- はじめに
- T 子どもとの信頼関係をつくる学級経営とは
- 一 理想的な学級経営をもつために
- 二 理想的な学級像一〇の視点
- U 教師と子どもの信頼関係づくり
- ――何が必要か――
- 一 子どもとの信頼関係をつくるために
- 二 教師の基本的な姿勢を示す
- 三 子どもとの出会いの前に何をするか
- V 教師と子どもの信頼関係づくり
- ――わたしの失敗談――
- 一 出会いでつまずいて
- 二 十歳の壁
- 三 サインを見落として
- 四 さまざまな失敗をもとに
- W 関係づくりのための教師の支援
- 一 分かる授業づくりの過程で
- 1 よい教師は金八先生みたいな人?
- 2 「だってあの先生教え方がうまいもの」
- 3 「先生! プロの教師だなあ」
- 4 「うちの子が、算数がとてもよく分かるようになったと言っています」
- 5 「先生の社会科、面白い!」
- 6 愛情と技術が必要である
- 二 興味・関心・意欲を高める過程で
- 1 興味・関心・意欲とは
- 2 知的好奇心を満たして信頼関係をつくる
- 3 アサーティブネスを高めて信頼関係をつくる
- 4 自分の伸びを自覚させることを通して信頼関係をつくる
- 5 何をどうするべきか具体的に示すことで信頼関係をつくる
- 6 共に困難に立ち向かうことで信頼関係をつくる
- 7 グループ学習を通して信頼関係をつくる
- 三 学習技能を身につけさせる過程で
- 四 話し合いを活性化させる過程で
- 1 授業を楽しく
- 2 間違った意見に価値を見出す授業
- 3 ?で終わる授業
- 4 少数派をほめる
- 5 意見が分かれるネタ・発問
- 6 討論を中心とした単元構成
- 五 学級の連帯感を育てる過程で
- 1 活動を仕組んでいく
- 六 学級通信を発行する
- X 子どもたちの好ましい人間関係づくり
- 一 実態を把握する
- 二 イベントで人間関係をよくする
- 三 固定的な人間関係を破壊する
- 1 小さなことでも一生懸命に
- 2 楽しい授業で逆転現象を
- Y 信頼関係づくりのための子ども理解
- 一 教師は、子どもが見えていないことを自覚せよ
- 二 教師が、子どもたち一人一人の何を理解するのか
- 1 学力(文章力、漢字力、計算力)はできるだけ数値化して捉える
- 2 学ぶ器(丁寧さ、継続力)を知ることが、子どもの性格や学力を知ることにつながる
- 3 家庭環境を知らずに子どもを責められない
- 4 子どものよい点、長所と短所
- 5 友達関係
- 三 子どもたちへの願いを設定する
- おわりに
はじめに
教師に成り立ての頃、中学年を担任することが多い。
技術はもたないが情熱だけは山ほどもっている時期に、中学年の担任をする。
子どもたちとよく遊ぶし、子どものことをいつも考えていた。
教師二年目、私は結婚した。そして、新婚旅行に行った。
新婚旅行の最中にけんかになった。妻は、次のように言った。
「あなたは、子どもたちといた方が楽しいんでしょ。子どもたちのことばかり考えているんでしょ。」
返す言葉がなかった。否定できなかったからだ。
教師に成り立ての頃は、明けても暮れても子どもたちのことを考えていた。
一人一人の家庭のことを知るにつけて、悲しくなり涙することもあった。
では、そのような教師への子どもの信頼やその保護者の信頼感はどうであったか。
少なくとも、「十分に信頼されていた」とは言えない。
いや、むしろ「一生懸命だが、頼りない教師」と受け止められていたのだ(保護者と飲んだとき、そう指摘されてショックだったのを覚えている)。
下手くそだが一生懸命授業をしたし、子どもたちとかかわっていた私に何が足りなかったのか。
子どもを見る目も足りなかったかもしれないが、一番は次のことに尽きる。
子どもたちを向上的に変容させる指導力(教育技術)
子どもを変えられなかったのだ。わいわいがやがや元気なお兄ちゃん先生でしかなかったのだ。
いなば教育サークルの面々は、私と同じような失敗を経験している。
そうした中で、少しでも子どもたちとの信頼関係をつくりたいと強く願った。
だからこそ、教育技術の法則化運動に惹かれたのである。
従って本稿には、法則化運動に学んだ中で得た「信頼関係づくり」の技術を書いたつもりである。
できるだけエピソードを入れて書くように心がけた。
若干の重複があるかもしれないが、若い先生には参考になるのではと思う。
いなば教育サークル代表 /長谷 博文
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