できるような社会の主人公を育てる必要があります。運動部活動における「自治」も,そのような社会の主人公の形成と関わるのです。

 これから紹介していくように,運動部活動には「自治」を経験させる場面がたくさんあります。顧問などで関わることになった先生には,それらの場面を見過ごさずに,子どもとともに運営していくセンスが求められています。運動部活動の指導というと,各競技種目の専門性に意識が向きがちですが,それと同等,あるいは,それ以上に「自治」のセンスが問われるのです。

 「自治」という窓から運動部活動の指導を眺めると,どのような景色が見えるでしょうか。これから,本書で眺めてみましょう。


   /神谷 拓


〈付記〉

 本書は,科学研究費補助金・基盤研究(C)「地域スポーツクラブの教材化―体罰の克服に向けたスポーツ教育学的アプローチ―」(課題番号15K01546,研究代表者:神谷拓)における研究成果の一部である。

著者紹介

神谷 拓(かみや たく)著書を検索»

1975年,茨城県出身。

中京大学体育学部を卒業後,和歌山大学大学院教育学研究科に進学。その後,筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。

博士(教育学)。日本体育学会体罰・暴力根絶特別委員会委員。現在,宮城教育大学准教授。

専門はスポーツ教育学,体育科教育学。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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