- まえがき /沼澤 清一
- T 家庭に伝える一学期
- 一 初めての一年生担任、四月当初の意識改革
- 二 子どもから「遊び」を通して学ぶ
- 三 子どもの学校生活を家庭に伝える
- 四 四月の目標「ありがとう」
- 五 宝物作り
- 六 子どもとルール作り
- 七 かかわりを生む
- 八 子どもの動きの記録
- 九 学びの共有 気づきを大切に
- 一〇 学びの共有 授業の連続性を実感させる
- 一一 子どもの姿を写真で伝える
- 一二 子どもの発表をとらえて良さを意識付け、広めていく
- 一三 学習内容に親も引き込む 楽しい内容
- 一四 連絡帳の活用@「家庭から学校へ」
- 一五 祖父母参観を経て
- 一六 連絡帳の活用A「学校から家庭へ」
- 一七 子どもを見取る
- 一八 連絡帳の活用B「親と教師のキャッチボール」
- 一九 自習の時間
- 二〇 連絡帳の活用C「連絡帳で家庭の会話を導く」
- 二一 授業参観での発表会
- 二二 見えないところでの親同士のつながり
- 二三 一学期最後 連絡帳は温かい心を伝える
- 二四 宿題について
- U 子ども同士のつながりを高める二学期
- 一 二学期スタート
- 二 夏休み中の葉書の返事は「風景印」で
- 三 感想文コンクールへの取り組み 子ども達の力を校外に
- 四 生き物への感動を共に
- 五 屋上から見える世界@
- 六 いろんな活動を通して
- 七 「日記」スタート
- 八 比較する視点の違い
- 九 屋上から見える世界A
- 一〇 プレゼントで心を伝える
- 一一 相談を受けて
- 一二 子どもの目
- 一三 追究する子ども達
- 一四 視点の焦点化
- 一五 三週間目の壁
- 一六 子どもの姿
- 一七 保護者の目
- 一八 感動「アゲハチョウ」
- 一九 気兼ねなく
- 二〇 支え合う
- 二一 季節の足音 見ようとすれば見えてくる
- V 固い絆 三学期
- 一 三学期・子どもの成長から
- 二 親の喜び 子どもの笑顔
- 三 最後の授業参観から
- 四 お別れ間近
- 五 最後の言葉
- 六 文集「おともだちからありがとう」
- 保護者から /遠藤 成穂子
- あとがき /沼澤 清一
まえがき
平成九年四月、教員生活十五年目にして初めての一年生担任が決まった。
それまでは、二年生をさえ担任したこともなかった(下学年は三年生を一度担任しただけであった)。
当時の勤務校東根市立東根小学校は、児童数が一〇〇〇名を超える県下一のマンモス校であった。
前年度末の三月、卒業式前後での次年度の入学予定児童数は一六五名であった。
「一年生担任」を希望した私は、その意思を伝えていた。
毎年一学年五クラスを超える学級数のマンモス校である。私のような男性教員が一年生担任を行うには、またとない機会である。何しろ他の四名の先生方の協力を得られるのである。
しかし、日に日に入学予定児童数は減っていった。
「毎年、年度末の異動による転入生が多いのだから、心配しなくても大丈夫。」という周りの声を裏切って、出てくるのは転出の話ばかり。
四月一日の午前中の締切、とうとう入学予定児童は一六〇名に決まった。
五クラスで行われていた学級編成は、急遽四クラスに編成替えが行われ、各家庭に葉書で連絡することになった。
希望したこととはいえ、やめとけば良かったかなと思った。
私がイメージしていた三十数名での一年生担任は、一六〇名で、四〇名学級になってしまった。
初めての一年生担任が四〇名学級…………。
「低学年は初めてなのですか?」
「うわ〜、四〇人なんですか‥‥‥大変ですねぇ。」
周りは様々言うが、当の本人は、比較すべき対象を持っていないことが強みでもあった。
三九名の六年生を担任した時よりも教室の空いているスペースは広い。
ゆとりがあると思えば思えないこともない。
「大丈夫なんですか?」
私の力不足を心配されてのことと思うが、周りの対応は、ちょっぴり冷たい。
年配の先生方からは、「いいことですね。勉強になりますよ。」と温かい声援を受けた。
知らないということは強い。
比較すべきものを持っていないということは、ありがたいことと思った。
四月からわが家の娘も一年生に入学することになった。
家族中がその話題で一杯であった。
家でも学校でも、世界中が一年生だらけのような錯覚に襲われる四月のスタートであった。
本書は、これまでの私のたった一回の一年生担任での記録である。
振り返れば、子どもから、保護者から多くのことを教わった一年間であった。
また、私の教育観が大きく変わった年でもあった。
尚、本書は、教師と保護者が、子どもの成長を楽しみながら、互いに伝え合うことによって教育効果を高めていくことを述べようとするものである。
その掛け渡しとなったものが学校の様子を伝える教師からの文・子どもの日記・保護者からの連絡帳の文、それらを載せた学級通信であった。
そのため、本書はできるかぎり学級通信の引用で構成し、事実をもとに記述することにした。
本書を読まれる先生方に何らかの参考になれば幸いである。
平成一七年八月吉日 /沼澤 清一
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- 明治図書