- はじめに
- 第1章 算数授業をつくる「技」を学び使いこなそう!
- 1 「技」の目的
- 2 算数授業づくりの12の観点
- 3 「技」の心を読み取って使う
- 第2章 今日から使える算数授業づくりの技60
- 発問
- 「意味」を考えさせる発問の技
- 「よさ」に気づかせる発問の技
- 「同じ」ことに着目させる発問の技
- 子どもの思考を揺さぶる発問の技
- 「理由・根拠」を引き出す発問の技
- 教材・教具
- 数感覚を豊かにするブロック活用の技
- 偶然を装いながら意図的に使いたい数を選ぶ技
- 苦手な子も巻き込みながら多様な考え方を身につけさせる技
- 素地的な学習活動にブロックを生かす技
- 宿題
- 子どもが喜んで取り組む楽しい宿題づくりの技
- 子どもの追究意欲を掻き立てる技
- 宿題の内容の理解を深める技
- 同じ間違いを繰り返させないようにする技
- 板書
- 授業の流れをより具体的にイメージする板書計画の技
- 「見方・考え方」を豊かにする技@
- 「見方・考え方」を豊かにする技A
- 授業のポイントを子どもに意識させる技
- 子どもの考えから公式をまとめ,しっかり定着させる技
- 授業のポイントをしっかり押さえる消し方の技
- ノート指導
- 最初から最後までノートを大切に使わせる技
- 振り返りがしやすくなるノートづくりの基本技
- ノートに書くスピードをアップさせる技
- 学習感想をレベルアップさせる技
- ノートに自分の心の声を表出させる技
- 学習環境
- 発表をスムーズにする「算数言葉」活用の技
- 学んだことを整理し,「視える化」する技
- ノートを通して自分や友だちの学びを意識させる技
- 教室の中で算数に親しませる技
- 算数的な感覚を豊かにする技
- 問題提示
- 比較することで問題解決の意欲を高める技
- マスキングによって問題に主体的に働きかけさせる技
- 問題文を読みやすくしたり,問題を解決しやすくしたりする技
- 情報を隠すことで「見方・考え方」を働かせる技
- 子どものミスコンセプションを生かす技
- 計算練習が劇的に楽しくなる技
- 自力解決
- 手が止まっている子どもに考えるきっかけをもたせる技
- 小集団での学び合い活動で「困るだけの時間」を解消する技
- 子どもの学力差を埋める技
- 答えを出した子どもが時間を持て余さないようにする技
- 自分の解き方を整理させる技
- 練り上げ
- クラス全体の聞く力を伸ばす技
- 説明する力を伸ばす技
- 苦手な子を授業の流れに乗せる技
- 深めたい考えを自分で選択させる技
- クラス全体で多面的に考える力を伸ばす
- 振り返り・まとめ
- 新しい考え方や発展につながる振り返りの技
- 本質をとらえさせるまとめの技【知識・技能】
- 本質をとらえさせるまとめの技【見方・考え方】
- 問題解決能力を育てる技
- 小刻みな振り返りを促す技
- ペア・グループ学習
- 相手意識をもって自分の考えを伝えさせる技
- わかったことや大事なことを確認させる技
- よい考えを学級全体で共有する技
- ハンドサイン,ミニ先生活用の技
- ペア学習を日常化する技
- ICT活用
- 発表者以外の子どもにも深く考えさせる技
- 教科書をアレンジして子どもの思考をアクティブにする技
- 子どものノートや制作物の価値を共有する技
- タブレットPCを有効活用する技
- 授業力向上につながるデータ保存,活用の技
はじめに
志の算数教育研究会は,毎月集まって日々の実践について議論を積み重ねています。提案の内容は,日頃の実践に基づいたものです。
多くは紙面による提案であり,実際の授業を見て議論するわけではありませんでした。時間をかけて議論をすると,頭では納得するのです。特に,教材についての理解や予想される子どもの反応などは。
しかし,実際に授業をすると,決して予定通りに授業が展開できませんでした。原因は多様でした。指導案などの紙面には表れにくい多くの事柄が授業に関係することがわかりました。
それが本書に表した算数授業づくりの12の観点であり,60の技なのです。
例えば,学習環境や宿題,ノート指導などは指導案には表れません。しかし,確実に授業に影響します。それらの授業づくりに生かせる技を研究し発信することは,とても意義があると考えました。
もちろん,問題提示,自力解決,練り上げ,振り返り・まとめといった問題解決の各様相について,大切だと考える技を考察することにもチャレンジしました。それらの技を考えることによって,自分たち自身も学ぶこと大であったことは言うまでもありません。
算数授業の技について考え続けているときに,『教育研究』という教育誌の編集委員を務めているときにインタビューした野村克也氏の言葉を思い出しました。
野村克也氏は,かつてプロ野球選手として戦後初の三冠王を獲得したり,8年連続本塁打王を獲得したりした大選手です。さらに,監督としても大活躍し,多くの名選手を生み出した人でもありました。
だから,どのように選手を育成するのか,指導法を聞きたいと思ってインタビューに臨みました。
ところが,
「どのような指導をされてきたのですか?」
という質問に対して,意外な答えが返ってきました。
「技術は最後でいい」
とおっしゃったのです。
プロ野球選手は職人のようなものです。打ち方・投げ方・守り方のテクニックなど技術論についていかに指導するかを聞けるものと考えていました。徹底的に教え込むのかと思っていましたが,野村監督の教育論は違っていました。
野村氏は,次のような言葉を述べられました。
「いくら技術を磨いても,人間としての心が間違っていたり,考え方や取り組み方が間違っていたりしては,ろくな仕事はできません。心が変わらなければ,成長も進歩もあり得ないのです」
算数授業づくりの技について論じている本書の前書きにふさわしくないエピソードかもしれません。しかし,技とか技術を考えるときに最も忘れてはならないお話だと思い,あえて記しました。
私たちが相手にするのは子どもです。子どもの健やかな知的成長,人間的成長を願う心を胸に,謙虚な気持ちで本書の60の技を提案させていただきます。
本書を刊行するにあたり,明治図書の矢口郁雄氏に大変お世話になりました。ときどき月例会に出席していただき,励ましの言葉をかけてくださることで,研究会の士気が上がりました。心からお礼を申し上げたいと思います。
2018年1月 /盛山 隆雄
明日からの授業に使えます!
コメント一覧へ