- 刊行のことば
- まえがき
- T 学級経営をめぐる基本的知識
- 1 朝の会・帰りの会
- 2 新しい学力観
- 3 遊 び
- 4 アンサンブル指導
- 5 安全教育
- 6 生きる力
- 7 一人一役
- 8 居場所
- 9 意 欲
- 10 オープン・スクール
- 11 係の活動
- 12 各班特色主義
- 13 学習係
- 14 学習発表会
- 15 家庭訪問
- 16 感 性
- 17 感動体験
- 18 学級委員
- 19 学級園
- 20 学級王国
- 21 学級歌
- 22 『学級革命』
- 23 学級活動
- 24 学級規模
- 25 学級行事
- 26 学級経営
- 27 学級経営計画(案)
- 28 学級経営の評価
- 29 学級掲示
- 30 学校劇
- 31 学級懇談会
- 32 学級集団づくり
- 33 学級新聞
- 34 学級誕生会
- 35 学級担任制と教科担任制
- 36 学級便り
- 37 学級日誌
- 38 学級旗
- 39 学級の歴史
- 40 学級開き
- 41 学級風土
- 42 学級文庫
- 43 学級編成
- 44 給食指導
- 45 教室環境
- 46 訓 育
- 47 経営学級方式
- 48 機器利用(CMI)
- 49 校 則
- 50 合同学習
- 51 個集研
- 52 個 性
- 53 児童(子ども)の権利条約
- 54 個別指導(居残り勉強)
- 55 座 席
- 56 飼育・栽培
- 57 支 援
- 58 叱り方
- 59 自己統制と自助
- 60 支持的風土・防衛的風土
- 61 自主協同学習
- 62 自治集団
- 63 指導要録
- 64 集会活動
- 65 集団学習
- 66 集団主義教育
- 67 集団思考
- 68 集団討議
- 69 授業参観
- 70 宿 題
- 71 小集団
- 72 進路指導
- 73 生活班・学習班
- 74 生活綴り方的教育方法の特質
- 75 生徒指導(学級経営)
- 76 生徒文化
- 77 全員参加
- 78 全員発言
- 79 全生研
- 80 総合的学習
- 81 掃 除
- 82 創造性
- 83 組織づくり
- 84 体験活動
- 85 体 罰
- 86 縦わり集団
- 87 多面的評価・一面的評価
- 88 単級学校
- 89 ティームティーチング
- 90 通信簿
- 91 転出・転入
- 92 点検・追求・リコール
- 93 討議法
- 94 当番活動
- 95 特別活動
- 96 ドラマ
- 97 仲間づくり
- 98 夏休みの指導
- 99 日 直
- 100 人間関係づくり
- 101 能力別編成
- 102 話し合い活動
- 103 発散的思考
- 104 はみ出し
- 105 班活動
- 106 班・核・討議づくり
- 107 班競争
- 108 班編成
- 109 班 長
- 110 班ノート
- 111 表現活動
- 112 複式学級
- 113 不登校
- 114 プロジェクト法
- 115 文化祭
- 116 ホームルーム
- 117 保健室登校
- 118 保護者会
- 119 ボス支配
- 120 競争・協同
- 121 レクリエーション
- 122 連絡帳
- 123 話 術
- 124 忘れ物
- U 学級経営をめぐる集団の基礎知識
- 125 いじめ
- 126 意志決定
- 127 逸脱行動
- 128 一般化された他者
- 129 オピニオン・リーダー
- 130 規範的組織
- 131 下位集団
- 132 鏡に映った自我
- 133 顕在的カリキュラム・潜在的カリキュラム
- 134 課題達成機能と集団維持機能
- 135 学級意識
- 136 学級の社会学
- 137 学級文化
- 138 監督的リーダーと参加的リーダー
- 139 帰属意識
- 140 教師の指導性
- 141 学級崩壊
- 142 許容的集団
- 143 クーリー
- 144 権威と権力
- 145 合力・助力・分担
- 146 コミュニケーション
- 147 参与観察法
- 148 ジェンダー
- 149 自己概念
- 150 社会的風土
- 151 集団過程
- 152 集団規範
- 153 集団決定
- 154 集団の発達段階
- 155 重要な他者
- 156 準拠集団
- 157 相互扶助(助け合い)
- 158 第一次集団
- 159 地 位
- 160 同輩集団
- 161 ギャングエイジ
- 162 小集団
- 163 人間関係論
- 164 福祉教育
- 165 フォロワー・リーダー
- 166 母性と父性
- 167 ミード
- 168 役割期待
- 169 役割取得
- 170 連 結
- 171 容認・支援・自律
- 172 ラベリング論
- 173 リーダーシップとヘッドシップ
- 174 われわれ意識
- V 学級経営をめぐる心理学の基礎知識
- 175 思いやり
- 176 ガイダンス
- 177 カウンセリングマインド
- 178 共感的理解
- 179 グループ・エンカウンター
- 180 グループ・ダイナミクス
- 181 ゲス・フー・テスト
- 182 子ども理解
- 183 孤立児
- 184 サイコドラマ
- 185 同一化
- 186 自己実現
- 187 自尊感情
- 188 周辺児
- 189 信頼関係
- 190 ソシオメトリック・テスト
- 191 態度変容
- 192 動機づけ
- 193 反社会的行動
- 194 ピグマリオン効果(期待の自己成就)
- 195 非指示的方法
- 196 非社会的行動
- 197 ほめ方
- 198 満足度
- 199 役割演技
- 200 ラポート
- W 小学校・学級経営の基礎基本
- 201 学級記念日
- 202 Xからの手紙
- 203 お助け係
- 204 学級カレンダー
- 205 ピカピカタイム
- 206 ゲスト給食
- 207 声のものさし
- 208 つぶやき発言
- 209 できたよカード・頑張りカード
- 210 一人掃除
- 211 一人一鉢
- 212 増やす言葉・減らす言葉
- 213 あいさつ学級
- 214 いじめストップ大作戦
- 215 お楽しみパーティ
- 216 気を遣い,心を遣う人間関係
- 217 交換カード
- 218 こどもと語り合う週間
- 219 ヘッドワーク・フットワーク・ネットワーク
- 220 「本気・全力にじ色学級」…
- 221 まちがいは宝
- 222 メイク・ザ・6年生
- 223 あいさつ運動「あい言葉」
- 224 アイデア交換会
- 225 ありがとうコーナー
- 226 おたよりの木
- 227 お見舞いカード
- 228 親子学習
- 229 音楽ゲーム
- 230 学級物語
- 231 コメントをよろしく
- 232 自己紹介カード
- 233 自慢カード
- 234 ハンドサイン
- 235 ○○名人・○○博士
- 236 リレー発表・リレー学習
- 237 私は名司会
- 238 教えるのは3倍のトク
- 239「聞く」から「聴く」へ
- 240 教師の禁句
- 241 グー・チョキ・パーの審査員
- 242 黒板対話
- 243 こどものピンチは指導のチャンス
- 244 コンクール方式とおまつり方式
- 245 時間を守る
- 246 スリッパをどうぞ(禁止よりも奨励で)
- 247 先生の笑顔
- 248 先生が好き・仲間が好き
- 249 ちょっといい話
- 250 手づくりの賞
- 251 夏休みの作品展示
- 252 ミニ成人式の試み
- 253 入学式・卒業式での「一言」
- 254 びっくり日記
- 255 ほめる時は一石二鳥で
- 256 ミルクでカンパイ
- 257 ロボットのオニオニオ君
- 258 聞き取り上手
- 259 今月の詩
- 260 クリーン大作戦
- 261 群 読
- 262 諸 君!
- 263 世界何でもスクラップ
- 264 タイムカプセル
- 265 フルマラソン(42.195km)を走ろう!
- 266 二人二鉢運動
- 267 やる気の木
- X 中学校・学級経営の基礎基本
- 268 愛(あい)言葉
- 269 思い出を タイムカプセルに
- 270 学級の活動この一年(時期別学級活動の計画)
- 271 学級学習会
- 272 学級カルタ大会
- 273 学級選手激励会・結果発表会
- 274 学級ディベート大会
- 275 学級読書会
- 276 学級表彰式
- 277 卒業期の学級お別れ会
- 278 学級文集づくり
- 279 教室リフォーム作戦(教室の環境整備)
- 280 元気袋
- 281 健康チェックリスト
- 282 高校レポート
- 283 後輩へのメッセージ
- 284 この1年「私の願い」
- 285 三者面談
- 286 自分を知る(汝自分を知れ)
- 287 10年後の自分
- 288 職業調べ
- 289 職業体験学習
- 290 新年の抱負発表会
- 291 進路計画づくり
- 292 私たちのボランティア活動
- 293 夏休みをどう過ごすか(夏休みのプランづくり)
- 294 ビデオで綴る学級この一年
- 295 みんなチャンピオン
- 296 Let's try 模擬面接
- 297 予想問題づくり(定期テストに備えて)
- 298 呼び出し相談・チャンス相談
- 299 私の学習法
- 300 私の薦めるこの一冊
- 執筆者一覧
まえがき
〔編集の意図〕
この学級経営重要用語300の基礎知識では教育学,心理学,社会学,教育実践の分野から学級経営に重要と思われる基礎的な用語300を抽出して解説を加えた.
はじめ,この巻の編集にあたった倉田侃司(広島経済大学)相原次男(山口県立大学教授),新富康央(佐賀大学教授),南本長穂(関西学院大学教授),西英喜(福岡県中牟田小学校長),関根廣志(新潟県教育庁下越教育事務所)と私の7人は,話し合って従来の事典を中心に300語を抽出しようと考えた.会合をもった数日後に,新富教授から「用語として固まってはいないが実践として魅力的な学級経営がたくさんある.それらを用語として集録してはどうか」という提案があった.この提案は,直ちに,幹事全員に承認され,編集方針を一部変更して,後半の100項目は,「小学校・中学校・学級経営の基礎基本」とした.そこには進行中のあるいは実証済みの学級経営の実践をキャッチフレーズ化して掲載することにした.したがってこの部分は,たんなる用語の解説ではなく直接,学級経営に役立つようになっている.
前半の教育学,社会学,心理学の用語についても極力用語の解説に留まることなく,可能な限り学級経営との関連を示すように努力した.
〔学級経営の危機〕
最近,「学級崩壊」という教育言説が日本の教育界を今席巻している.
それがマスコミで騒がれはじめるといち早く書店の教育書のコーナーに「学級崩壊」というタイトルの(あるいは無理矢理にそのようなサブタイトルを付けたかに見える)書物が並ぶ.その早さに驚きつつ手にとってみる.「学級崩壊は,これまで日本の小学校がとってきた学級担任制,「学級王国」の崩壊である」などという文章が目に留まる.(朝日新聞社会部『学級崩壊』朝日新聞社,1999年,6頁.)そして,気の早い人は,もう学級担任制は限界であり,小学校も教科担任制にすべきであるとか,一人の教師と子どもたち一人ひとりの人間関係の拡大のために複数担任制を,という主張が起こりはじめている.さらには,少子化によって生じた空き教室を子どもたちが教師から管理されない遊び場とする,などの提案がある.
しかし,現実にはどの小学校にも王国かどうかは別として学級担任制は厳然として存在しているし,学級は無くなってはいない.それらのほとんどが「崩壊」しているわけでもない。先生方は,40名という学級定員は多いと思いながら,学級の子どもたちの教育に取り組んでいる.「学級崩壊」とはいったい何であるか.「学級崩壊」というからには,崩壊する前には「崩壊」していない学級があったはずである.その学級はどんな学級であったのであろうか.学級とは一体なんであるか.
学級はその集団の特質から見ても「王国」などではない.むしろ,はじめからそれは「崩壊している」とも言えるのである.だから,学級経営が重視される.
〔不易としての学級経営〕
学級とは子どもたちの教育のために人為的に作られた組織(organization)である.子どもたちは,自分の意志で学級を作ったわけではない.学齢がきて,地域の学校に入学する.そこには学級担任の先生と沢山の同年齢の子どもたちが集まった学級という部屋がある.そして,「みなさんはクラスメートですよ,これから一年仲良く勉強したり遊んだりしましょう」と一方的にいわれる.
学級担任の方も,希望は出すもののほとんど学校の都合で「貴方は何年何組」と決まってしまう.子どもを選べるわけではないので,希望を出すにしてても学年くらいで,学級は,どこでも似たり寄ったりである.このようにして出来上がった学級は,4月のはじめはまさに「烏合の衆」である.幼稚園から上がってきた一年生は,授業中5分おきに立ったり座ったり部屋から出る.また,私の経験でも教育実習中の授業の「崩壊」は日常茶飯事であった.
しかし,近年,教生や1年生の学級でなくとも授業が成立しない,学級が「崩壊」したなど耳にすることが多くなった.「子どもが変わった」,これが原因であるともいわれる.大人も変わり,社会や文化も変わった.その中で子どもの育ちが変わった.家族集団―仲間集団―学校集団―職場集団は通過集団と呼ばれる.一つの集団での社会化を経て発達の次の段階に移る.学校は家族集団と仲間集団の社会化を前提として教育が仕組まれた.学級経営の計画もそうである.ところが,少子化によって家族や仲間集団の教育機能が極端に低下してきた.いままで通りの学級経営では学校教育は今後ますます効果を上げにくくなることは十分に予想できる.では,言われるように学級集団の指導は避けて通ることができるであろうか.かりに百歩譲って集団指導としての学級経営を回避することができたとして,十分に社会化されない子どもたちによって将来,職場や社会全体はどうなるであろうか.そのように考えると学級経営という学校における集団指導は不易であり今,従来以上に重視しなければならない.
本書は編集幹事の方々と多くの執筆者のご協力によって出来上がった.そして「全国 個を生かし集団を育てる学習研究協議会」の実践家の先生方の寄稿がなかったら「学級経営の基礎基本」をこれほど豊かな内容にする事はできなかったであろう.本書の編集の機会を与えてくださりかつ,ご支援くださった元広島大学教授武村重和先生と明治図書出版編集部の江部満さん,樋口雅子さんに心より感謝の意を表したい.
2000年5月1日 編集幹事代表 /旗 正人
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- 明治図書