- はしがき
- 第1章 個が育つ教育経営
- 第1節 日々のくらしづくり
- 1 子どもの生きる構えと言語生活
- 2 主体性の確立を促す教育課程
- 第2節 子どもと追究
- 1 子どもの生活に息づく追究
- 2 ことばとの出合いに始まる学び
- 3 追究に生きる機能
- 4 個と集団の働きによる自己把握
- 第3節 子どもの解釈
- 1 追究を拓く子どもの様相
- 2 統合的に捉える子どもの事実
- 3 子どもの可能性
- 第2章 追究を拓く授業
- 第1節 ことばによる自立としての学び
- 1 ことばを契機に経験の意味を問う
- 第3学年 算数科「1キログラムの重さ」
- 2 ことばによる思考の深まり
- 第4学年 理科「物があたたまる」
- 3 ことばを意味付けながら自立する
- 第6学年 道徳「友とは―劇『走れメロス』―」
- 第2節 自他との関わり
- 1 人との関わり方を問い直す
- 第2学年 生活科「ほり川ほいくしょでなかよしになろう」
- 2 認め合い新たな世界をつくりだす
- 第2学年 音楽科「ふたりのリズム」
- 3 仲間との関わりを通して追究の構えを深める
- 第4学年 体育科「ファミリーハンドボール」
- 第3節 子どもが目指している世界
- 1 動物との関わり方の違いにこだわる
- 第1学年 生活科「ぼくのうさぎ わたしのうさぎ」
- 2 身近な人のつながりから社会的事象を捉え直す
- 第4学年 社会科「富山市の公共交通」
- 3 狂言を音読しながら伝統的な言語文化に親しむ
- 第6学年 国語科「伝統文化を楽しもう―柿山伏―」
- 第4節 場の働き
- 1 子どもがつくりだすリズム
- 第6学年 総合的な学習の時間「ユネスコスクール わたしができること」
- 2 仲間と求め合う場
- 特別支援学級 自立活動「げき さるかにがっせん」
- 3 創造性のある「間」
- 第5学年 図画工作科「一枚のポスター」
- 第3章 個の可能性を見いだす教育
- 第1節 関わりの中に営む特別支援教育
- 1 特別支援学級における日々のくらし
- 2 子どもたちの関わり
- 3 一人一人に応じた支援
- 第2節 子どもの確かな学力
- 1 確かな学力の形成
- 2 追究単元と確かな学力
- 3 国語の授業
- 4 算数の授業
- 第3節 健康なくらしづくり
- 1 豊かに生きるための食育
- 2 自ら高めていく健康
- 第4章 学校文化の継承と創造
- 第1節 生きがいを求める学校生活
- 1 朝活動
- 2 くらしのたしかめ
- 3 自主活動
- 4 学級・学年経営
- 第2節 子どもの発達と特別活動
- 1 子どもと入学式
- 2 1学年の学級活動
- 3 共にくらしをつくり楽しむ児童集会
- 4 自主性と社会性を育てる校外学習
- 第3節 人として生きる構えを学ぶESD
- 1 多角的に展開する教育活動
- 2 他とのつながりに生き方を学ぶ教材
- 3 共生の中に自己を確立する子ども
- 4 身近な自然や社会との関係に生きる力を育む
- 5 広がるユネスコの取組
- 第4節 地域と共にある学校
- 1 地域の中で育つ子ども
- 2 自己肯定感を育む地域との協働
- 3 子どもの自立を支えるPTA活動
- 4 未来に拓く地域住民との出会い
- あとがき
はしがき
現在,次期教育課程改訂に係る検討が進められており,育成すべき子どもの資質と能力を踏まえた教育目標,内容と評価の在り方等が示されようとしています。教科等の再編の動きを見ても,従来からのものに固執するのではなく,主体として子どもがどう心を働かせ,どのように思考を深めていくのかなどに視点を拡げることが大事であり,教育経営の在り方や教育目標の具体化について振り返り,今後の方向性を明らかにする必要があります。
本校では,長年,子どもが人間としてどのように育つのか,すなわち,個が育つことを教育経営の中核にある課題として取り組み,学校は子どもたち自身の生きる場として共に働きかけ,くらしづくりを通して創造的な雰囲気が生まれる場でなければならないと考えてまいりました。それ故,教科の授業だけではなく,総合的な学習の時間,特別活動や道徳等も含め,全人的な教育を展開する必要があります。こうした教育経営は,子どもたちの自立的な生活創造における「校内活動」と「地域校外活動」が両輪として動き,機能するよう取り組まれています。一人一人の子どもの見方・考え方・感じ方・行い方を育てることを大事にし,そうした教育の目標を端的に「自主創造」と表し,子どもの自己形成につながる創造的な動きとしてその過程を理解し,その成長を図ることを教育の目標として取り組んできています。
今後の教育の在り方や方向性を見据えた時,改めて『子どもの追究を拓く教育』の必要性を痛感します。この実践課題には,子どもを生きる主体として捉え,子どもの言語生活や追究に働くことばに着眼し,自立としての学びを展開することがあげられます。ことばによる端緒として提示し,一人一人が対象への取り組み方や進め方の記録をもち,自覚しながら追究を深めていくことで,ことばが個の言語行為として意味を成し,個の学びが成立するといえます。子どもの変化や進展というものを解釈しようとするのは,一人一人の生き方の深まりを捉え,その子なりの統一を求める姿を何とかして見極めたいからです。その姿には,個性的な思考があり,他の個との絡み,関係性の中で進展していきます。自他との関わりの中で個が強められ,自己を把握することを促していく,研究実践を積み重ねてきました。
「特別支援教育」や「食育」のことにつきましても,今の子どもの状況を踏まえた研究実践であるべきです。どの学級の子どもであろうとも,一人一人の生き方の深まりとしては何ら変わるところはなく,子ども自身が食物アレルギーの問題をくらしづくりとして取り組んでいこうとする時にも家族や教師がその子の前進を捉えて支えることを考え,その変化や進展を解釈することを続けていく必要があります。連携とは,子どもの生き方の深まりを考える通じ合いであり,行動であると考えています。
わたしたちが,子どもの追究を拓く教育として,生き方を深め追究を深めることを目指してきますと,「学校文化の創造」という課題について整理し研究実践に取り組む立場を明確にする必要が生じてまいります。これまでの研究実践の歩みにもありますように,授業を含めた教育活動が学校内外で展開されるところに自立的な生活創造があり,そうしたことが継承され新しくなっているところに学校文化の創造が見られるものと考えております。
ユネスコスクールとしてのESDにつきましても,子どもが人間として生きがいを感じて生活をすること,自分をめぐる自然や文化について考察し,共に生きようと働きかける意味を体得していくことであろうと思います。自身のことだけではなく,異なる考え方・見方をもつ人や異文化に生きている人,また,これからの社会を見ようとして,今ある状況を捉え,省察しながら力強く前進することであります。自他の平等や人権などについても理解を深め,他の人と協力して生活しようとする,すなわち人として生きる構えを学ぶことにつながると思えてなりません。
いずれにいたしましても,子どもの追究を拓く教育といった考え方や研究事例の取りあげ方におきましては未熟で多くの問題があろうかと思います。皆様の厳しいご批判と適切なご指導を賜りますことを切にお願いするものであります。
平成27年3月 富山市立堀川小学校長 /高木 要志男
-
- 明治図書