- 先生も学級の子どもたちも生き生きするために /坂本 光男
- T いま親には不安がいっぱい
- 一 子育てで悩む親たち
- 二 学力問題で悩む親たち
- 三 先生への期待は大きい
- U 親と心を結び合うには
- 一 まず教師が心をひらく
- 二 子どもの事実を率直に語る
- 三 子どもの可能性を説く
- 四 親にも共同の指導者になってもらう
- 五 学級懇談・家庭訪問が大切
- V 学級懇談のやり方
- 一 一年間のプランをたてる
- 二 安心を与える雰囲気づくり
- 三 学級通信で予告を
- 四 司会はまず自分で
- 五 学級懇談会での司会のイメージ、そのポイントは?
- 六 いつも具体的資料を
- 七 教訓をひき出す懇談会に
- 八 子どもも参加させることもある
- W 家庭訪問のやり方
- 一 行事としての家庭訪問
- 1 一年目の家庭訪問
- 2 二年目の家庭訪問
- 二 いつでも必要なとき訪問を
- 三 子どもが休んだときがチャンス
- 四 親の苦悩に共感を
- 五 子どもの小さな進歩をほめながら
- 六 どうすればよいかを一緒に考える
- 七 親から学び先生からは提言を
- X 指導のポイント七ヶ条
- 一 学級通信が心のかけ橋
- 二 忙しくてもすぐ話し合いを
- 三 真実を話してこそホンネが聞ける
- 四 電話よりも家庭訪問を
- 五 親を学校に呼びつけるのは考えもの
- 六 親の身の上相談も大切に
- 七 困難な問題は近所の人の協力で
- 解説・父母の支持・信頼は具体的なことから /坂本 光男
先生も学級の子どもたちも生き生きするために
学級は、子どもたちの学校生活の拠点です。いわば、家庭と同じところです。
したがってこの学級が、楽しく充実した場であれば、子どもたちは希望と意欲をもって生活にも学習にも頑張ります。が、その学級に充実感がなく、子どもたちの要求を満たすところでなければ、当然に“荒れた子どもたち”になります。それは崩壊した家庭に、非行・問題行動の子が多く出てくるのと同じでしょう。
こうした意味から、いまは学級づくりがとても大事になってきています。
とくに最近は、幼児期から友だちと遊ぶことが少なく、家庭でも一人っ子、二人っ子といった少ない兄弟(姉妹)で育つ子が大半です。そのために集団での行動や体験がきわめて不足し、人と人との交わり方や集団の中での個人のあり方について、未成熟な子が数多くみられます。
実はこのことが、いじめ問題を多発させたり、登校拒否・不登校の子どもの増加をもたらす要因の一つとも考えられます。
そればかりではありません。今日の子どもたちは、いわゆる。“すなおな子”“よい子”と思われる子どもたちにも、いちじるしく活力が衰退している。だから「生きる力を弱めつつある」とさえいわれているのです。
こうした子どもたちの危機的状況をみるとき、学級づくりは最も重要な指導課題です。とりわけ学級を民主的な集団に育てる“学級集団づくり”が、いちだんと強められなければなりません。
そこでこのブックレットは、今日のそうした指導課題に鋭く応えようと編んだものです。
またその内容は、学級担任として連日奮闘をつづける若い先生たちにすぐ役立ち、それを実践することによって先生も学級の子どもたちも生き生きするように、新鮮で具体性のあるものとしてつくり上げました。その点では、
〈先生と子どもたちに希望と勇気をあたえるブックレット〉
ということができるでしょう。
さらに筆者には、それぞれ教育現場で先進的実践を展開している人たちに委託しました。また、それぞれの個人著書というかたちにもしました。それというのも、単に学級集団づくりの方法を説くだけでなく、実践家としての魂をもこめて、読者に指導のあり方を示していただこうと考えたからです。
その意味でいえば、このブックレットは一般にあるブックレットとちがい、筆者の血脈のかよった類例のないブックレットということができるでしょう。
ともあれ、子どもたちは先生からのすぐれた指導を求めています。それによって、未来に向かって力強く伸びようと期待しています。
したがってこのブックレットが、先生たちの指導力の向上に大きく役立つことを期待しつつ、編者は確信をもってみなさんの手元にお届けいたします。
一九九〇年一月十五日 /坂本 光男
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- 明治図書