- プロローグ
- T ミドル教師の役割の高まり
- 一 学校・団塊以後
- (1) デモシカ教師再び─教員採用選考低倍率時代─
- (2) 団塊ジュニアはどんな親になるか
- 二 ミドル教師の不足
- (1) 変わる校内の年齢構成─東京では一校平均一〇名余の若い教師─
- (2) 近未来の学校─「平均年齢三五歳」の学校を分析する─
- 三 教師人生の設計
- (1) 我が体験的ミドル時代─人生設計のアウトラインを作る─
- ・〈教師生活アウトライン年表〉
- (2) 三〇代は働きざかり─家庭生活、職業生活 将来への準備─
- ・〈ミドル教師の心がける二八か条〉
- ・〈四〇代ミドル教師の心がける一二か条〉
- U ミドル教師に求められる力
- 一 人間関係力─若大将として─
- (1) 若い教師の模範として─初任者教員の育成─
- (2) 他の教師の相談相手として─誰だって悩みをもっている─
- 二 連絡調整力─世話人として─
- (1) 校長と教職員の狭間での苦悶─校長の苦労を慮ることができるか─
- ・〈平成一八年度の現任校「グランドデザイン」〉
- (2) 教職員とのコミュニケーション─根回しは大事な布石─
- 三 企画力─学校エリートとして─
- (1) 創意と活力のある学校づくり─経営ビジョンの具現化─
- (2) 楽しい学校づくりへの提案─ビルの町でカブトムシを五〇〇匹飼った─
- V 学校の教育力を高めるミドル教師
- 一 子どもの授業への満足度を高める
- (1) 確かな学力を目指す授業づくり
- (2) 授業の診断評価
- 二 新たな教育課題への挑戦
- (1) キャリア教育の推進
- (2) 教員評価への対応
- 三 学校と家庭・地域との連携
- (1) 学校週五日制の充実
- (2) 学校の教育活動の説明
- W 自己啓発を図るミドル教師
- 一 時間の管理術
- (1) 早寝早起きのすすめ
- (2) スキマ時間の活用
- 二 私の手帳術
- (1) 仕事の予定を構想する
- (2) 仕事の結果を記録する
- 三 自己啓発のすすめ
- (1) 他人より十%の努力
- @学校の職場環境にかかわる条件の一〇項目
- A家庭環境にかかわる条件の一〇項目
- B本人の資質などにかかわる条件の一〇項目
- (2) ミドル時代の財産が後半生を決める─念ずれば通ず─
- エピローグ
プロローグ
団塊世代教師の大量退職時代が始まり、新規採用教員の大量配置が始まった。東京、大阪、愛知、千葉、埼玉などの大都市から始まった現象は次第に地方へも広がる。当面は小学校を中心としているが、場合によっては他校種の特定教科などにも影響を与えるかもしれない。
大幅な人の入れ代わりは、教師の世界だけではない。
工業製品の製造の現場でも、大幅な入れ代わりがある。我が国が世界に誇ってきた、モノづくりの技術の継承が大きな課題になっている。我が国の工業発展は優秀な熟練工の腕に支えられてきた。それを、継承する人材の育成が急務である。
モノづくりの現場の悩みは、他の職場でも共通する。それは民間企業も公務員の世界も問わない。
ある警察署長と話した。東京都では、これから五年間で約一二〇〇〇人は新卒者を配置しなければならない。約百の警察署に、毎年二〇名程度の新卒者を配置する計算になる。
警察は、全寮制の警察学校で新人教育を施し、配置後もチームで仕事をして若い警察官を一人前にしていくそうである。教師の世界に比べて、厚い人材育成システムになっている。それでも、当面の警察の仕事の力量低下が心配であると、警察署長は言う。
では、私たち教師の世界はどうか。
東京を例にとれば、これから一〇年間で、小学校に約一五〇〇〇人程度の初任者を配置しなければならない。東京の小学校は一三四一。一校に一〇名強の初任者をこの一〇年間で配置する。小学校一校の平均は一三学級である。つまり、小学校の四分の三程度の学級担任は、教師経験一〇年未満の若い教師で占められることになる。
警察署長と同様、各学校の校長も教育委員会の担当者も来るべき時代に備えて、その悩みは深い。
警察もそうであると思うが、教育委員会の人事担当者もあらゆる施策を講じて、できるだけ円滑な人事構成ができるようにしている。それらの施策によって、一定程度は緩和されることを期待しているが、全体の「大量退職大量採用」という構図は変わらない。
現在の「ミドル教師」世代は教員採用の募集が少なかった。平成八年度の採用は一二九名(一五・三倍)であった。それに対して平成一七年度は一三八六名(二・五倍)であり更に広き門になる。数年前は、各地区一名しか初任者がいないという時代もあり、初任者研修も幾つかの自治体が共同実施しなければならなかった。その世代が今のミドル教師である。
数が圧倒的に少ない。
これからの学校は「大量の若手教師+数少ないベテラン教師・ミドル教師」という時代になる。
新卒教師の大量採用時代にあって、鍵を握るのが「ミドル教師」世代である。大量の若手教師たちの「よき兄貴よき姉さん」として面倒を見てくれれば、心配はいくらか減少する。
本書は、ミドル教師たちが学校のリーダーとして思う存分、その力を発揮できるように、その応援の書として書いた。また、若手教師もすぐにミドル教師になって、学校の大きな戦力になってくれることを願って書いたものである。さらに、管理職の方にもミドル教師育成の参考になればと思っている。
ミドル教師は忙しい。若手教師も忙しい。
確かにそうかもしれないが、忙しいと言い訳して、努力をしなければ、やがて大量の指導力不足教員が発生して我が国の学校教育は足元から崩れていく。
何と言っても教育は人なのである。ミドル教師自身が自分の力量を高め、更に若手教師をリードしていかなければならない。
本書では、できるだけ具体的な事例を紹介して、ミドル教師が参考にできるようにした。そのため、私自身の実践や経歴、ひいては家庭生活までも述べているので読者によっては、あつかましいと思われる方がいるかもしれない。なるべく、あるべき論ではなく、いい点もそうでない点も含めて、私自身のミドル教師時代を俎上にあげてそれを乗り越えていって頂きたいという意図で述べている。
読まれた方が、一つでも参考にして実践して頂けたら幸いである。
平成一九年一月 /向山 行雄
向山先生の実際のスケジュールなどが入っていてかなり具体的なので、「こうすればいいのか」と思うことしきりでした。
これからは意識して色々な仕事にも取り組めそうです。
ミドル世代の教員だけでなく、初任者・若手の教員にも是非読んで欲しいと思います。