- はじめに 子どもたちと先生の未来のために
- 第1章 「行動」から「支援」を考える
- 行動を見る時
- 01 解釈やラベルで判断してしまう落とし穴
- 〜「ラベル」をはがして「事実」を見る〜
- 02 困った行動ばかりに注目してしまう落とし穴
- 〜ヒントは「うまくいっている時」にある〜
- 行動の理由を考える時
- 03 行動の理由を決めつけてしまう落とし穴
- 〜「推測」をやめて「観察」する〜
- 04 【解説】行動の前後を整理すると見えてくるもの
- 〜行動が果たした役割〜
- 05 行動の前後の「事実」を見失ってしまう落とし穴
- 〜「評価」する前に「ピース」を集める〜
- 増やしたい行動を選ぶ時
- 06 本人不在で「望ましさ」を定めてしまう落とし穴
- 〜「大人の都合」と「本人の願い」を分ける〜
- 07 行動の前後がはまらない落とし穴
- 〜「何もしない」は「何をしている」時なのか確かめる〜
- 支援計画を組み立てる時
- 08 支援方法が先行してしまう落とし穴
- 〜「使える手立て」より「かなえたい結果」〜
- 09 代替行動を「代わりの方法」にしてしまう落とし穴
- 〜「形」ではなく「役割」を引き継ぐ〜
- 支援計画を実行する時
- 10 よくなった気がしてしまう落とし穴
- 〜「感覚」を「事実(データ)」で確かめる〜
- 11 うまく実行できない落とし穴
- 〜「努力」をやめて「仕組み」に頼る〜
- 支援の成果を確かめる時
- 12 「記録」が続かない落とし穴
- 〜「がんばる記録」から「捨てない記録」にする〜
- 13 【解説】記録を整理すると見えてくるもの
- 〜「評価」の先にある「次の手」のために〜
- 第2章 「支援」を支える「技法」を整える
- 行動を減らす時
- 01 結果を再設定する
- [用語] 消去 消去バースト 強化スケジュール
- 02 代わりの行動を育てる
- [用語] 分化強化 他行動分化強化 ポジティブ行動支援 ラーンユニット
- 行動を教える・増やす時
- 03 行動を分解して教える
- [用語] 課題分析 行動連鎖 チェイニング
- 04 行動するのを助ける
- [用語] 反応プロンプト プロンプト・フェイディング 時間遅延法
- 05 行動を起こしやすくする
- [用語] 刺激プロンプト 動機づけ操作 先行子操作
- 練習と日常をつなぐ時
- 06 社会的な行動を練習する
- [用語] ソーシャルスキルトレーニング 般化の促進 シェイピング
- 自然な場面で行動を育てる時
- 07 日常のやりとりを学習機会に変える
- [用語]日常生活発達行動支援法 フリーオペラント法
- 08 気になる行動が起こりにくくなる環境を整える
- [用語] 環境豊穣化法 非随伴強化法 非随伴逃避法
- 行動を支える仕組みをつくる時
- 09 行動と結果の関係を約束する
- [用語] トークンエコノミー法 行動契約 セルフマネジメント
- 10 個人の支援を集団の仕組みに広げる
- [用語] 集団随伴性 公平性 多層支援
- まとめ
- 引き継げる支援にするために
- COLUMN
- ・「体罰」について考える
- ・スムーズにできることを目指す
- ・個々の特性に応じた関わりと社会モデル
- ・「QOL」について考える
- ・内発的動機づけと外発的動機づけ
- おわりに 子どもの権利を守り豊かな世界を築くために
- 引用・参考文献
はじめに
子どもたちと先生の未来のために
本書は,応用行動分析学(ABA)やポジティブ行動支援(PBS)の立場から,教育の現場で起こる様々な問題に向き合うための考え方と方法を紹介する一冊です。ここでいう「問題」とは,子どもが起こすものだけではありません。子どもに対して起こっていること,支援を考える過程で生まれる迷い,そして先生自身に起こる戸惑いも含まれています。本書は,先生方と一緒に問題を整理し,今までの支援を振り返りながら歩く本です。
行動支援に関するすばらしい書籍は数多くあります。それらに沿って計画を立てることで,子どもたちのための支援の筋道が見えてきます。一方で,現場で私たちが向き合うのは,まだ整理されていない目の前の出来事です。その中で,「何を手がかりに考えればよいのか」「どこで判断がずれてしまったのか」迷いながら支援を続けている人もいるのではないでしょうか。
「ABAの本では,ABC分析がきれいに整っていることが多いのですが,どうやったらそこまでたどり着けるのですか?」
「多くの技法がありますが,どうやって選べばいいのですか?」
本書は,そんな問いから始まりました。
時折,「ABAやPBSが合わない子もいる」と耳にすることがあります。けれども,合わないのは子どもではなく,その場面での支援の組み立て方かもしれません。あるいは,「何のためにその行動を変えるのか?」という問いの途中にいるのかもしれません。
私たち著者は,現職・元特別支援学校の教員です。
日々の実践の中で,数々の「うまくいかなかった経験」に出会いました。
そのたびに考え直し,子どもたちや先人たちに教えられてきました。そうした経験一つ一つが,問題を見直すための大切な手がかりになっています。
本書では,その経験を「落とし穴」という比喩で整理しています。
1章では,子どもの行動を手かがりに,問題を整理し支援を組み立てる過程をゆっくりたどります。少し遠回りに感じられるかもしれませんが,方法を先に選ぶ前に,行動の見方と支援の考え方を整理するための章です。2章では,支援を行う際に役立つ技法を,正解集としてではなく,考えるための視点として紹介します。
まずは,全体をざっと読んでみてください。次に,ご自身の学級や担当の子どもを思い浮かべながら,支援計画を立ててみてください。実践の中で,「あれ?」「なぜだろう?」と疑問に思う場面が出てきたら,そのヒントは2章にあります。巻末の参考文献もあわせて読むことで,内容をより立体的に捉えられると思います。
本書では,比較的取り組みやすい事例から始めます。「現場はもっと複雑だ」と感じるかもしれません。けれども,そこで働く考え方の基本は同じです。重篤で複雑な問題に最初から一人で立ち向かうと,「うまくいかない経験」だけが積み重なってしまうことがあります。もちろん,本書にあることを一度にすべて行う必要はありません。まずは一つの場面から,できる範囲で役立てていただければと思います。
考えてみた。試してみた。うまくいった。その積み重ねが,より難しい場面に向き合う力になります。
支援は,仮説を立て,試し,確かめ,また考え直していくプロセスです。こうした営みは,子どもと先生の生活の質を少しずつ高め,教室の外やその先の社会にまで広がっていきます。本書が,先生方の実践を支え,迷った時にそっと開ける一冊になればうれしく思います。
著者 /津 梓
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明治図書

















