学校が動き出す ミドルリーダーの半径5メートル改革

学校が動き出す ミドルリーダーの半径5メートル改革

新刊

総合4位

「どうせ変わらない」を、半径5メートルから変える。

仕事を分類し、提案と交渉で動かし、職員室の空気を整え、若手を育てて守る。ミドルリーダーとは役職ではなく、自覚と行動で担う「名前のない仕事」です。半径5メートルの笑顔と余白を増やし、「どうせ変わらない」を乗り越えるための実践知を凝縮した一冊。


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PDF
ISBN:
978-4-18-131624-2
ジャンル:
教師力・仕事術
刊行:
対象:
小・中
仕様:
四六判 224頁
状態:
在庫あり
出荷:
2026年10月22日

Contents

もくじの詳細表示

プロローグ
序章 なぜ「働き方改革」はうまくいかないのか
1 「働き方改革」はなぜ必要なのか
2 働き方を四象限で分析する
3 目指すのは「働かない学校」ではない
4 「どうせ変わらない」の壁を破れ
[Column 半径5メートルの「生の声」] 働き方改革の原動力は「働きたい改革」
第1章 ミドルリーダーの役割
1 余白なき学校で、誰が若手を育てる?
2 ミドルリーダーは「役職」ではなく「自覚」
3 教わったように教えない
4 OJTは「任せる」前に「見せる」から始まる
[Column 半径5メートルの「生の声」] 自分の軸足をぶらさない
第2章 仕事を分類する
1 教務主任だけが知っている「学校の裁量」
2 ゼロリスク思考を捨てよ
3 やめられない仕事は「向き合い方」を決める
4 やめられる仕事は「合意形成」で決まる
[Column 半径5メートルの「生の声」] 「根回し」が嫌いだ
第3章 提案と交渉
1 提案とは「願い」ではなく「責任」
2 職員室の対立は「正義 対 正義」
3 交渉力の正体は「信頼貯金」
4 提案を通せる人 通せない人
[Column 半径5メートルの「生の声」] 「業者の方ですか?」
第4章 職員室の空気づくり
1 職員室の空気は自然発生しない
2 人間関係は、自分のふるまいを映す鏡
3 同僚性は「仲のよさ」ではなく「支え合う力」
4 全員が3月まで完走できる職場をつくる
[Column 半径5メートルの「生の声」] 「チーム○○小」であるということ
第5章 若手育成
1 若手を育てることが、最大の働き方改革
2 若手の授業力は、職場の対話で伸びる
3 助言は「今の正解」ではなく「未来の武器」を渡す
4 若手が自走するために、再現性を磨く
[Column 半径5メートルの「生の声」] ほしがってくれる若手
第6章 若手を守る職場づくり
1 子どもとの関係づくりで孤立させない
2 職員室の「普通」から守る
3 保護者対応の最前線に一人で立たせない
4 若手を守ることは、学校の未来を守ること
[Column 半径5メートルの「生の声」] チューニングの大切さ
第7章 自分を育てる目標設定
1 目標は自分との小さな約束
2 SMARTゴールで考える
3 「立場」で働くと、見える景色が変わる
4 積み重ねることが武器になる
[Column 半径5メートルの「生の声」] あれ? 思ってたのと違った
第8章 見通しを示す
1 見通しがあるだけで、職場は安心する
2 週案簿は、提出物ではなく「見通しの道具」
3 学年経営方針がチームの迷いを減らす
4 カリキュラムデザインは、学びの設計図
[Column 半径5メートルの「生の声」] 「自分らしさ」の正体
第9章 学校の当たり前を疑う
1 誰のためか 何のためか
2 なくしたら本当に困るものだけを残す
3 同じ目的なら、別の方法でいい
4 バラバラの仕事は、一元化できないか
[Column 半径5メートルの「生の声」] 楽しまなくちゃ意味がない
第10章 勇気ある決断と覚悟
1 改革には「最初だけ大変な仕事」がある
2 最初に汗をかけば、あとで職場が楽になる
3 一度振り切ってから調整する
4 満場一致を求めない
[Column 半径5メートルの「生の声」] 過去と他人は変えられない
おわりに
参考文献一覧

プロローグ

 深夜、静まり返った部屋に、小さな泣き声が響く。隣で妻が起き上がる気配がする。布団が擦れる音。長男を抱き上げ、小さくあやす声。

 私は目を閉じたまま、心の中で祈っていました。

 「頼む。今日はすぐに寝てくれ」

 明日も授業があります。早起きしなければなりません。教科書すら開けない日もありました。だから、今日は眠ってほしい。

 そう願うたびに、もう一人の自分が問いかけます。

 「お前はそれで、本当に父親なのか」

 教員2年目、私は父親になりました。生まれたばかりの長男は、この世のものとは思えないほど愛おしい存在でした。そして、およそほとんどの父親がそう思うように、例外なく私も小さな手を握りながら、心に誓いました。

 「この子を幸せにしたい」

 けれど、父親になった実感だけは、なかなか湧きませんでした。家に帰れば、一日中長男と向き合った妻がいます。長男が泣けば、妻が抱き上げる。私は、その姿を見ながら何もできませんでした。

 あんなに憧れていた教師という仕事を、夜泣きする長男から逃げる言い訳にしている。そんな自分が、たまらなく嫌でした。仕事は好きでした。もっと授業をよくしたい。もっと教材研究をしたい。もっと子どもたちの力になりたい。その思いに嘘はありません。だからこそ苦しかったのです。

 ある夜、長男の寝顔を見ながら、ふと心に浮かんだ言葉があります。

 「この子を幸せにできないのであれば、誰を幸せになどできるもんか」

 その日から、私の問いは変わりました。「どう働くか」ではなく、「誰を幸せにしたいのか」我が子を思う気持ちは、やがて子どもたちへ、同僚へ、学校へと広がっていきました。

 振り返れば、私が見直したのは働き方ではありません。生き方だったのだと思います。あの頃の私に、今ならこう伝えます。

 その罪悪感は、無駄じゃない。その葛藤があったからこそ、お前は本当に大切なものを見失わずに済んだ。だから、悩め。葛藤しろ。それでも、「なりたい自分」から目を背けるな。悩みのど真ん中を、まっすぐ突っ切っていけ。

 本書は、その問いを抱え続けた、一人の教師の記録です。


 残念ながらこの本は、気軽に読める種類の本ではないかもしれません。ここに書かれていることは、今日からすぐに使えるテクニックでもなければ、誰にでも当てはまる正解でもありません。むしろ、読み進めるほどに立ち止まりたくなる場面があるかもしれません。

 「本当にそうだろうか」

 「自分ならどうするだろうか」

 そんな問いが浮かんできたなら、むしろ私は嬉しく思います。学校には、「当たり前」がたくさんあります。長い時間をかけて受け継がれてきたこと。

 誰かの善意から始まったこと。子どもたちのためを思って続けられてきたこと。

 だからこそ、それらを見直すことは簡単ではありません。当たり前を疑うということは、これまで積み重ねてきたものを否定することではないからです。むしろ、「子どものため」という正しさと、「先生のため」という正しさ、「学校のため」という正しさがぶつかり合うことでもあります。そこには迷いが生まれます。摩擦も生まれます。

 時には、「なぜ、わざわざ波風を立てるのか」と言われることもあるでしょう。私自身、その問いから何度も逃げたくなりました。

 それでも、問い続けることをやめませんでした。

 なぜなら、学校は「変えること」が目的ではなく、「よりよくすること」が目的だからです。

 そのためには、まず立ち止まり、「誰のためなのか」を考えなければならない。

 本書でお伝えしたいのは、働き方改革の方法ではありません。もっと手前にある、「判断の基準」です。続けるものは何か。やめるものは何か。引き受けるものは何か。誰のために、その判断をするのか。

 その問いを、私は「半径5メートル」という言葉で考えてきました。目の前にいる子ども。隣で働く同僚。支えてくれる家族。そして、自分自身。

 その人たちが笑顔でいられる選択は何か。その視点から学校を見つめ直すと、不思議なくらい景色が変わって見えてきます。

 この本に書いたことが、すべての学校で、そのまま通用するとは思っていません。地域も違えば、文化も違います。置かれている立場も、それぞれです。

 だから、この本を「答え」として読むのではなく、「問い」として読んでいただけたらうれしく思います。

 一つでも、「自分の学校ならどうだろう」と考えるきっかけが生まれたなら、眠い目をこすってこうしてタイピングしている私も報われます。

 そして、読み終えたときに、たった一つだけ心に残していただきたい問いがあります。

 あなたは、誰を幸せにしたいですか。

 その答えは、人それぞれで構いません。けれど、その答えが見つかったとき、働き方も、学校の見え方も、きっと少しずつ変わり始めるはずです。


   /生井 光治

著者紹介

生井 光治(なまい みつはる)著書を検索»

1983年生まれ。2006年より東京都公立小学校教諭。

Canva認定教育アンバサダー,EDUBASE CREW。3児の父,野菜ソムリエ。地道に,ただ地道に目の前の子どもたちの目がいかに輝くかについて一瞬一瞬向き合い,実践を積み重ねる。32歳より担任と教務主任を兼務し,すべての教員が持続可能な職場環境を目指して働き方改革を推進。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書
    • ミドルリーダーはもちろん、学校をよりよくしたいと願うすべての教員に、新たな視点と明日へのワクワクを与えてくれる必読の書。
      2026/10/19金木犀
    • 学校の「ミドルリーダー」の役割をここまで言語化した本はないと思う。
      2026/10/1730代・小学校管理職
    • 自分とは全く違う眼差しで仕事や周りの人、そして子供達を見つめていることをが伝わってくる本です。特に、若手育成がなぜ大事なのか、そのためにどんな職員室を目指すべきが具体的に示されており、自分の今の悩みを解決してくれるものでした。学級づくりがメインなのではなく、学校づくりを通して、学校に関わるみんなを幸せにする、そういう本でした。
      2026/10/17くだん
    • 具体的なハウツー本ではない。そして、ミドルリーダーのためだけの本でもない。学級経営・人との付き合い方や自分の働き方……全ての教員にとって自分とどう向き合っていけばよいかを考えさせてくれる、鋭くも温かなメッセージが込められた1冊である。
      2026/10/1150代・小学校教員
    • 所謂中堅として働く中で、自分のことだけでなく学年や学校全体と広い視野で働くことが求められています。周囲のために自分が動いていくことが、結局巡り巡って自分に還ってくる。そんなミドルリーダーとしての技術以上にマインドを再確認できた一冊でした。
      2026/10/830代・小学校管理職
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