中学校・明るい学級づくり4
中学校学級担任のトラブル対策事例

中学校・明るい学級づくり4中学校学級担任のトラブル対策事例

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教師・生徒・家庭のそれぞれのかかわりの中で生ずるトラブルを、教育効果を高める方向でどう克服するか。そのノウハウをベテラン教師が示す。


復刊時予価: 2,728円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-133011-7
ジャンル:
学級経営
刊行:
2刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 184頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

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まえがき
序 章 学級でなぜトラブルが起きるのか
§1 どのようなトラブルがあるか
(1) 生徒間のトラブル
(2) 教師と子どもとのトラブル
(3) 教師と保護者とのトラブル
(4) 教師相互のトラブル
§2 なぜトラブルが起きるのか
§3 トラブル防止の対策
@ 学校で起こりやすいトラブルについて理解を深める
A 温かな人間関係を育てる
B 教師や学校への信頼感を高める
C 学校の指導体制を整える
D 保護者,PTAとの連携を密にする
E 教師の指導力を高める
F 地域や関係機関との連携を深める
第1章 学級でのトラブルを防ぐには
(1) 学級を見直す
(2) 指導を充実する
(3) 保護者との連携に努める
第2章 学級でのトラブルが起きたらどうするか
§1 生徒同士のトラブル
1 陰湿ないやがらせに女ボスA子もさすがに悩む。(復讐的ないやがらせ)
2 O男がP夫にお金を貸したが返してくれない。(金銭の貸し借り)
3 盗みの前歴のあるU子はクラス内の盗難で疑われる。(クラス内の盗難)
4 T夫への反感がカンニング指摘で仇をとる。(カンニングで疑われた子)
5 ピアノのレッスンに行くため,放課後の係活動に参加しない時がときどきあり,そのため,係の仲間から強く批判され,登校拒否を起こした。(学校生活と習いごとの両立)
§2 他学級他学年の生徒とのトラブル
1 仲の良いK男の悪口をD組の生徒にいわれたので,怒ったS夫は話をつけようと押しかけていったが,かえって相手になぐられて前歯を折られた。しかし,先に手をだしたのはS夫だということで,補償もこじれている。(けんかとけがの補償)
2 S子はD組のR子とけんかをし,これが両組の女子同士のけんかに発展しそうである。(個人間からクラス間の対立へ)
3 サッカー部の3年生は部の秩序を保つためと,下級生につらくあたる。たまりかねた1年生が退部を申し出てきた。(クラブ内の上下関係)
4 E子は1年生のQ子を舎弟あつかいしている。Q子はE子から離れたいと悩んでいる。(上級生との主従関係)
§3 学級担任または教科担任とのトラブル
1 A子はひがみっぽい性格で,学級担任のさりげない注意でも,自分ばかり注意すると教師をうらんでいる。(生徒へのしかり方)
2 担任のT教諭は時々学級で生徒への大事な連絡を忘れることがある。そのことで学級の生徒は担任に不信感を抱いている。(担任への不信感)
3 英語科の教師は遅刻,早退,休暇が多い上に,教え方が乱暴でわかりにくく,板書が乱雑,もう教わりたくない。授業に出たくないという生徒が多数出てきた。(教え方への不満)
4 教師の努力にもかかわらず,学級がまとまらない。授業もうるさく聞きとれないこともあるため,生徒からの不満がたえない。(指導力不足のフォロー)
5 教材費が盗まれてしまったが,学級担任がきちんと調査してくれなかった。(盗難事件の処理)
6 試験の点数はよいのに通信簿の点数が悪い。先生は態度点が入るというが,納得いかない。えこひいきがあるのではないか。(学習態度の評価点)
7 音楽の定期考査で得点は平均点近くとれていたのに評定は2だった。3が平均なのに2に落ちるわけがわからない。(実技テストの評価点)
8 先生はなにかというとA子をひいきし,A子のいうことはすぐ取り上げる。私たちのいうことはなかなか聞いてくれないのに,と,学級の女子の間に不満がうっせきしている。(えこひいきへの不満)
9 清掃当番をなまけたので,男子3人が,担任からそばにあったほうきで頭をたたかれた。なまけたのは悪いが,ほうきでたたくのはもってのほかと教師の体罰への不満。(体罰のとらえ方)
10 担任の先生は心障児A子の世話を生徒になにかと命じてばかりいる。わたしたちだってやりきれないと不満。(心障児の世話)
§4 担任と親とのトラブル
1 子どもがけがをしたのに担任の先生は医者につれていってくれない上に,親にも連絡さえしてくれなかった。不親切だ。(事故後の処置)
2 問題があるので話し合いたいから学校に来て欲しいと親に連絡してみたが,逆に親から学校での指導に問題があるのになぜ親がいちいち行かなければいけないのかと反論してきた。(問題生徒の家庭への連絡)
3 学級で我が子がいじめられているのに,担任は無視して何もしてくれない。子どもは毎日苦しんでいるのに……。(いじめの発見)
4 自習時間中に持参したエアガンを持ち出し発砲。壁に当たった弾がはね返って友だちの目にあたる。親は学校にけがの治療費と後遺症の補償をしろと言ってきたが……。(けがに対する学校の責任)
5 廊下ですべってころび頭を打った。その時の処置のしかたに不満があると親が学校に苦情を……。(事故後の処置)
6 内申書の成績が,3年1・2学期のテストの成績に比較して著しく低い。2学期だけの点数ではないと聞いているが,納得がいかない。(実技点と内申書)
7 偏差値が水準に達していないと,志望校の変更をすすめる担任に対し,どこを受けようが自由ではないかと親子ともども強く反発している。(成績と進路の問題)
8 もう学校の授業に期待しない。塾の先生も,学校の授業では力がつかないと批判している。テストの日以外には,適当に休ませたりもする。親子で学校を軽視し,批判する。(授業と受験勉強)
9 部活動が熱心すぎる。日曜日や土曜日の午後は家庭に子どもを帰してほしい。(勉強と部活動の両立)
10 頭髪の長さについて,必要以上に干渉しすぎる。親としても家の子の個性には長髪が合うと考えている。(細かすぎる校則)
11 親の信教上の理由で,体育の格技を受けさせたくないという。(信仰と教育活動)
12 子どもにも嗜好がある。給食を残さないように強制し,また,残したといって罰をあたえるのはどうか。(給食の教育的意義)
13 きちんと使いもしない教材をたくさん購入させる。会計報告も不十分である。(教材使用と教材費)
第3章 家庭や校外でのトラブルが起きたらどうするか
§1 親と子のトラブル
1 両親の不仲が原因となり,生徒の学習や生活等に乱れがみられる。(家庭問題をもつ子への指導)
2 感情的に厳しく指導しすぎる親。そのため,子どもは外でその腹いせをする。(家庭教育と非行)
3 「あのグループとはつきあうな」,「あの子とは遊んではいけない」等,親が友人の悪口を言うことが非行の原因となる。(親の過干渉と非行)
§2 子ども同士のトラブル
1 「いじめられっ子」が「いじめっ子」になる。(弱い者いじめにはしる)(復讐的ないじめ)
2 つっぱりグループから抜けようとするが,仲間からの仕返しがこわくて抜けられず,逃げまわっている。(非行先輩との交際の断ち方)
3 友人から万引きに誘われて一緒に行動し,それ以来おどされながら万引きをくり返している。(非行仲間からの絶縁)
§3 親同士のトラブル
1 自分の子どもの非行化の原因を他の子の責任のように考え,相手の親を非難する。(責任転嫁する親)
2 両親が夜間勤務のため,子どもが友だちを家に呼ぶ。「寄こしてくれるな」「いや,お宅の子が呼ぶのだ」と親同士のいさかいとなる。(責任転嫁する親)
§4 地域住民と子どものトラブル
1 登下校中の生徒のマナーの悪さが原因となり,地域住民から苦情が持ち込まれる。(校外生活の指導)
2 近くの駄菓子屋へ数人でおしかけ,買うふりをして万引きをしたり,店の主人が年寄りなのをいいことにいやがらせ等の行為をくり返す。(悪質な万引き)
3 からかうと,むきになって怒る老人がいる。それがおもしろさに生徒は登下校時,悪口をいって怒らせ,おもしろがっている。(人権意識の不足)

まえがき

 トラブルなど無いにこしたことはない。しかし,現実にはさまざまなトラブルが学校に発生し,その処理にとまどったり,悩んだりすることが少なくない。第三者から見れば,たわいもないようなささいなことに,深刻に悩むということもあろう。時には,本当は大きな問題であるのに,それに気づかず,そのため,問題の解決を一層難しくしてしまうということもある。

 本書は,実際に学校で発生したトラブルの事例を取り上げ,その解決の方法を考察してみたものである。生徒相互のトラブル,教師と生徒のトラブル,教師と保護者のトラブル,教師相互のトラブルなど,多くの学校で予想されるであろう事例を選び,その時の対応を紹介してみた。

 トラブルは当事者の性格や相互の信頼関係の程度,地域の風習など,さまざまな条件の中で,同じような原因や内容であっても,問題視する度合いが異なる場合がある。事例にあげた解決策は,どの学校のどの事例にもあてはまるとは言い難いが,その解決への糸口を見出すのに役立つであろうと考えている。

 若い教師や経験の浅い教師ほど,トラブルヘの対応に悩み,とまどうことが多いであろう。本書の事例とその解決策が,学級での指導や職員室での対応に役立つことができれば幸いである。さらに,本書の大きなねらいは,トラブルが起こったらどうするかということもあるが,このような事例を学ぶことによって,同じようなトラブルが起きないよう,事前に指導対策を講ずることに役立つことを願っているのである。

 反面教師という言葉があるが,トラブルを体験することによって,教師としての指導力が高まるということがある。しかし,トラブルによって人間の心が傷つくことは,取り返しのつかない悲しみを心に植えつけてしまうことになる。「雨降って地固まる」というように,後の学級経営や人間関係の改善に役立つ場合も少なくはないが,しかし,トラブルがすベてそのようにうまく指導に生きるわけではない。そこで,事前の予防策は教師の指導の力量として,期待されることになるのである。

 本書の事例を参考に,学校・学級の実態に即した指導対策を立て,学級の経営にあたられることを願っている。しかし,つきつめて考えてみれば,特効薬のような指導対策など,簡単に見つかるものではない。教師相互の協力,生徒理解,望ましい人間関係の育成,保護者との連携など生徒指導や望ましい人間関係の基本的なことばかりである。

 ところで,難しいと思ったトラブルでも,教師も一人の弱い人間としての存在に気づくと,思わぬ視点からトラブルの真の原因が見えてくることがある。トラブルを冷静に見つめる客観的な態度はもちろん基本ではあるが,それをふまえて,さらに当事者の立場に立って考えることが強く要請されるゆえんである。

 本書をトラブルの予防指導に役立てるためには,本文中に紹介した事例を,さらに,各学校の実態に即した事例に再構成して,例えば,事例協議会のような形式で校内研修を計画されることをおすすめしてみたい。そのような努力が,トラブルの発生を防止し,また,全教師の一致協力した指導体制で,その解決にあたることができると思うからである。価値観の多様化した昨今の世相の中にあって,複雑なトラブルであればあるほど,教師の協力体制がなくてはその解決は難しい。

 本書は校内研修のための事例提供として,また問題解決の手引きとして,そしてまた若い先生方の間接体験として,有用なものと信じている。多くの先生方のご活用を心からお願いする次第である。


  編 者

著者紹介

大島 真(おおしま まこと)著書を検索»

東京都新宿区立西戸山中学校長

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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