- はじめに
- 1章 学級担任の保護者対応への構えと重点
- 1 よりよい保護者との関係づくりに向けて
- 2 保護者対応のはずしてはならないポイント
- 2章 保護者対応の仕事12か月
- §1 保護者との関係づくり
- 1 信頼関係を築く連絡帳
- 2 印象を大切にした電話
- 3 保護者と学級をつなぐ「学級だより」
- 4 授業力への信頼を得る授業参観
- 5 信頼づくりのための学級懇談会・保護者会
- 6 家庭訪問
- 7 子どもの姿が見える通知表
- 8 家庭学習
- 9 年度はじめの個別面談
- 10 年度途中の個別面談
- 11 安心できる入学式
- 12 保護者の力を生かすボランティア
- 13 子どもが家庭にかえる夏休み
- 14 はじめての集団宿泊
- 15 感動的な卒業を迎える
- 16 子どもが失敗してしまったら〜おもらし〜
- §2 気になる保護者への対応
- 1 不登校〜低学年の対応〜
- 2 不登校〜高学年の対応〜
- 3 非行
- 4 虐待
- 5 放任(ネグレクト)
- 6 過保護
- 7 精神的な不安定
- 8 国籍・文化のちがい
- 9 諸費の未納・滞納
- §3 保護者からの訴えへの対応/人間関係/学校生活/特別支援
- 1 話の聴き方
- 2 記録の取り方
- 3 いじめ〜いじめられている子の保護者〜
- 4 いじめ〜いじめた子の保護者〜
- 5 けんか〜けがをともなったけんか〜
- 6 学習指導
- 7 成績評定
- 8 学級経営
- 9 学校行事
- 10 子どもの障がいを受け入れられない
- 11 他の保護者からの苦情
はじめに
「とにかく,保護者とよりよい関係を築きたい」,「保護者にいま一つ信頼されていない気がする」,「多様な保護者にどう対応したらいいか分からない」,「保護者会や個人面談があると思うと憂鬱になる」,「問題がおこった時に保護者にどう伝えたらいいか悩む」などの先生方にぜひ本書を活用していただきたいと思います。
学級担任であれば,様々な経験を通して保護者との良好な人間関係や信頼関係を築くことの大切さを肌で感じていることでしょう。まさに,「教育は人間と人間との関係の上に成り立つ」のであり,指導の効率を上げるためにも,指導の成果を効果的に定着させる上でも,学級担任と子ども,子どもと子どもの関係はもちろんのこと,保護者と学級担任の関係が良好でなければならないことは言うまでもないことだからです。
ところで,最近,この保護者との関係づくりがうまくいかず,神経を擦り減らしている学級担任が多いのです。中には保護者のクレームによって,心の病にかかったり,大きなストレスをかかえたりする教師も少なくありません。保護者との関係の悪さが,子どもたちの教育への効果を薄めるだけでなく,些細な問題を大きな問題にしてしまうこともあります。
では,なぜ,保護者と学級担任の関係づくりが難しくなっているのでしょうか。保護者の変化にもその原因があるように思います。一つには,保護者の価値観の多様化があります。例えば,宿題の出し方一つをとっても「多い」,「少ない」という意見があり,学校はすべての保護者が望むようにはできないという現実があります。また,子育てについての情報や知識が少なく,自分の子育てに自信がもてず,不安を抱えている保護者が多くなっているという実態もあります。自分勝手な要求や無理難題を学校につきつける保護者もいるでしょう。
教師側にも問題はあります。学級担任が指導方針や学校での子どもたちの様子を正しく伝えていないために保護者の誤解を受けたり,学級担任の自信のない対応や一貫性のない指導が保護者の不信感をつのらせたりするケースもあるでしょう。そもそも,相手意識に立った細やかな配慮や誠意ある態度,コミュニケーションなどがうまくとれない教師が増えているという問題もあります。保護者の教育観,価値観がひと昔前と比べてめまぐるしく変化している中で,今までの対応の仕方では,保護者の気持ちとずれが生じ,保護者の不満がたまり,ささいなことをきっかけとして大きな問題につながってしまうことが少なくないのです。今や,教職経験や性別に関係なく,先生方は保護者との対応に苦慮することが多くなりました。
本書は,こうした保護者の現状を正面から受け止め,その上で良好な関係づくりに徹したり,トラブルを未然に防ぎ適切に初期対応を行ったりするための参考資料として作成しました。学校現場の先生方の日常の実践から,学級担任としてどの時期に何をすべきか,どのように工夫したらよいかなどについて,その基礎・基本について具体的な実践をコンパクトにまとめています。
学級担任として,様々な問題の解決や未然防止のために,また子どもたちの健やかな成長のためにぜひ本書を活用いただければ幸いです。
最後になりましたが,本書の刊行にあたりご尽力いただいた明治図書の安藤征宏氏,飯島トミ氏に感謝申しあげます。また,本企画に賛同し,ともに編集にあたっていただいた橋谷由紀先生にこころよりお礼を申しあげます。
平成22年12月 /杉田 洋
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- 明治図書