障害児教育にチャレンジ21社会参加と生活自立をめざす体験活動

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障害児にとって,社会体験活動は必須の教育活動である。いつ,何を,どこで,どのように行うか,地域・家庭との連携のもと,その成果を示す。


復刊時予価: 2,728円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-128603-7
ジャンル:
特別支援教育
刊行:
2刷
対象:
小・中
仕様:
A5判 184頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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はじめに
第1章 社会参加と生活自立に向けて
1 社会体験活動の意義
2 社会体験活動の役割
(1) 社会体験活動のねらい
(2) 社会体験活動を教育活動の中へ
3 学校での活動から家庭・地域社会への活動へ
(1) 豊かな生活を送るために17
(2) インフォームド・コンセントの理念を生かして
(3) 将来のトランディションを見据えて
第2章 本校の教育課程
1 教育課程の構造化
(1) 生活力のある人間の育成
(2) 領域・教科を合わせた指導
(3) 教育目標
2 中学部の教育課程
(1) 中学部の生活づくりと学部目標
(2) 中学部のタイムテーブル
第3章 中学部の社会体験活動
1 社会体験活動をコアとした教育
2 社会体験活動の展開
(1) 社会体験活動の展開の手順
(2) 社会体験活動の準備段階として
(3) 年間の社会体験活動
(4) グルーピング
(5) 個別支援計画
3 社会的スキルの内容と評価
4 保護者とのインフォームド・コンセント
5 小学部,高等部との関連
6 社会体験活動の全体評価
第4章 社会体験活動の取り組み
1 郊外の公園で遊ぶ体験活動…「七北田公園に行こう」の取り組み
2 アーケードストリートを散策する体験活動…「街に出かけよう」の取り組み
3 夕食を自分で作る体験活動…「学校に泊まろう」の取り組み
4 余暇活動につなげる体験活動…「運動施設を利用しよう」の取り組み
5 初めての場所での体験活動…「修学旅行に行こう」の取り組み
6 アウトドアを楽しむ体験活動…「自然に親しもう」の取り組み
7 作業所で働く体験活動…「現場実習に行こう」の取り組み
8 公共施設で宿泊する体験活動…「冬季学校に行こう」の取り組み
9 プレゼントを作る体験活動…「卒業生を送る会をしよう」の取り組み
第5章 社会的スキルの獲得をめざして
1 ボウリング場で手続きができるようになったA君
2 温水プールへ親を連れていったBさん
3 家族のために食事を作ったC君
4 現場実習で最後まで働いたD君
5 着替えの整理整頓ができるようになったEさん
6 レストランでメニューを選択できるようになったF君
7 自立下校できるようになったGさん
第6章 家庭や地域社会での応用
1 家庭での取り組み
2 親が学校に期待していること
巻末資料
1 社会参加と生活自立に関するアンケート(一部)
2 支援カード(一例)
3 個別支援計画(様式)
4 社会体験活動の記録(様式)
5 施設利用のデータベース(一部)
6 平成11年度の社会体験活動(年間活動計画案)
文 献
おわりに

はじめに

 障害児教育にとって最大の願いは「自立する力」の育成にある。自立とは自分自身の精神的な心の成長であり,そのことは,自分の障害に対する認識と,それに負けない,または克服する精神力であり,障害に対して打ち勝っていくという内面的な自立である。

 もう一つの自立とは,社会という生活の場でどのように社会的スキルを獲得し生活力を高め,人とのかかわりを持った生活ができるかということである。このことは,一面から見れば社会環境の問題,福祉的施策の問題等がかかわってくる。いわゆる障害児に優しい社会づくり,バリアフリーの社会が大きな要素になってくる。障害児の問題より社会的問題に重点を置かねばならない。それ故,本人が意識的に自己主張し,そのことに対する認識を明確にしていく必要がある。積極的な「生きる力」を持たないと,委ねられた生活を送るようになってしまい,他人任せの生活になるであろう。

 平成8年に出された中教審の答申の指針として,「生きる力」と「ゆとり」がキーワードに提言されており,また,第2次答申では「個性の尊重」という基本的な考え方が打ち出された。具体的な学習形態として「総合的な学習の時間」を設置し,「体験的な学習」を重視した指導内容が強調されている。このことは,これまでの障害児教育の中では,社会自立をねらいとした生活単元学習,作業学習,日常生活の指導といった指導の形態の中で「体験的な学習」を重点的に取り組み,指導してきたものであり,特に目新しいものではない。しかし,これまでの「体験的な学習」が障害児の社会自立をめざした内容・方法であったかというと,必ずしも満足のいくものではないものが多かった。

 今回,本校の中学部では,より生活に密着した学習内容の確立と,それを土台にして高等部での自己を見据えた進路の選択ができるような学習へつながる「社会参加と生活自立をめざす体験活動」の在り方についての実践研究を進めてきたことをまとめた。

 この実践研究は,授業の組み立て方(生活づくり),個別指導計画の作成,体験活動における教師と生徒の評価とその変容,個別指導と集団指導の在り方,学校と家庭における保護者とのインフォームド・コンセントを中心とした連携の在り方等,生徒一人一人の個性と能力を見極めながら,どのような学習展開をすれば生き生きと活動できるかを,生徒,保護者,教師が連携しながら取り組んできた体験活動の内容である。

 本書が障害児教育の授業に少しでも役に立つものになれば幸いであり,また小・中学校の「総合的な学習の時間」の参考になればとも思っている。本書を一人でも多くの方々にお読みいただき,私たちに忌憚のないご意見やご感想をお寄せいただければ,今後の私たちの実践研究はなお一層充実したものにできるものと確信し,お願いするものである。


   副校長 /太宰 宏

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      明治図書

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