子供集団の教育力を生かす2
集団統率・叱り方の原則
向山学級に見られる叱り方の原則

子供集団の教育力を生かす2集団統率・叱り方の原則向山学級に見られる叱り方の原則

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話にならないほどだめな叱り方の典型例を示し、集団の秩序を優先する、集団の中で叱る、短くアッという間に叱り終わる、理由は問わず行動を問題にする等子どもの事実で叱る


復刊時予価: 2,277円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-199402-3
ジャンル:
学級経営
刊行:
12刷
対象:
小学校
仕様:
A5判 120頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 集団を統率できる叱り方・向山学級に見られる叱り方の原理―本物の映像が「叱り方の原理」を教えてくれる
本物の映像を頭の中に焼き付けよう。
本物の映像には、本物の原理が隠れている。
その原理を知って、本物の教育観を確立しよう。
一 原風景・向山洋一氏の新卒日記
二 表の原理・裏の原理
三 「赤鉛筆の対決」(表の原理)
四 「空白の四日間」(裏の原理)
U 集団を崩壊させる叱り方・古い教育文化に見られる叱り方のパターン―駄目な叱り方が「叱り方の原則」を教えてくれる
原理を使いこなすために原則がある。
叱って失敗するのは、大抵が原則をはずしたときである。
駄目な叱り方から、叱り方の原則を導き出そう。
反則× 駄目な叱り方から見えてくること
原則1 集団の秩序を優先する(優しくするのは後からいくらでもできる)
原則2 集団の中で叱る
原則3 短くアッという間に叱り終わる
原則4 理由は問わず、行動を問題にする
原則5 「問題が起きるのが普通」「できなくて当たり前」と思っている
V 事例集・私が実感した叱り方とその思想―腹の底から実感した「叱り方16の事例」
「叱り方」というのは研究授業では見ることができない。
しかし、授業同様、叱り方も数多く見ておくと得だ。
他人の叱り方を数多く知っておこう。
事例1 ガキ大将的叱り方で相手も仲間も納得させる。
事例2 向山流・高段の叱り方 ―― 一度叱ったことで二度叱らない。
事例3 たくましさ・子どもらしさをつぶさずに、繰り返し秩序を教える。
事例4 片方が99%悪い場合でも、けんかは両成敗。
事例5 叱る相手が複数のときはくっつかせない。三メートル以上離して立たせ、孤立させる。
事例6 証拠のないときには対決しない。勝てるときに勝つ。
事例7 教育とは、時間のかかるものである。悪い方に向かっていない限り、待つことも必要だ。
事例8 「子どもが見える」教師になる。「観」に徹し「再現」を課す。
事例9 思春期の特徴を知り、知的に語る。
事例10 正直になる場面をつくり、そのことで損をさせない。
事例11 「確認」という叱り方の秘訣
事例12 ほんの「ちょっぴり」のひやかし・からかいも見逃さない。
事例13 過度な叱り方は叱られていない子の心まで傷つける。
事例14 やったことを言わせる。それについてどう思うか言わせる。それだけ。
事例15 「一切の形式の排除」ができてこそ、本物の叱り方が見えてくる。
事例16 「やる気」で学級を統率する。そのためには、「小さな珠石」が見えなければならない。
あとがき

まえがき

 次にあげる叱り方は、「話にならないほど駄目な叱り方」の典型である。


 @ はじめは優しく接していたのに、問題が起きたときになってヒステリックに叱る。

 A 個別に呼んで叱る。

 B 長々と叱る。

 C 「どうしてそんなことをしたのか」理由をたずねながら叱る。

 D 「できて当たり前」「できないのが悪い」と思っている。


 子どもの力を引き出そうとする者はこのような叱り方をしない。

 次の叱り方を範とする。


 @ 集団の秩序を優先する(優しくするのは後からいくらでもできる)。

 A 集団の中で叱る。

 B 短くアッという間に叱り終わる。

 C 理由は問わず、行動を問題にする。

 D 「問題が起きるのが普通」「できなくて当たり前」と思っている。


 右の叱り方は「子どもの事実」から生まれている。

 それに対して、駄目な叱り方は「古い教育文化」を引きずっているに過ぎない。


 私は、向山洋一氏の学級づくりに憧れる。

 この学級の特長を向山氏は次のように表現する。


  静かではないが、騒がしくしない。

  きちんとしてはいないが、乱れてはいない。

  いきいきとした、自由にあふれるクラス。

  それはまさに、向山学級である。

         (『集団を統率するには法則がある』明治図書)


 新学期。向山氏の学級づくりは、「夢」と「秩序」をつくり出すところから始まる。

 「あなたは将来、何になりたいんですか。」

 「あなたがあなたの夢を叶えられるように、先生があなた方の力を引き出してあげます。それが先生の仕事です。」

 私はその場を目撃したわけではないが、私がイメージする向山学級の出会いは、このようなものだと想像する。

 「お勉強ができないなんて、そんなのちっとも心配しなくていいんです。先生ができるようにしてあげます。」

 このように、子どもたちの「夢」を壊さない。決して、傷つけることは言わない。

 と同時に、組織の仕組み・ルールをつくることもすぐに始める。座席・持ち物・係り・当番などを決め、ルールは必ず全員の前で確認する。安心して生活ができる最低限のシステムを早急につくりあげる。


  集団に「夢」と「秩序」をつくり出す。


 向山洋一氏が学級づくりの初めにしていることは、強いて言えば、「個人を大事にすること」ではない。

 「集団を大事にすること」である。

 これがあって、然るのちに、その集団の中で一人一人が輝き出す。

 「夢」と「秩序」のある集団の中で、はじめて個人は各々の能力を開花させるのである。

 ところが、戦後の教育は、これとは逆のことをしてきた。

 個人を大事にすることにウェイトを置き過ぎて、集団をないがしろにしてしまった。


  集団には教育力がある。


 このことに気がつき、適切な手を打てば、集団は個人の力を引き出す。

 崩れた集団でも立て直すことができる。

 本書は、「叱る」という場面を取り上げ、いかにして「集団の教育力を生かすか」について述べている。

 どのような叱り方が集団を駄目にするのか。

 また、どのような叱り方が集団の教育力を生かすのか。

 そのノウハウを具体的な形で提示している。

 政治・経済・産業・文化。

 様々な分野で、戦後の古い習癖からの脱皮が始まっている。

 学校教育の世界も例外ではない。

 これまでに、ナントナクやり続けていたことが、二十一世紀を前にしてようやく見直され始めた。

 今後、「新旧教育文化の入れ替わり」が急速に進むだろう。

 この変化を感じ取れない教師、ついて行けない教師は淘汰されることになる。

 実直に子どものためを思い、「子どもの事実」から自分の実践を変革できる教師のみが、新しい教育文化を引き継いでいくことになる。

 夢と秩序――この二つが、集団統率の要諦である。

 この二つが、子どもたちの可能性を開花させる。

 子どもたちの可能性――それは未来をたくましく切り拓く力である。

 その力を引き出すことこそ、私たち教師の仕事である。


  二〇〇〇年一月   /水野 正司

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書
    • 集団統率の基礎を学びたい若い教師にとっては、基本文献です。
      2009/10/12K太郎
    •  今までの自分の「叱り方」を反省させられました。
       叱り方にも「原則」があり、「原則」が守られてこそ子どもに反省を促し、学級の秩序が守られるのだと思いました。
      2009/10/8いちご
    •  この本の通りに実践しました。子どもが今までとはまったく別の顔をして反省していました。やはり、子ども集団には教育力があります。子ども集団をうまくいかして叱ることの大切さをこの本で学びました。
      2009/9/23まさお
    • 叱り方、という視点を初めて意識した本です。

      特に、集団を味方につける、という原則を
      学級で何度も追試しています。

      ありがとうございます。
      2008/3/16大貝浩蔵
    • 学級が思うようにならなくなって、本を読み始めました。叱り方、わかっていたようでいて全くわかっていませんでした。集団を預かるものの基本的なスタンス「秩序を守る」ことすら。そして、さらに「生きていく気力」までも意識して叱るすごさ。この本によって、道が拓けそうです。ありがとうございました。
      2006/12/16こうやん

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