- はじめに
- 序章 心にとめておきたいこと
- 第1章 授業に向かう基本姿勢
- 教師自身の数学的な知見を拡げる
- つまずきに直面している生徒への言葉かけ
- 第2章 授業の組み立て方
- 授業の課題はだれのもの?
- 課題を据える
- 発問・指示は授業の要
- 学びの足跡としての板書
- 生徒に与えていい負荷,与えてはいけない負荷
- 個に応じた指導の工夫
- 授業をどのように終えるか
- 学習指導案を書く
- 第3章 授業形態の見極め方と工夫
- 個人追究の時間を保障する
- グループ追究のバリエーション
- 全体追究を発表会で終わらせない
- 言語活動への取り組み
- 第4章 授業を深める指名と発問
- 意図的指名で授業の流れをつくる
- 生徒の疑問や説明をつなぐ発問
- 生徒の疑問点を明確にする発問
- 発表者の意見を真剣に聞く空気を浸透させる
- 第5章 忘れてはならない配慮事項
- 掲示物
- 座席の配置
- 声の大きさ
- チョークの色
- 黒板用の作図道具
- ICT機器
- プリント
- 著作権
- 第6章 学びを深めるノート指導
- ノート指導の目的
- 自分の弱点に対応した参考書をつくる
- 思考の過程が見えるノートをつくる
- 学習感想から授業の充実を図る
- 自己評価カードを真に有効活用するために
- 第7章 授業が楽しくなる予習と復習
- 予習を課すことの意味
- 復習を課すことの意味
- 授業と関連づけた課題を準備する
- 第8章 教材研究の腕を磨く
- 教材研究の在り方
- 数学のアンテナを高く張る
- 工夫を凝らした教材は生徒の心と体を動かす
- 生徒と教師で共に考える教材の魅力
- 日常的な事象を数学の舞台にのせる
- 第9章 全国学力・学習状況調査を授業改善に生かす
- 調査結果から授業改善の的を絞る
- 活用問題の枠組みに照らし授業で扱う問題を検討する
- 現実事象を数学で考察する授業をつくる
- 新たな数学を生み出す授業をつくる
- 記述式問題の問い方を教師の発問に生かす
- 終章 学び続ける教師であること
はじめに
本書の執筆にあたり,
「教師として駆け出しのころ,私はどんな気持ちで教壇に立っていたのだろうか」
と,当時のことを振り返りました。
教師という職に慣れてくると,本来常に意識して大切にしなければならない不易のことまで忘れがちですが,この機会に改めて初心を忘れないことの大切さを感じました。
授業の腕を磨くためには,先輩の先生からいろいろと教えていただきつつ,時としてよい意味で技量を盗むことが必要だと思います。私は,先輩の先生が授業を終えた直後に教室へ出向き,どのような板書をしたのかを参考にしたことが多々ありました。また,先輩の先生が作成したプリントの余りが廃棄されているのを見て,それを取り出し,どのような仕組みのプリントをつくったのかを読み取ろうとしたこともありました。このように貪欲に技量を盗もうとしたことは,私にとって1つの「初心」の表れだったのだろうと思います。
本書を手に取られる先生は,教師という職業に夢と希望を抱き,教壇に立つことを決めて間もない方が多いことと思いますが,夢と希望ばかりではなく,むしろそれを上回る不安も抱えているのではないでしょうか。そうなると,先輩の先生から学ぶこと以外にも,何かよりどころとなる書籍があると心強いものでしょう。本書は,主にそのような思いを抱いている数学の先生を対象に,教師としての心構え,授業において大切にしたいことなどをまとめたものです。したがって,教育実習で学ぶようなことも含まれていますが,基本的なことだからこそ,当たり前過ぎて忘れてしまうということもあると考え,あえて記載してみました。ぜひ一つひとつ読み取ってみてください。
なお,私が教師としての心構えを学ぶうえで,教育者として影響を受けた先生はたくさんいます。中でも,「教師十戒」を説いてくださった毛涯章平先生,座右の書『教えるということ』を書かれた大村はま先生からは,多くを学びました。また,若かりしころ,私の教師としての門出に際し,手紙にて「初心忘るべからず」という言葉を贈ってくださった杉山吉茂先生からは,数学教育の根幹にかかわることを中心に,多大なる影響を受けました。その他,枚挙にいとまがありませんが,ここに心より感謝申し上げるとともに,読者の皆様にも,自分によい影響を与えてくださる先生に出会ってほしいと願っています。
本書の企画から校正,出版に至るまで,明治図書教育編集部の矢口郁雄氏には大変お世話になりました。ここに厚く御礼申し上げます。
2016年2月 /新井 仁
素晴らしい一冊に巡りあえて嬉しく思います。
教師の使命や授業のポイントを再確認できました。
若手教師には貴書と私の指導案や授業を交えて紹介したところ、大変喜んでくれました。
これからも数学教育をはじめ、貴社の本を読み勉強し、力をつけて生徒・若手教師に還元していきます。よろしくお願いします。