- はじめに
- 1章 合理的配慮を実践するための技法
- 共生社会の実現をめざす
- 合理的配慮のポイントをおさえる
- 事例から合理的配慮のポイントを考える
- 特別支援教育との違いを明確にする
- 「個別の教育支援計画」に記載する
- 2章 合理的配慮をプロセス化する技法
- 子ども・保護者の意思の表明を受ける
- 学校の負担を検討する
- 子ども・保護者と合意形成する
- 子ども・保護者と建設的対話をする
- 校内の基礎的環境整備を進める
- 学校の社会的障壁をなくしていく
- 障害のある子どもの理解を図る
- 組織的に合理的配慮を提供する
- 3章 子どもに応じた合理的配慮の技法
- 視覚障害の子どもへの合理的配慮
- 聴覚障害の子どもへの合理的配慮
- 知的障害の子どもへの合理的配慮
- 肢体不自由の子どもへの合理的配慮
- 病弱・身体虚弱の子どもへの合理的配慮
- 言語障害の子どもへの合理的配慮
- 自閉症の子どもへの合理的配慮
- 情緒障害の子どもへの合理的配慮
- 学習障害の子どもへの合理的配慮
- ADHDの子どもへの合理的配慮
- 4章 試験・テストにおける合理的配慮の技法
- 問題作成や採点について検討する
- テスト・試験の合理的配慮の具体を検討する
- テスト・試験で適切な合理的配慮を行う
- 5章 合理的配慮の素地をつくる技法
- 合理的配慮が当たり前になる「学級」の素地をつくる
- 合理的配慮が当たり前になる「子ども」の素地をつくる
- 合理的配慮が当たり前になる「学校」の素地をつくる
- 6章 合理的配慮の視点による授業改善の技法
- 合理的配慮から「授業のユニバーサルデザイン(授業UD)」へ
- 合理的配慮と「個別最適な学び」をつなげる
- 合理的配慮から「学びのユニバーサルデザイン」へ
- 7章 ケーススタディごとの合理的配慮の技法
- 前例がないからできない?
- 子どもが合理的配慮をためらっている
- 保護者とこじれてしまっている
- 知的障害の子どもが通常の学級で学びたい
- やる気がないだけ?
- 給食が少ないから弁当を持参したい
- 漢字が間違っていても正解にしてほしい
- 別室受験の希望者が多すぎる
- おわりに
- 参考文献
はじめに
合理的配慮は「障害者差別解消法」で規定されているもの,つまり「障害のある人を差別してはいけない」という文脈のものです。
平成28年(2016年)に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が施行されました。この法律では,障害を理由とする「不当な差別的取扱い」の禁止と障害者への合理的配慮の提供が求められています。このときは「努力義務」だったので,まだそれほど意識されていない学校も多かったです。そして,令和6年(2024年)に「改正障害者差別解消法」が施行されました。この改正の大きなポイントは,合理的配慮の提供が「努力義務」から「義務」へと変更されたところです。これにより,学校種や設置者(公立・私立)等を問わず,すべての学校で合理的配慮の提供を行わなければならなくなりました。
さて,学校は「学校教育法」等によって子どもたちに生きる力や学力をつけていく場所です。「障害者差別解消法」で規定されている合理的配慮の文脈と,「学校教育法」等で規定されている学校教育の在り方は,微妙にズレが生じることがあります。このズレを理解していくことが,「学校における合理的配慮」のポイントになります。
本書は,「学校における合理的配慮」について,主に通常の学級に在籍している発達障害の子どもの事例を中心として,なるべく具体的な事例を多く取り入れて解説しています。
特に「学校における合理的配慮」の推進役となる特別支援教育コーディネーターが合理的配慮を技法化できるようにしています。そのため,障害者差別解消法や合理的配慮のエッセンスを意訳している箇所があります。文中で紹介している根拠法令等も併せてご確認いただければと思います。
もちろん特別支援教育コーディネーター以外の方でも,合理的配慮についての理解は必要です。多くの方の「学校における合理的配慮」の理解の一助になれば幸いです。
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- 明治図書