- はじめに
- 1章 発問は子どもたちの「学び力」を左右する
- 1 発問が子どもたちに与える影響
- 2 発問は4つのタイプに分かれる
- Type1 確認的発問
- Type2 話題提示的発問
- Type3 活動指示的発問
- Type4 思考促進的発問
- 3 発問タイプの使い分け方
- 4 大切な発問の「振り返り」
- 2章 タイプ別 効果的発問の発し方
- Type1 確認的発問 ―「○○は△△だね」―
- ■「確認的発問」のポイント
- 1 単元全体の計画について確認する
- 2 前時までの授業を振り返る
- 3 学習の目当てを確認する
- 4 学習課題を確認する
- 5 話し合い場面を確認する
- 6 教科書の記述について確認する
- 7 友達の発言内容を確認する
- 8 主張に対する根拠を確認する
- 9 学習の解決方法を確認する
- 10 学習内容を確認する
- 11 学習用語を確認する
- 12 学習のまとめ方を確認する
- 13 学習の成果を確認する
- 14 次時の学習を確認する
- Type2 話題提示的発問 ―「○○なことがあったんだよね」―
- ■「話題提示的発問」のポイント
- 1 時事ニュースを紹介する
- 2 学校での出来事を導入する
- 3 子どもの身近な出来事から提示する
- 4 子どもの作品を紹介する
- 5 教師自身の実体験を引用する
- 6 名言や歴史から引用する
- 7 芸能人・スポーツ選手の言葉から引用する
- 8 学校や地域にあるものを教室に持ち込む
- 9 絵や写真を見せる
- 10 グラフや図を提示する
- 11 歌や曲から導入する
- 12 音を聞かせる
- 13 同僚の教師に語ってもらう
- 14 地域の方に語ってもらう
- Type3 活動指示的発問 ―「○○してみよう」―
- ■「活動指示的発問」のポイント
- 1 音読を指示する
- 2 問題をノートに書き写すことを指示する
- 3 対話を指示する
- 4 全体での話し合いを指示する
- 5 「自分で考える」ことを指示する
- 6 発言を指示する
- 7 「置き換え」や「例え」を指示する
- 8 活動をストップさせる
- 9 教師の話を伝えようとする
- 10 活動を開始する
- 11 教科書に目を向けさせる
- 12 資料や辞書などを手に取らせる
- Type4 思考促進的発問 ―「○○って,どういうことなんだろう」―
- ■「思考促進的発問」のポイント
- 1 複数の選択肢から考えさせる
- 2 否定から考えさせる
- 3 あえて間違ったことを言ってみる
- 4 子どもの発言のずれから考えさせる
- 5 大事な情報をわざと抜いてみる
- 6 順序をバラバラにして与える
- 7 子どもの動きの違いを見させる
- 8 はじめの部分しか提示しない
- 9 自分の考えと相手の考えを比べさせる
- 10 発言内容を他の子に言わせる
- 11 答えを疑う
- 12 間接的に問うようにする
- 13 点から面を見せて体験させる
- 付録
- 「発問」書き留めシートT
- 「発問」書き留めシートU
- おわりに
はじめに
子どもの課題意識を考えずに,何となく発問していませんか?
「ごんを撃ってしまったときの兵十の気持ちは?」「兵十に撃たれてしまったときのごんの気もちは?」
「ごんぎつね」の最後の場面で,必ずと言ってよいほど出される発問です。子どもたちの姿を見てみると,一瞬,静寂の時が流れた後に,3,4人の子どもが勢いよく手を挙げています。いかにも,頭の回転が速そうな子どもたちです。
「兵十は,ごんを撃ってしまって,とても悲しいと思います」まだ当てられていない3人が,前の子が言い終わる直前に「はい,はい,はい」と大きな声を発しながら体を前に乗り出してきています。「兵十は,撃たなきゃよかったと思っているんじゃないかと思います」
先生だけが,うなずきながら一生懸命聞いて,要約したものを黒板に書いています。「みんなすごいね。兵十の気もちに迫れていますね。どれもとってもいいですよ」と言って,次の発問をしていきます。
ここには,子どもの学んでいる姿が見られません。発言している数人の子は,自分の意見が言えればよいのです。前の子が何を言ってもあまり気になりません。大多数の子は,先生の顔色や黒板を見ながら時が経つのを待っています。
どうして,このような子どもの動きが止まってしまっている授業に陥ってしまうのでしょうか。結論から言うと,「発問が吟味されていない」からなのです。指導書に書いてあったものをそのまま使う。この場面は,人物の心が動いているから,ぜひ聞いてみたい。授業前に,必ず教材研究をして臨まれているはずです。にもかかわらず,うまくいかないのは,「子どもが考えたくなる」発問になっているかどうか,考えたくなるためのプロセスを意識しているかどうか,この二つのことが検討されず,ないがしろにされているためです。
発問を,4つの機能を意識して使い,子どもの「学び力」をアップさせる
私は,もっと発問を機能的に分類して,子どもの「学び力」をアップさせるための発問術を,今すぐ使えるように考えてみました。
「学び力」アップのための4つの発問
○確認的発問 ○話題提示的発問
○活動指示的発問 ○思考促進的発問
私たち教師は,日々の授業の中で,必ず一回は発問をします。でも,あまり機能が意識されていないのが現状ではないでしょうか。一年生の国語教科書に出てくる「おおきなかぶ」の物語で考えてみましょう。
(本物のかぶを子どもたちに見せながら)「この白い野菜知ってる?」【話題提示的発問】
「知ってる,知ってる。かぶでしょ」
「今日読むお話はね。このかぶが出てくるんですよ。」「先生が読みますから,よく聞いていてくださいね。」【活動指示的発問】
読み終わった後で,「登場人物を,教えてください。」と聞きます。【確認的発問】
「おじいさん」「おばあさん」「まご」「いぬ」「ねこ」「ねずみ」ここまでは,順調にきます。そして,必ず「かぶ」と言い出す子がいます。
「かぶは違うよ」「えっ,かぶも出てきてるよ」
ここで,中心的な発問をします。「ねぇ,みんな,かぶは,登場人物に入るのかな?入らないのかな?」【思考促進的発問】
子どもたち一人ひとりの中に,課題意識が生まれ,思考を促進させるための発問につなげるために,私たちは,教材分析し,適切な発問を考えていきます。4つの発問を効果的に駆使しながら,子どもたちの「学び力」を飛躍的にアップさせていきませんか。
2014年8月 /藤田 伸一
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- 明治図書