オピニオン叢書50新しい知識観に立つ授業の改革

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新しい学力観が知識を軽視しているのではなく従来の教科教育を中心としてきた学校知の見直しを思考力・判断力・表現力と共に見直す時だと主張。


復刊時予価: 2,783円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-168007-X
ジャンル:
教育学一般
刊行:
2刷
対象:
小・中
仕様:
B6判 192頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
T なぜいま「知識」のあり方を問うのか
一 「知識」を問うきっかけになったこと
二 変化する社会のなかで主体的に生きるために
U 「知識」はどうとらえられてきたか
一 「知識」とは何か―と問われて
二 研究者の分析する知識観
三 わたくしの体験的知識観
V 「知識」の重層化を考える
一 知識にはレベルがある
二 知識はどのように重層化しているか
三 知識の重層化から学びの構造を考える
W 生きて働く「知識」をどうとらえるか
一 知識のもつ機能性
二 変わりうる知識と変わらない知識
三 転移的な要素を具備した知識
四 生活と結びついて生きた知識となる
X 生涯学習時代の新しい知識とは
一 人生の通過点としての学校教育
二 学習の仕方を教えているか
三 社会に出て必要となる知識は何か
四 社会的教養としての知識
Y 子どもの創り出した「知識」から学ぶ
一 子どもの「光る発言」との出会い
二 子どもの創造した「知識」あれこれ
三 子どもの創造した「知識」から学ぶこと
Z 「知識」と思考・表現との関連を考える
一 能動的な営みとしての知識の獲得
二 知識を獲得する基礎的思考力
三 表現することによって知識を明確にする
四 知識の獲得と思考・表現との往復運動
[ 「知識」の獲得と体験的な活動
一 知識と体験とのかかわりを考えるエピソード
二 体験をとおして知識を納得して理解する
三 体験をとおして知識をより確かなものとする
四 子どもは体験の過程で知識を獲得していく
\ 「知識」の獲得と子どもの問題意識
一 疑問や問題は知識獲得の第一歩
二 子どもの知識欲、知的好奇心を満たす
三 知識獲得のエネルギーはどうつくられるか
四 どんな出会いをすると疑問や問題が生まれるか
] 「知識」の獲得と学び方の習得
一 子どもに学び方は身についているか
二 子どもによる知識の獲得を支援する教材の開発
三 「学び方カード」の実際
]T 「知識」の獲得と学びのネットワーク力
一 なぜ、学びのネットワークなのか
二 学びのネットワークを具体的に考える
]U 獲得した「知識」の評価をどうするか
一 高校入試問題作成者の話
二 知識の評価はどう考えられてきたか
三 ペーパーテストの内容構成―「知識・理解」に関する問題の検討―
四 ペーパーテスト観を変える
五 応用場面を提示して知識の獲得状況を評価する
六 「知識」の獲得状況を多面的、関連的に評価する
あとがき/ 参考文献

まえがき

 わたくしは、特に「知識」ということについて深く研究しているわけではない。しかし、この間、「知識」の問題について一貫して関心をもち続けてきた。その問題意識の所在は、次のようなところにある。

 子ども一人一人のよさや可能性を生かし、自ら学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能力の育成を重視する学力観は、教師の指導観や評価観はもとより、子ども観や教材観などあらゆるものの見直しと転換を求め、従来の伝統的な考え方を大きく揺さぶった。この見直しと転換は、「知識」に対する考え方やあり方に対しても、けっして例外ではない。

 わたくしは、「子どもの学ぶ意欲や、考える力、表現する力などの資質や能力の育成を重視する学力観は、知識を軽視しているのか」という質問や指摘をたびたび受けてきた。

 そのような折、雑誌『現代教育科学』(一九九四年一月号、明治図書)で「新学力観は『知識』否定の学力観か」というテーマで小論を書く機会を得た。わたくしは、そのなかで「答えは、もちろん『ノー』である。新しい学力観に立つ教育が、知識を軽視しているわけではない。しかし、その際『知識』をどうとらえるか、知識の役割が新しい学力観に立って検討されなければならない。」と述べ、「知識」のあり方について論及した。

 また、知識は実際の授業において、それを理解する(あるいは獲得する)学習者の意識や思考、活動などと無関係に成立することがないことから、授業構成とのかかわりで考える機会があった。それが「記憶中心の受動的学力は時代遅れか」(雑誌『現代教育科学』一九九七年一〇月号)であった。わたくしはそのなかで、「『知識』獲得型の授業へ」「『学ぶ力』習得型の授業へ」「実践型授業へ」などの授業改善の視点を提案した。

 このことがきっかけになって、雑誌『現代教育科学』で一九九八年四月から一か年間「子どもに獲得させたい『知識』とは何か」というテーマで連載することになった。

 わたくしは、この間一貫して問題意識として強く抱いていたことは、「知識を軽視してはならない。しかし、知識をどうとらえるかが問題だ。」ということであった。すなわち、「知識」を生きて働くものにすること、そのための授業構成を工夫する必要があるということであった。新しい知識観と授業論との関係を考察することであった。

 雑誌『現代教育科学』編集長の江部満さんによると、「子どもに獲得させたい『知識』とは何か」というテーマによる連載の内容は、読者の先生方からも高い関心が寄せられ、「好評だった」ようである。そして、江部さんから、「『知識』の問題をこれほど深く掘り下げた論文はこれまでなかったと思う。連載の内容をベースにしてまとめ、『オピニオン叢書』の一冊として世に問うたらどうか。」という、出版の勧めがあった。

 本書『新しい知識観に立つ授業の改革』は、こうした経緯から生まれたものである。

 本書は、「知識」をキーワードに据え、知識の質(内容)、思考や表現、活動や問題意識との関係、評価のあり方などについて、多面的な考察を加えたものである。

 本書が、生きる力につながる知識を子どもに身につけるために、少しでも参考になれば、これ以上の喜びはない。しかし、まだまだ勉強不足のところがあり、さらに研究を深めていかなければと思っている。いろいろとご指導やご叱正をいただければ幸いである。

 本書をまとめ出版するに当たっては、江部満さんから多くのアドバイスと励ましの言葉をいただいた。心からお礼を申しあげたいと思う。


  平成一一年二月   /北 俊夫

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