- まえがき
- 序 学力と学校を問い直す学びのヒストリー
- /佐長 健司
- (1) 学力としての自分づくり
- (2) 学校を問い直す学びのヒストリー
- (3) 学びのヒストリー構成の方法
- 第1部 自分づくりの軌跡をたどる ―友だち・教師との関係のなかで―
- 1 不登校体験からの“学び”と成長
- /栗原 淳・佐藤 寛之
- (1) はじめに
- (2) 保健室登校の始まりと,彼にとっての信頼できる大人
- (3) 不登校のなかで自分の拠り所や目標を探す
- (4) 自らを変えようと試みること
- (5) 不登校を経験したからこそ,それを支援する人に伝えたいこと
- (6) おわりに
- 2 確かな自己像の形成に至る曲折
- /栗山 裕至
- (1) はじめに
- (2) インフォーマントの略歴
- (3) 学校での生活と学び
- (4) これまでの歩みの振り返りから
- 3 「本当の自分」を求めて
- /篠原 一彦
- (1) 初めての友人
- (2) 「正義感」
- (3) 「親友がほしい……」
- (4) 自分に素直に
- (5) アイデンティティを求めて
- (6) 今日まで,そしてこれから
- 第2部 自分づくりの場としての学校 ―学ぶ必然性がある授業とは―
- 1 学校教育のあり方とは ―社会で生き抜くことができる能力―
- /庄田 敏宏
- (1) 序文
- (2) 工業高校及び普通校で教授される実践的基礎知識
- (3) 過酷な部活動で得られた忍耐力と人格形成
- (4) 能力の身につけ方について
- (5) 学校教育とはどうあるべきか
- 2 教育の受け手が真に求めているもの ―教育を与える側と受ける側とのずれ―
- /板橋 江利也
- (1) 序文
- (2) 学校教育に期待される「需要」の変化の感触
- (3) インフォーマントの「自分にとっての教育現場」とは
- (4) 教育の受け手が真に求めているもの
- 3 恵まれた環境における学び ―リーダーとしての学びと受験,そして医師へ―
- /田中 彰一
- (1) はじめに
- (2) 遊びをつくるリーダー
- (3) 発表する小学生
- (4) みられる中学生へ
- (5) 高校受験
- (6) 自由な校風のなかでの大学受験対策
- (7) 学校から個人の学びへ
- (8) 「先生」と呼ばれる身へ
- 第3部 明日の教育をリードする附属学校園
- 1 子どもたちの学校教育論 ―附属学校の児童・生徒が論じる授業・学力・学校―
- /佐長 健司
- (1) 子どもたちの視点を求めて
- (2) 子どもたちの授業論
- (3) 子どもたちの学力論
- (4) 子どもたちの学校論
- (5) 子どもたちの学校教育論に学ぶ
- 2 地域社会と国立大学附属学校 ―教師になったある卒業生の進路選択―
- /村山 詩帆
- (1) 序論
- (2) 特殊性の高いナラティブと既存統計
- (3) 学習の組織化におけるアーティキュレーションと拡散するアイデンティティ
- (4) 結論
- 3 あっぱれ! 卒園生
- /庄籠 道子
- 4 「外部生」Aさんの語りからみえる,佐大附中の学び
- /野田 英樹
- (1) 外部生と内部生という言葉
- (2) Aさんの語りが持つ価値
- (3) 公立小学校(公立学校全般)のゲームにのめり込むAさん
- (4) 本校のゲームにのめり込むAさん
- (5) 本校の課題とAさんの語り
- (6) 学びにのめり込んだAさんと一抜けたAさん
- 5 学力の問い直しと附属小学校改革案
- /冨永 千晶
- (1) 附属学校卒業生や現役生が語る学力観
- (2) 附属小学校の使命
- (3) 改革案その1 思い切ったカリキュラム再編成
- (4) 改革案その2 日々の授業と評価の見直し
- (5) 改革案その3 改革のために取り組むべきこと
- 執筆者一覧
まえがき
近年では,文部科学省が実施する全国的な学力調査の結果に注目が集まり,全国の平均点よりも高いそれが得られた都道府県が話題になるなどのことがある。都道府県や市町村のなかには,地域や学校別に学力調査の結果を発表する場合がある。もちろん,学校を序列化するのではなく,結果をフィードバックし,授業改善を図ることが目的なのであろう。
そこでは,ペーパーテストが用いられるが,それによって測定された学力はどのようなものかと問うことはない。また,ペーパーテストには測定できない学力はないのか,と問うこともない。つまり,学力及び測定方法を問うことなく,その測定結果だけを問題にしているのである。しかし,ペーパーテストによって測定可能な学力は,短期的に習得した一般的な知識や技能に限定される。そのため,学力を知識や技能とし,ペーパーテストでは測定できない学力には目が向けられないのである。
そこで,知識や技能を測定するペーパーテストだけでなく,新たな別の学力とその測定が求められる。たとえば,「学習」ではなく「学び」によって形成する学力は,自分をつくることだと考えられる。知識や技能の習得を長期的に継続したり,何年も経験を重ねて習慣を形成したりすると,自分が何者かになっていく(アイデンティティの形成)。このような自分をつくる学びの成果としての学力をも把握すべきであろう。
そこで,大学生あるいは社会人を対象にインタビュー調査(対話)を行い,過去から現在までの学びについての語りを得る。さらに,その語りを解釈することによって,どのような環境においてどのように自分をつくってきたのかという物語を構成する。すなわち,「学びのヒストリー」が得られるのである(詳細は「序 学力と学校を問い直す学びのヒストリー」)。
さらに,学びのヒストリーによって,子どもたちの自分づくりの,よりよいそれを求めて,自分づくりの場ともなる学校教育について問い直したい。加えて,そこでは国立大学教員養成系学部の附属学校園のリーダーシップの発揮が求められることにも言及したい。
本書の第1部では,子どもたちの自分づくりに焦点をあてる。「1 不登校体験からの“学び”と成長」では,学校に行くことができず,自傷行為に至るほどに苦しむが,やがて新たな道へと歩み出すことが語られる。他にも,「2 確かな自己像の形成に至る曲折」,及び今も継続する「3 『本当の自分』を求めて」の自分づくりが語られ,解釈される。
第2部では,子どもたちの自分づくりの場となる学校が語られ,論じられる。「1 学校教育のあり方とは」及び「2 教育の受け手が真に求めているもの」は,厳しく問う。すなわち,学校は子どもたちの自分づくりの場になり得ているのか,と疑問を呈するのである。その一方で,「3 恵まれた環境における学び」では,学びの場としての学校の質は,子どもと学校との関係によって決まるのではないかとも論じられる。
第3部では,附属学校園における学び,及びその改革が論じられる。「1 子どもたちの学校教育論」と「2 地域社会と国立大学附属学校」では,附属学校の児童・生徒あるいは卒業生が附属学校の授業や学校のあり方について語り,その語りに学ぶべきことが論じられる。さらに,「3 あっぱれ! 卒園生」及び「4 『外部生』Aさんの語りからみえる,佐大附中の学び」「5 学力の問い直しと附属小学校改革案」では,附属学校園の教員自身が附属学校園における学びの意味と学校改革について論じる。
これらの学びのヒストリーからは,学力観の転換や学校教育の改革に対してどのような示唆が得られるのであろうか。本書においてもいくつかは述べられるが,さらに多くを読者の方々に委ねたい。
最後になり恐縮だが,インタビュー調査対象者の方々に心からお礼を申し上げる。共同して得られた語りの価値は大きい,と自覚している。
本書の刊行に際して,樋口雅子編集長には多大なご尽力をいただいた。ここに,深甚なる謝意を表する。
2014年3月30日 編者 /佐長 健司
-
明治図書
















